ある日のデートの帰り。
花屋の前を通ろうとすると、
〇〇が"あっ…"という声を漏らした。
「どないしたん、?」と尋ねると、
1つの花を指差し、「綺麗なお花だね」と
見詰め微笑んでくる〇〇。
そこには"アザレア"と書かれたふだが掛かった白い花があり、ふだには花言葉も書かれている。
"花言葉は…
『あなたに愛されて幸せ』、だって~"
「へ~…そんな花言葉あるんや」
"私、この花大好きっ…可愛いね"
そう言うと〇〇は微笑む。
「なら、この花買ってくるから待ってて」
…………
「ただいま~…今日は〇〇の大好きな、大好きな、真っ白なアザレアを買ってきましたよ~」
そう言い、ビニール袋から鉢植えに入った白いアザレアを取り出すと仏壇の前にそっと置き手を合わせる。
…あの日から3日後の昼過ぎ、逆走した車がたまたま〇〇が歩いてた歩道に暴走したまま侵入。〇〇は即死。
最後に会ったのはあのアザレアに出会った日、最後に連絡をとったのは〇〇が事故で亡くなる5分程前。
「今日早く仕事終わるから、
どこかに食べに行かない??」
「お!ええな~楽しみにしとこ~」
…当たり前のような会話だった。
でも当たり前の中にも温かさがあった。
どこか友達と食べに行けば良かったのに…
一人でゆっくり過ごせば良かったのに…
最後まで〇〇は〇〇だった…。
「〇〇…
俺も〇〇に愛されて幸せやったで…?」
幸せをありがとう______。
〇〇…愛してるで______。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!