何回も読んだくせに ,
よく飽きないもんだよな .
幼馴染のあなたは俺と一緒で
図書委員であるにも関わらず
本を引っ張り出しては
仕事をほっぽりだした .
逆にそんなに図書室に居座ってどうする .
図書委員なんだし ,
簡単に借りれるんだ .
借りて家帰ってから読めばいいのに .
分かりたくもない待ちたくもない
今すぐ帰りたいけどな , 俺は , !!
いや , 俺は仕事をしよう .
何もこいつを
わざわざ待たなくていいんだ .
そう思い立った俺は
返却ボックスに雑に入れられた本たちを
手に取り元の場所に戻し始めた .
1人でウロウロするのもつまらないけど
それしかすることが無いのだから
俺は1人 , 無駄に広い図書室を歩くしかない .
あれはあそこ , これはここ , それはそこ .
分からなくなる時もあるけど
大抵は覚え始めている .
その記憶通りになれた手つきで戻しながら
過ぎていく時間を示す時計を
ちらちらと横目で確認する .
言ってる意味が全く分からない .
自由なのはいいことだとしても
自由すぎるのは良くないことだ .
小さい頃からあなたはこんなもんだけど
話にならないくらいの自由度だ .
何ら変わりないのが
もう , 逆にすごいと言っても
過言ではない気がしている .
基本 " 眠い " となれば
寝てしまう奴だから
今起きてと止めても
あやふやな返事しか返ってこないだろう.
らしいと言えば聞こえはいいが
本当を言うならば普通に , 厄介 .
だるいというか , 面倒というか .
一人でやるしか無くなった俺は
本当にゆっくり ,
ちまちまと本を片していく .
ちなみに返却ボックスに入れられた本は
今日に限って多いもんで
今のところ終わりは見えそうにない .
さっさと起きてくれないかな .
いや , 一回寝たら目は開かないから
そんなこと願っても無駄だろうか .
そういえばあなたは
なんで白雪姫が好きなんだったっけ .
" 王子様のキスで目覚めるんだよ !! "
" すっごいロマンチックでしょ ~ !! "
思い出してしまった .
思い出しても意味の無いことを .
王子様のキスなんかで
目覚めるはずもないのに
それがロマンチックだから , 憧れるから , と
あなたはそれを執拗に読み続ける .
遠目で見ていた彼女が
俺の名前を寝惚けて呼ぶから
胸が少しだけ苦しくなる .
それを誤魔化すように大きく , わざと
ため息を吐いてから
俺はあなたの隣に座った .
震える指先で
彼女の耳に髪の毛をかける .
無防備に寝やがって .
わざとなのか , 無意識なのか .
俺はそう呟いて
彼女の唇に触れるだけのキスをした .
俺がお前の王子になれるなら ,
どうか今目を覚ましてくれ .
... いや ,
俺がお前の王子になるから ,
今絶対 , 目を覚ませ .
俺にそうして欲しいから ,
目の前で執拗に白雪姫を読み込んだこと
目の前で無防備に眠ったこと .
イタズラな笑みも ,
目を引くような寂しそうな瞳も
全て策略だったのだろうか .
でも , 勝ったように笑うから
多分全て彼女が仕掛けたことなのだろう .
それもそれで , いいやなんて .
俺は相当厄介な姫に
惚れ込んでしまったみたいだった .
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。