第50話

差別を望まない少年 〜3〜
345
2019/03/04 12:48
不思議で魅力的な"黒い彼岸花"。
その花に僕は近付いた。
綾野 カオル
不思議な花…
僕はその花壇を持ち、その花を抜いた。
綾野 カオル
あっ…………ごめんね…。
"黒い彼岸花"を手にした時、僕の目線は自然と教室の窓へと向いていた。
ここは3階。
落ちれば、下はコンクリートで確実に死ぬ。
でも、何故か飛び降りたいと思ってしまった。
ゆっくりと窓に向かう。
窓まで着くと、窓枠に足をかけた。
そして、そのまま外へと飛び出した……。
僕は地面へと近づいて行く。
窓がどんどん僕から遠くなっていく。
地面に当たる寸前、教室の窓際に天宮さんが立っているような気がした…。
死神
おい。
綾野 カオル
へっ?
突然、話しかけられ僕は変な声を発した。
死神
馬鹿か。カオルはまだ死んでないぞ。
声がした方を見ると、黒い大鎌を手にした死神。


死神だったら僕の命を取りに来た…?
死神
カオルは"黒い彼岸花"に選ばれた。
だから、今から3つの選択肢をやる。
綾野 カオル
せ、選択?
死神
1つ、カオルの願いを叶える。
2つ、憎いやつに復讐する力を得る。
3つ、このまま死ぬ。
綾野 カオル
願い、復讐、死……。
死神
そうだ。
死神にそう言われ、僕は佐川に見せられたいじめを受けている最中の天宮さんを思い出した。
あんなことされたのに、何も言わずに僕と……
そう思うと、段々と怒りが湧いてきた。
綾野 カオル
……したい…。
死神
ん?
綾野 カオル
…佐川エミ。そして、天宮さんをいじめている全員に復讐したい。
死神
復讐する力をやる。だが…失敗した場合はカオルが死ぬ。それでもいいか?
綾野 カオル
いいよ。
別に必要とされない僕が死んでも悲しむのは両親くらいだから、命なんてどうでもよかった。


これで復讐出来るなら、尚更…
死神
そうだな……じゃあ、カオルに与える力は"水を操る力"だ。上手くやれよ。
綾野 カオル
ありがとう…。
死神
それじゃ。
天宮さんが僕の顔を覗き込んでいる…。
綾野 カオル
天宮さ、ん…
天宮 ノエル
ん〜?
手を伸ばし、天宮さんの頬に触れた瞬間、僕は現実に引き戻され、慌てて起き上がった。


外はすっかり暮れて、月明かりが天宮さんの金色の髪と水色の瞳を輝かせていた。
綾野 カオル
えっ!?何で天宮さんいるの!?
天宮 ノエル
カオル君が中庭?なんかで寝ちゃっていたから気になっちゃって。
綾野 カオル
あ、ありがとう。
天宮 ノエル
気にしないで!ほら、帰ろっ?
僕の鞄を差し出して、天宮さんが笑う。
僕はこの笑顔を守りたい……。
そう心の中で固く決意して、僕は天宮さんと途中まで一緒に帰った……。




















私はカオル君と別れると、姿を消して、近くの高い建物に飛び移った。
ザク
調子はどうだ?
ノエル
んー、まぁ、楽しいかな?
ザク
てか、ノエル。お前、普通にいじめられてんじゃん。
ノエル
そんなことないけど?
ザク
バケツの水を頭から被すのはない。
ノエル
へぇ〜、別に気にならないし。
ザク
それにどうしてあそこまでカオルに関わろうとするんだ。
ノエル
さぁね?面白いからが一番の理由!
ザク
はぁ…またそれかよ…
分かりやすく溜息をついてくれるザク。


別にいいもん。
あんなちっぽけなことで折れてたら、神に見捨てられたって思っている子達はどうなる?って問題?
私は楽しいのが最優先なんだからさ…

プリ小説オーディオドラマ