もう寝ようかと携帯を置いた時だった。
聞き慣れた通知音と懐かしさを感じる通知バナー。
あなたは少し考えてから、バナーをタップした。
別れてからトークは消してしまったから、まっさらなトークルームに表示される彼の吹き出し。
ーーー何よ、今更ーーー、、、。
早く忘れられるように、とトークを消したあの時の私の勇気を返してよ、、、!
やや早くなった心拍数は、きっとそんな怒りからだ。
決して、忘れられてなかったという喜びなんかではなくて…!
ドクンドクンと強く波打つ心臓に合わせて指先が揺れる。
スワイプする指が止まった。
どういう意味?そう聞いてしまえば、きっと全て終わってしまう。
細くて脆い、たった一本の繋がりはあっさりと手のひらからこぼれ落ちてしまうだろう。
大きく息を吸って、あなたは顔を上げた。
そしてゆっくり息を整える。
その瞬間、ポンっとトークが更新された。
お花畑が有名な公園のURLと共に、送られたメッセージ。
思わずふっと口角が上がってしまった。
ーーーここって、有名なデートスポットじゃない。
どうせ行くって言うとわかってたくせに。
他を誘ってダメだったから私を誘ってるの?
私まだあの時のこと、、、。
思いとは裏腹にテンポよく動く指先と口角。
ねぇ、どうしてだろう?
このソワソワ、ふわふわした感覚はあの当時の事を思い出したからじゃないの?
期待しちゃいけないって痛いくらい分かったはずなのにーーー、、、。
ネモフィラ畑であなたに会ったら。
、、、きっとまた、あなたに恋をする。
ネモフィラ ー あなたを許す
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!