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『 ただいま 〜 』
重い足取りで 家の階段を登って
やっとの思いで 自分の部屋の
ドアノブに 手をかける 。
『 ふう … 』
ヘトヘトに疲れた体を
ベットに投げやる 。
と 、ベランダの窓を
コンコン 叩く音がした 。
はあ … またか … と 思いつつも
窓の鍵を開ける 。
『 今日はなに ? 』
「 委員会 お疲れ様 〜 」
『 はいはい ありがとう 、』
「 俺も委員会入ればよかったな 〜 」
『 えってかてか なんで来たの ?? 』
「 え ?? 暇だからに 決まってる 」
『 私はいそがしーの っ 』
「 ねえあそぼ 〜
小さい時みたいにさあ 〜 」
小さい時は ほんっとに 毎日
遊んでたなあ 〜 と 言いながら
私の机の椅子に座る 彼は
隣の家の幼なじみ 、中村海人 。
幼小中高 と ずっと一緒で
幼稚園生の時から 省かれていた
わたしの 隣に
いつも一緒にいてくれる優しい かいとが
わたしは 小さい時から 大好きだった 。
でも その 大好きの感情は いつしか
恋愛感情に 変わっていた 。
中学3年生の時に 、
『 ねえ かいとは どこの高校行くの ? 』
って 聞くと
「 おれ ?? んーあなたと 同じとこ 」
そう答えてくれた時は ほんとにびっくりして
でも 心の底から 嬉しくて 。
かいとと同じ高校に行けるという事を
希望に なんとか 志望校に受かり 、
かいとも ギリギリだったけど
私と同じ高校に受かった 。
そして 奇跡に奇跡が重なり 、
幼小中高 と 全て
クラスも離れたことがなかった 。
そしてこの現象 。
ベランダから いつも私の部屋に
侵入してくるこのルーティンは
小学生の時から ずっと変わってない 。
「 おーい?あなた 〜 ?」
『 あっ 、ごめん どうした ?? 』
「 魂抜けたのかと思った 、、」
『 抜けてないです 〜 』
そう言って ベットから腰を上げて
かいとの座っている椅子のある
机へ 向かい 、今日の課題をとる 。
「 ねーなんかしよー暇ー 」
『 私は課題しますから 〜 暇じゃないでーす 』
「 あ、じゃあ俺もしよっかな 」
『 えっ 、珍しいね ?? 』
「 でも ただ課題するだけじゃ
やる気出ないからさ 、」
『 賭けでもしようって ?? 』
「 おっ さっすが 〜 !! 」
『 もう何年の付き合いだと思ってるの ?? 笑 』
「 今日って なんの課題出てるっけ 」
『 今日は数学だね 〜 』
「 じゃあ 計算だから
早く解いた方の勝ち !!
負けた方が 勝った方の
お願いとか 無茶ぶりとか 聞く ね ? 」
『 はいはーい 』
「 何でそんなに余裕なの 、笑 」
『 いや絶対勝てる気しかしないから ? 』
「 なにそれ 中村海人なめんなよ ? 」
『 舐めませーん 』
絶対後悔するからな とか 言いながら
ベランダから 自分の部屋へと
軽々入っていって 30秒もかからず
私の部屋に入ってくる かいと 。
「 よし 、じゃあいくよ ? 」
『 はーい 』
「 よーい スタート 」
スタートと同時に 静かになり
シャーペンの芯が砕ける音だけが
部屋に 響く 。

よし 、あと一問 、あと一問で
かいとに 勝てる …
「 はい 、終わり 」
『 えっ !? 』
「 終わりましたよ 〜 」
『 ・・・ わたし 今終わりました 』
「 よっしゃ 、勝った勝った 〜 🎶 」
『 ムカつく 〜 … !! 』
「 危ない危ない 、負けるとこだった 」
『 … お願いは ?? 』
「 あっ お願いね 〜 んんん 〜 」
「 じゃあ … 」
「 俺と付き合って 」
『 えっ 、!? 』
「 だから !! 俺と付き合って って !! 」
『 ほんとに言ってるの 、? 』
「 俺さ 小さい時からずっとあなたの こと大好きだった 」
「 でも この関係が壊れるくらいなら
告白しなくても いっかって思って 」
「 それでも やっぱり あなたは
モテるから どうしようって 、」
「 絶対幸せにするから 付き合って欲しい 」
私の目を しっかりみて 最後まで
言い切る かいとは 今まで一緒に
いた中で 1番かっこよかった 。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!