第56話

クラスの裏を知る少女 〜3〜
294
2020/03/02 11:00
教室に戻ると案の定、机は汚されていた。

油性ペンでの落書き、消えないカッターの傷、ここに立っていても牛乳の臭いが香ってくる。
如月 リクト
……。
教室に転校生の如月君が帰って来る。

すると、私の机を見るなり表情をしかめた。

暫く立ち止まっていたがやがて自分の席へ。

私はいつも通り諦めて席に座る。
如月 リクト
…おい、お前邪魔だ。
水樹 ヒナ
きゃっ!?
いつの間にか背後にいた如月君が椅子の背もたれを掴むと座っていた私ごと後ろに引く。

私と机の間に立つとブシュー!!!という噴射音が教室中に響いた。

さっきまでしていた牛乳の臭いが薄まり、私は思わず立ち上がって机の前へ。
水樹 ヒナ
それ…
如月 リクト
お前の机、臭いし汚すぎ。見てて見苦しいからどうにかしてくれ。
私の机に向かって吹き付けていた消臭スプレーを見て、如月君は軽く溜息を零す。

そして、アルコール成分が含まれたウェットティッシュと持っていた消臭スプレーを私の机に置くと自分の席へと戻ってしまった。
如月 リクト
ったく…この教室の奴らはよくこんな臭いに耐えれんな……
教室全員に向けて言ってると思えるような愚痴を1人で呟く如月君をクラスの人達は見ていた。

衝撃過ぎて動けない私はサッと血の気が引く。


これ、私が死んだら次に狙われるのは如月君じゃ…


このクラスの人達はいじめる相手を殺しにかかる。

だから、私がもしも死んだら次は如月君になってしまうだろう。


何とかして避けないと…
水樹 ヒナ
…………拭くか…。
机の上に置かれたウェットティッシュを手に取ると油性ペンの落書きをなぞってみる。
水樹 ヒナ
あれ…何で?
すると、何故か落書きの文字だけではなくウェットティッシュじゃ消えないはずのカッターの傷まで消えていた。

新品の机のように綺麗になった机を前に私は驚きを隠せない。
今どきのウェットティッシュってカッターの傷まで拭き取れるってことかな?凄っ……
そんな馬鹿みたいな考えに辿り着く。

それで納得出来た私は席に座り、授業の始まりを待ったのだった。


























カシャンッ…!!!
水樹 ヒナ
っ…!?
学校が終わり早く帰ろうと階段を降りていると、突然目の前に小瓶が落ちて来た。

ツンとする臭いが鼻をつき、私は鼻を摘む。


これ、化学薬品だよね……?


学校にいる間も危険だけど、1番危険なのは学校が終わって帰るまでの間である。

走ろうとしてもみんなが待ち伏せたりしているからもう警戒状態で駆け抜ける他にない。
水樹 ヒナ
急がないと殺される…!
後ろを見るとそこにはクラスの男子がニヤニヤと笑っていた。

背筋を凍らせたと同時に身の危険を感じて、走ってはいけない廊下を走り出す。

私には味方がいないからここで助けの声を出してところで何もならない。

自分の身は自分で守るしかないんだ。
急げ、もっと、もっと早く!!!
水樹 ヒナ
はぁ……はぁ……
このネックレス駄目じゃん!

あるだけで何も私を助けてくれない!!
ネックレスを引きちぎって投げたくなる気持ちを押さえて私は前を向き、走り続けた。

これじゃ、今までと何も変わらない。

殺されるのを待っているだけ。


どうにかして、生きないと……
正門を抜ける前、教室の窓からトウカちゃんが私のことを見ているような気がした。

ずっと相談に乗っててくれたのにこの仕打ち。

悲しくてしょうがない。

でも、私はそんなことに負けるもんか。

絶対に意地でも生き残る!!

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