第8話

8
923
2022/05/28 22:35
...夢を見た。
目の前には真っ黒な景色が広がっていて、そこにぽつんと白い影が座り込んでいる。
影はぼろぼろと涙をこぼし、こちらに手を突き出して助けを求めていた。
俺が1歩足を踏み出すと、
影の後ろから複数の手が伸び、白い影の首を絞めた。
「カハッ...ァ"ッ...、」
影は呻くと、必死に抵抗している。

俺は大きく瞬きをした。
瞼を開けると、白黒だった世界に色が戻っていた。
色鮮やかになった世界に思わず戸惑ってしまう。


これは...夢か...?現実か...?
もう1度瞬きをすると、
先程まで影となっていた人の姿に色がつき、
くっきりと姿が見えるようになっていた。


茶髪の男と複数の制服姿の男。

茶髪の男は横たわり、大粒の涙を流している。
制服姿の男たちは俺を指さし、強引に俺の腕を引っ張って茶髪の男の方に突き飛ばした。
「ご   め   ん   。」
ボソッ...と俺はそう呟いていた。
頬には何故か生暖かい涙が伝っている。
悪い夢でも見ているのだろうか。
そうであるならば早く覚めて欲しい。


...夢?


...ちがう...。これは...俺の...











ジリリリリリリリッ!!!
槇原 優羅
槇原 優羅
ッ!!
頭を貫くような目覚ましの音で目を覚ます。
目覚ましを止めると上半身を起こした。

...酷い汗だ...。

額の汗を拭う。
槇原 優羅
槇原 優羅
ッ...ぅ...、
先程の夢を思い出し、強い吐き気に襲われた。
俺はベッドから降りると直ぐにトイレに駆け込む。
槇原 優羅
槇原 優羅
お"ッ...ぇッ...、ゲホッ...、
胃液が口から吐き出され、目尻に生理的な涙が浮かんだ。  

歪んだ視界の中、真っ白な壁を見つめる。
……この夢を見るのは何度目だ……?
嘔吐物を拭いながらそんなことを考える。
いや……あれは夢なんかじゃない。
……俺の数年前の記憶だ。


……俺はいつまでアイツに囚われているつもりなんだろう…。
槇原 優羅
槇原 優羅
ッ...ゲホッ...、
嘔吐物を流すと、
ヨボヨボと下の階に降りて学校へ行く準備をする。
体がだるい...。行きたくねぇ...。


制服に着替えていると、リビングのドアが開いた。
母さん
母さん
優羅...?
槇原 優羅
槇原 優羅
...母さん?珍しいね...、おはよう。
母さん
母さん
えぇ、おはよう。...大丈夫?顔色悪いよ...?
槇原 優羅
槇原 優羅
大丈夫だよ。変な夢見ただけ。
母さんこそ大丈夫?
...というのも、母は数年前にストレスによる病を発症し、
ベッドに寝たきりになっていたのだ。

だからこうして朝の挨拶を交わすのも本当に久々だった。
母さん
母さん
大丈夫よ。朝ごはん食べた?
なんか作ってあげようか。
槇原 優羅
槇原 優羅
いいの?じゃあお願いしようかな。
俺の言葉に、母が嬉しそうに目を細める。
しばらくすると、テーブルに彩りの良い食事が並んだ。
槇原 優羅
槇原 優羅
いただきます
味噌汁を喉に通すと、心が温まった。

久しぶりの味だ...。
ここ数年は自分で作ったり、スーパーの食事だったことが多かったから、久々母の料理に感動してしまう。
槇原 優羅
槇原 優羅
めっちゃ美味しいよ、ありがとう。
母さん
母さん
ううん、いいの。いつもごめんね。
優羅はまだ高校生なのに...。
槇原 優羅
槇原 優羅
気にしないで。体調の方が大切でしょ?それに、色々極めとけば将来の役に立つだろうしさ。
母さん
母さん
ふふ...ありがとう。
母さんはそう言うと優しく微笑んだ。

プリ小説オーディオドラマ