完全に燃え尽きた体育倉庫からは戸田先生の
焼死体以外は何も出てこなかった。
警察は捜査が難航し、結局は戸田先生が電気
がつかないことに気がついて、ロウソクで、
代用したけど燃え移ってしまった。
そんな風に解決された。
バド部は試合に近かったから急遽、代わりの
先生が顧問を務めることに。
私は試合の前日に、大野に復讐をすることを
決めていた。
試合前日までの数週間は真面目に練習する。
まぁ…私の努力は報われないからしたところ
で意味はないんだけどね。
やっと来た試合前日。
最後の練習後、私は大野に待っててくれと
頼まれていた。
レギュラーの大野は最終下校ギリギリまでの
練習だけど、私のようなレギュラーじゃない
人は早く練習が終わっていた。
別に今日、実行するから好都合だよね…
そんなことを思いながら、正門の前で大野を
待っていた。
最終下校が過ぎ、少しすると、道具を持った
大野が出てきた。
それだけを告げ、歩き出す大野。
私は少し不審に思いながらも後を追った。
着いたのは近くの河川敷。
河川敷に着くなり、大野は私にこう言った。
いきなり言われ、私は少し戸惑う。
バレていた…?
もし、そうなら何で今になって……
私はそう言い、ポケットに手を入れライター
を取り出した。
何故か大野は私に深々と頭を下げた。
何で大野が抜ける話を?
本っ当に意味が分かんない…
大野が申し訳なさそうに私に話し続ける。
手に持っているライターが震え始める。
何で私は躊躇してるの…!?
大野は…コイツは…私を見殺しにした…!!
何故か、目からポロポロと涙が溢れてきた。
私が泣いていることに気付いたのか、大野が
不思議そうな顔をする。
大野は私にずっと謝ろうとしてくれた。
戸田先生にいじめをやめるように言った。
そんな人を私は殺すなんて無理だ…。
すると…
そう如月君の声が背後から聞こえた。
私は振り向く。
その瞬間、私は走馬灯を見た。
練習を頑張っていた私。
いつも応援してくれた両親。
最初は励ましてくれていた戸田先生。
そして、教えてくれた大野…。
ごめんね、大野。殺そうとしちゃった……
胸にチクリと何かが刺さる。
すると、私の意識は遠のいていった……
ユイの胸には”黒い彼岸花”が刺さっている。
地面に伏せているユイに近くに来たレン。
ユイに刺さる”黒い彼岸花”の花弁は、徐々に
白く染まり、やがて、白い花弁を持つ彼岸花
に変わった。
曖昧な返事をするレンを置いて、俺はその場
から歩き去った。
あの”黒い彼岸花”は血を好む。
血を吸えば、花弁は真っ白に染まる。
真っ白になるのは、その者の魂まで吸収して
しまうから。
つまり、ユイは彼岸花になったんだ。
普段なら俺が殺す。
だけど、たまに気に入った仕方で復讐をした
やつが失敗したら、ああやって”黒い彼岸花”
を刺して、白い彼岸花にしている。
惜しかったな、ユイ。
残念だ。せっかく、あと少しだったのに…
……けど、原因から方法は面白かったぞ。
俺は口元に薄らと笑みを浮かべると、人目のつかない場所で元の姿に戻った……
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!