夕凪家は想像以上に凄かった。
基本的に何でもあるし、とにかく広い。
最初は敷地内で何回も迷って、部屋の場所を
覚えるのがかなり大変。
貧乏だった俺には初めて見るものばかりだ。
今まで使って反応の鈍ったスマホは夕凪さん
と同じ最新機種に替えてくれた。
最新のスマホを持った俺は、画面を触って、
スグに反応するとか凄いなぁ…ってとにかく
感心した。
夕凪さんも改めて喋ると、とても優しくて、
趣味も合う凄くいい人だった。
夕凪さんと付き合い始めて数ヶ月後…
下の名前で呼び合うまで仲良くなった俺達。
今ではすっかりお似合いカップルとして、
校内で知られていた。
今日はヒカリが買い物に行きたいと言い、
その付き添いをすることに。
ヒカリは楽しそうに店に入っていく。
俺はヒカリの家に住むことによって、金持ち
になったが、ヒカリに何かをプレゼントする
時はアルバイトして貯めた金で買っていた。
ヒカリは最初、驚いていたけど、そっちの方
が嬉しいようだ。
一日中、遊んだ俺達。
喫茶店でお茶をしているとヒカリが…
ヒカリはいたずらっ子のように笑う。
俺はヒカリからのプレゼントだったら何でも
嬉しいから特に気にしなかった。
家に帰ると、ヒカリに目隠しをされる。
何も見えない俺の手を引き、階段を降りる。
目隠しを外され、俺の目に入ったのは、ただ
の部屋。
前と後ろにドアが1つずつある。
ヒカリの口から出た”復讐”という言葉。
その言葉を聞いた瞬間、数ヶ月前に出会った
天使と死神を思い出す。
あの天使のことか?
そんなことを思っていると、ヒカリが目の前
のドアの前に立ち、ゆっくりと開けた。
暗い部屋、中には椅子が二脚置いてある。
その二脚にはそれぞれ男女が座っていて、
椅子に拘束されていた。
椅子に拘束されていたのは、俺の両親。
憎くて憎くて堪らない。顔も見たくない。
部屋には拷問器具のようなものがある。
ノコギリにトンカチにナタに、ペンチに…
ヒカリが部屋から出て、ドアを閉める。
俺は両親の耳栓を外した。
声を出し、スグに叫ぶ母さん。
父さんは黙って俯いていた。
トンカチを手に取り、思いっきり母さんの手
に向かって振り下ろす。
ボキッ…!!
骨の折れる乾いた音。
そして、母さんの悲鳴が同時に聞こえる。
怒りを口にしながら、親を殴る俺。
いつしか家族で何かしたような…?
思い出せないけど、まぁ、いっか。
きっと、それ程、いい思い出じゃなかったに
違いない。
今の…ヒカリとの生活が楽しいんだから。
両親への恨みを力にし、殴り続ける。
暫くすると、2人の悲鳴は無くなった。
服は血で染まり、肉は腫れ、酷いところでは
骨が見えている。
ドアを開ける。ヒカリは本を読んでいた。
両親の返り血に染まった俺。
髪からも返り血がポタリポタリ…と垂れて
いた。
俺の願いを叶えてくれた天使と死神。
本当にありがとう。
神は見捨てたけど、お前らは見捨てない。
こんなチャンスをくれて凄い嬉しかった。
いつか寿命が尽きて死んだら、今度はこんな
ゴミみたいな親じゃなくて普通の親のとこに
生まれたいよ。
両親の返り血に染まった俺は復讐を達成した
喜びとプレゼントの嬉しさに、笑顔でヒカリ
にそう言ったのだった…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。