無料ケータイ小説ならプリ小説 byGMO

第5話

猫になった夢の話
私は彼氏に理不尽な振られ方をした。悲しくて意味がわからなかった。彼に話を聞きたいけど聞く勇気が出ない。勇気が出ないまま泣いて後悔して苛立って数日が経った。今日はおばあちゃんのお見舞いに行く日だ。おばあちゃんは認知症を患って昔のことしか覚えていない状態になった。私のことも知らないし、お母さんもわからなくなっていた。しかし彼に理不尽な振られ方をした日、おばあちゃんが一瞬目を覚ましたらしい。その話を聞いておばあちゃんのお見舞いに行った。そして彼との約束に遅れてしまった。今日はそれから容態が安定したというおばあちゃんに会いに行く。気分は上がらないけどおばあちゃんに会う時くらい元気でいなきゃ。私は家を出た。家を出てすぐに保健所の車が止まっていた。私は気になってしまい職員たちが何をしているのかを見た。ダンボールの中に黒い何かが見えた。
「捨てるなら、飼うんじゃねぇ」
彼らはそう言っていた。私は大雑把にこの状況を理解して、おばあちゃんの病院へと向かった。

「おばあちゃん!」
私は挨拶をする。
「あぁ、久しぶり」
私は涙が出そうになった。この前は侵入者だと叫ばれたからかとても嬉しく感じる。
「あんた、よく来たね。ゆっくりしていきな」
私の知っているおばあちゃんだ。私が涙を拭いているとおばあちゃんが言ってきた。
「あんた、なんかあったね。よかったら話して見なさいよ」
おばあちゃんは昔から私のことはなんでもお見通しだ。私は正直に話すことを決めた。
「私、彼氏との待ち合わせに遅刻しちゃって。彼は普段、特別怒るような人でもないんだけど。すごい怒って二度と会わないって言われて。何がいけなかったのか自分でもすごく考えたんだけどわからなくて」
涙が溢れてくる。
「おばあちゃんのこと彼には話してあって心配してくれていたから回復したってことを伝えれば彼も喜んでくれると思ったから話そうとしたらその前に怒ったの」
涙が止まらない。
「彼と話すこともできなくて後悔ばかりしているの」
おばあちゃんが自分のハンカチを取り出して私の涙を拭ってくれる。
「そうかそうか、それは辛いことだね」
おばあちゃんは優しい口調で言ってくれる。
「私は昔のことをたくさん思い出してね。私も彼氏に理不尽に振られたことがあったんだよ。その時は彼に話す勇気が湧かなくて結局そのまま」
おばあちゃんが寂しげな表情をする。
「でも、最近夢を見たんだよ」
おばあちゃんが少し明るくなった。
「夢?」
またボケたのかと一瞬焦った。
「そう、猫になる夢」
しかし、おばあちゃんが嘘をついているようには見えない。
「猫になって男の子に拾われるの。過ごしたのはたった数日だけど楽しかった。その男の子は彼女を理不尽に振ってしまったらしいの。その男の子はとても後悔していた。彼女に辛い思いをさせてしまったと」
言葉1つ1つに思いが詰まっている。
「その時、私が彼を支えてあげたいと強く思ったのだけれど私はダンボールの中で眠ってしまって夢が覚めるの」
不思議な話だ。
「彼を1人にはしておけないと思ったのだけど夢だったのよ」
おばあちゃんは寂しそうな顔で微笑む。
「もしかしたらあなたの彼氏も彼のように悩んでいるかもしれない」
確かにそうだ。
「猫の時は猫でいられれば彼と一緒に居られると思ったの。でも猫でなくなっても彼も思う気持ちは同じなの。だから会いに行きたいと思ってしまうの」
おばあちゃんの気持ちがわかる。
「会いに行きたいんでしょ」
私は涙ぐんだ目を擦り、頷く。
「行きなさい」
私はまた頷く。そして荷物をまとめ部屋を飛び出した。