私は何度も言った彼の家へ向かった。なりふり構わず走った。息が途切れる。でも走る。ようやく着いた。インターホンを押す。
ピンポーン。
少しして、彼がドアを開けてくれた。
彼は泣いていた。
彼が落ち着くのを待って話し始める。
「私、あなたのこと何も知らないの。教えて」
彼はしゃがみこみ、また泣き始めた。
「ごめん、ごめん、ごめん」
彼はそう続けるだけだった。彼が何を隠しているかはわからない。でも今は彼を抱きしめたいと思った。彼の体温を感じる。
これでいいんだ。色々なことがわからない。でも今は
「ねぇ、このままいさせて」
私は彼に言った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。