無料ケータイ小説ならプリ小説 byGMO

第2話

彼に拾われるまで
今日、彼氏に理不尽な振られ方をした。悲しくて意味がわからなかった。彼に話を聞きたいけど聞く勇気が出ない。私は新品のベットに寝転び枕を涙で濡らし、寝る時間でもないのに嫌になってふて寝した。

「ニャー」
目が覚めると茶色の壁が目の前に広がっている。
「ニャー」
あれ、私部屋にいたはずなのに。
「ニャー」
これも夢なのかな。
「ニャー」
さっきから猫の鳴き声が聞こえる。しかも近くで。野良猫が部屋に迷い込んだのかな。
「ニャー」
いや、近すぎる。目に写った私の手らしきものが黒い。指が全部削ぎ落とされてなくなったような大きさだ。
「ニャー」
もしかして
「ニャー」
もしかすると
「ニャー」
私、猫になってる。

そう、私は猫になっていたのだ。体を動かす感覚がまるで違う。慣れるまで少し時間がかかった。そして目に見える世界がまるで違っているのが驚いた。人間の時に比べて目が見えないのだ。でも、1番の問題はそこじゃない。なぜ猫になったのか。そこが問題なのだ。考えてもわからないが猫に恨みを買った覚えもないし、恩返しをされることもない。半日それを考えていた。次第に雲行きが怪しくなってきた。
「雨か」
声がする。私は狭い茶色の世界からその様子を見ていた。彼は雨が強くなってくるにもかかわらずその場に立ち尽くしている。私はなんとも言えない気持ちになって
「ニャー」
声を出していた。彼が私がいる茂みの方を見てくる。
「ニャー」
もう一度。彼が私を見つけてくれた。それが嬉しくなって
「ニャー」
また声を出した。
「捨て猫か」
彼は2本ある傘のうちの1本を私の上に掲げた。
「ニャー」
ありがとうという気持ちで言った。すると彼はおぼつかない足取りでどこかへ行こうとした。それが本当にどこかに言ってしまう気がして怖かった。彼氏が理不尽に私を振った時もこのまま会えないのではと恐怖した。でもその時は動けなかった。その借りを返すように私は彼に飛びついた。
「うぉ」
彼は私をなんとか受け止めてくれたが、その優しい手でゆっくりと私をダンボールの中に戻す。
「ごめん、俺には何もできないよ」
彼はもうこちらを見る気もないのだろう。素っ気なくどこかへ行こうとした。私は彼の後に続いた。
「ニャー」
待って。
「付いてくるな」
それでも私は付いていく。
「だから付いてくるなって」
彼と目が合う。
「付いてくるなって!」
彼の声が恐ろしく感じた。
「ニャー」
何か気持ちが伝わればいいと思った。彼は何か考えている。なにを考えているのかは見当もつかない。
「違う」
彼が脈絡もなくそんなことを言った。その後すぐ彼は私を拾い上げた。
私は彼に拾われた。