第12話

天使と死神 〜2〜
652
2021/06/07 07:09
ノエル
たーまやー!
私とザクは神社の鳥居の上に座っていた。
石段で罪悪感に溺れ泣いているアイカちゃん
をタクヤ君が抱き締めているのが見える。


暗い空に咲いている綺麗な花。
これは”花火”という夏の風物詩だということ
をザクから聞いたことがあった。


大きいのが咲いた時は「たーまやー」って
言うんだって!
ザク
アイカは珍しいタイプの子だ。
ノエル
だよね。
ザクに相打ちを打ちながら、私は手に持って
いた”ワタガシ”っていうフワフワしている雲
みたいなのに被りつく。
ノエル
わっ!あっま〜い!!
ザク
綿菓子だから当たり前だろ。
ノエル
うーん…綿のお菓子?
ザク
ああ、砂糖ってのを原料に作る
甘い菓子だ。
ノエル
へぇー!
綿菓子を口に入れていきながら、私は改めて
アイカちゃんを見た。
アイカちゃんは神に愛されていた。
だからこそ、アイカちゃん自身から見ると、
自分とみんなは違う。
そう思ったから、自分は神に見捨てられたと
思ったんだろうなぁ…。
ノエル
考え方は人それぞれだもんね。
ザク
そうだな。
ノエル
…ザクとしてはどうだったの?
アイカちゃんの復讐の仕方。
ザク
じっくり追い詰めていくのは、
良かったと思う。データとかを
1ヶ月間取り続けて、自動運転
の車が通る時間の平均とか…
ノエル
それは私も凄いと思った。
ザクは失敗したら、命を貰うと言った。
アイカちゃんはじっくりとまとわりつく蛇の
ように相手を追い詰めて殺す。
時間はかかったけど、決して失敗したとは、
言えない。逆に大成功だった。
ノエル
なのに、最後の最後で罪悪感に
溺れちゃうとは〜…
ザク
まぁ、今回はかなり面白い方法
で復讐をしてくれた。俺として
は満足だ。
ノエル
次はどんな子が”黒い彼岸花”を
求めるのかな?楽しみ〜!
花火と綿菓子、アイカちゃん達から私はふと
目を逸らした。
見たのは、自分の足首。
ザク
何かある?
ノエル
ううん、何も。この”かせ”が少し
なっただけだよ。
ザク
…お前は”枷”とかは知っている
のか…。
ノエル
あ…ま、前に誰かがこんな感じ
のを付けてたの!
私の左足首には鉄製の枷が付いている。
枷には短いけど、鎖が繋がっていて、飛ぶ時
とかにはジャラジャラと音が鳴っていた。
おっと、口を滑らしちゃっかな…?
私は人間のことがよく分からない。
だから、ザクが来てからは元人間のザクに、
様々な物を教えて貰っていた。
ザクはどんな過去を持っているの?
そして、私は……
ノエル
ふふっ
ザク
いきなり笑い出すとか怖っ…
ノエル
なーにもっ!少しだけ元人間の
ザクが羨ましいなぁ…って?
ザク
いきなりだな。
ノエル
だって、私は元も何も人間なんか
に生まれなかったもん。
ザク
じゃあ、何だ。
ノエル
天使?または……
ザク
または?
ノエル
……やっぱ、話さない!!
ザク
え、そこまで言うと気に ──
ノエル
ほら!次の子いるんだから早く
向かうよ!
それは私だけの秘密の話。
私以外の誰もが知らない話……
願いも復讐も叶える”黒い彼岸花”という奇跡
の花が出来るまでの話……
神に見捨てられた私、ノエルが誕生してから
人間観察を始めるきっかけの話……
私の秘密は沢山あるんだよ。
…やっぱり、みんなも聞きたいの?
ザクも気になっているもんねぇ……
…まぁ、そのうち気が向いたら話そうかな。
私は再び口元に笑みを浮かべると、次の標的
の元へ向かった…

プリ小説オーディオドラマ