ヒロミの待っている個室の扉が開いた。
ハナがひょっこりと覗き、
ハナの顔を見た瞬間。
ヒロミは三年前のあの頃の気持ちに
一瞬で戻ってしまった。
ハナの明るさが愛おしかった。
ヒロミは今すぐにでも抱きしめたい気持ちを
押し殺した。
ハナの目がキラキラしていた。
ヒロミは、ハナが幸せなんだな。と感じた。
ハナの目がキラキラしていたのは
涙を堪えていたからだった。
ヒロミは、「しまった!」と思った。
ハナなら目から涙が溢れた。
ヒロミはハナの涙を拭い、
強く抱き寄せた。
ハナは糸が切れたかのように
ヒロミの胸で泣き出した。
ハナはどうして
こんなにも涙が出るのかわからなかった。
なにが悲しいのか?
ただ…
ヒロミの顔を見て、
ヒロミの声を聞いて、
ヒロミの雰囲気を感じて…
やっぱりヒロミが好きなんだ。と
ハナは確信してしまった。
ハナの涙の意味がヒロミにはわかった。
ヒロミはハナの手を引いて
タクシーに乗った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!