第8話

天才に生まれた少女 〜2〜
660
2018/09/29 12:55
様々な色の花の中に一輪だけ”黒い彼岸花”が
咲いていた。
三神 アイカ
私が知ってる彼岸花は黒じゃな
くて赤なんだけどなぁ…
呟きながら私は少し屈みよく見る。
”黒い彼岸花”はとても綺麗で不気味。
普通なら赤なのに黒というところがまた、
不思議でたまらなかった。
三神 アイカ
黒だけど、綺麗…
伸ばした私の手が”黒い彼岸花”に触れる。
触った瞬間、頭の中にさっき、タクヤが女子
に告白され私が初めて見る答えをした時と、
お母さんに怒られ叩かれた場面が浮かんだ。
確か、タクヤに告白したあの女子の名は…
三神 アイカ
柳本やなぎもとミキ…
口にすると胸の奥から黒い感情が湧き出る。
言葉には出来ないほどのイラつき。
私が何で完璧でいないといけないのか。
私は私なんだ。
三神 アイカ
お母さんもミキもいなくなって
しまえばいいのに…
気が付けば私は”黒い彼岸花”を引き抜いて
いた。
三神 アイカ
ぬ、抜いちゃった…どうしよ…
そんなことを言いながら、立ち上がる私。
テストを手に取ると、歩道橋に向かった。
…その時の私は何故か、死なないといけない気がしたんだ。
迷うことなく歩道橋から飛び降りた。
スグそこまでトラックは来ている。
簡単に死ねる、楽になれる。
だが、私の体は轢かれなかった。
三神 アイカ
あれ?
周りの人、車、生き物が全て静止した。
音も聞こえず、しんと静まり返った世界。
三神 アイカ
時が止まったの…?
天使
正解!
三神 アイカ
えっ…
トラックの前に立つ私の目の前に現れたのは
天使と死神。
天使の女の子は無邪気に笑い手を叩く。
天使
君は願いを叶えたい?
死神
それとも憎いやつに復讐をしたいか?
唐突にされた質問。その質問に自然と…
三神 アイカ
…お母さんと柳本ミキに復讐が
したい。
そう答えていた。


完璧を求めるお母さんはいらない。
私は自由に、好きなように生きたいんだ。


柳本ミキもタクヤにあんな反応を……。
私の答えに天使は少し驚いた顔を見せる。
天使
アイカちゃんは彼よりも決断力
が高いし、冷静だね!
三神 アイカ
彼って?
天使
あぁ、ごめんごめん。こっちの
話なの。えっと、復讐だよね?
それだったら私の出番では無さ
そうだね。
死神
方法を教える前に1つ言いたいことがある。
三神 アイカ
何?
ザク
復讐をしようとして、失敗した
場合はアイカの命を貰う。
三神 アイカ
別にいいよ…
あの二人に復讐出来るのなら…私の命くらい懸けてやる…
三神 アイカ
……何で私に復讐のチャンスを
くれるの?
天使
アイカちゃんが”黒い彼岸花”に
選ばれたから。
三神 アイカ
”黒い彼岸花”に選ばれた…。
天使さんの言ったことを復唱した私は、手に
持つ”黒い彼岸花”に視線を落とす。
死神
それは強く願った者にしか見る
ことが出来ない特別な彼岸花。
アイカには機械を自由に操る力
を与える。
三神 アイカ
機械を自由に操る力?
死神
ああ、上手く使えば、アイカの
復讐は達成できる。だが、失敗
すれば死だ。
三神 アイカ
分かった…ありがとう。
死神
まぁ、頑張ってくれ。
天使
最後に私からアドバイス!たま
には親に抗うことも大切だよ!
それじゃ、頑張ってね!
そう言って、天使さんと死神さんは私に手を
振る。
動き出した世界。


私は歩道橋の上に立っていた。
三神 アイカ
親に抗う、か…。
”黒い彼岸花”は私の手から無くなっていた。
手に持っていたテストで紙飛行機を作る。
三神 アイカ
私は絶対に成功させる…。
私はそう呟くと、完成した紙飛行機を歩道橋
の上から夕日に向かって放つ。
さぁ、早く帰って復讐の作戦を立てよ……。
飛んでいく紙飛行機を少し眺め、私は家に
向かって歩き出したのだった…

プリ小説オーディオドラマ