ヒロミと出逢ったあの日。
ハナはそれなりに華やかな大学生活を送っていたので
交友関係も華やかだった。
大学で出逢った心友たちの中で
特別仲の良かったサキはお医者様の娘だった。
サキもまた芸人さんが大好きだった。
サキとハナは性格は全く違うけど
姉妹のように仲が良かった。
ひょんなことから参加することになった
あの日。
サキのお友達と大学のお友達も誘って
5人で向かった。
広い個室が用意されていて
今をときめく芸人さん達が集まっていた。
芸人さんって軽く見られがちだけど
みんなすごく優しくて面白くて
頭の回転の速い人たちばかり。
サキも友人たちもとても楽しんでいた。
その中で少し遅れて入ってきた
イケメン芸人さんがいた。
一際目立つその人こそ、ヒロミだった。
ヒロミは芸人さんらしからず
かなりのイケメン。
さらに背も高く、俳優顔負けな容姿だった。
ハナは元々彼のコンビのファンだった。
純粋に彼の書くネタが面白くて好きだった。
ハナのとなりに座ったヒロミは
世間で言われているような
プレイボーイには全くみえなかった。
無口で面白い事も言わず、
逆にその芸人ぽくない感じが好印象だった。
媚びることもないヒロミの態度と
普通の会話がハナにはなぜか心地よかった。
可愛いのに熱くお笑いを語るハナの姿が
ヒロミには新鮮で
とても可愛いらしく思えた。
ヒロミはこっそり耳元でそう呟いた。
でもそれはヒロミの優しさで
本当はハナともう少し話がしたかった。
実はヒロミはかなりモテるが
彼女意外の女の子を送り届ける事がなく
周りの芸人さん達も驚いていた。
車内でもヒロミは意外と多くを語らなかった。
それはハナの本心だった。
ハナは元々ヒロミの表立った面白さではなく
内面の面白さに惹かれていた。
車内でも2人の話は弾み、
あっという間に自宅付近に着いていた。
ハナはこの気遣いにかなりの好感を持った。
大抵の男性は
「危ないから家まで送るね。」と言うので
初めての感覚だった。
ハナは世間で言われているヒロミと
実際のヒロミの印象が全く違うことに
驚いていた。
お互いこんな想いでいた。
車から降りると突然窓ガラスが開いた。
ヒロミが渡したのはLINE IDだった。
ハナはヒロミの車が見えなくなるまで
ずっと手を振って見送った。
心に感じた何か温かいものを抱えながら。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。