あの日は裏道さんが私のアパートまで送ってくれた。
道中ではあんまり喋らなかったけど…。
自分の気持ちが整理しきれないまま、私はロケの疲れもあってか最低限の事だけをして布団に入った。
……今日はとりあえず休もう。
考えるのは明日から。
そう言い聞かせて眠りについた。
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MHK
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スタジオ
いけてるお兄さんいないと、寂しいなぁ。
もう収録始まるけど…。
名前で呼ぶのに慣れてしまったから、ついスタジオでも名前で呼びそうになってしまった。
裏道さんはそう言って、スタンバイ中のうさくまたちの元へ行ってしまった。
…心配してくれたのかなぁ。
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♪~♪~♪~
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…裏道さん、何やかんや今日のバイキンダーノリノリだな。
やっぱり池照くん居ないから!?
にしてもバイキンダーの衣装、やっぱりダサ…やば、目合うとこだった。
バイキンダーの部下、バイキンコの私は横で立ちながら、そのノリノリの演技に笑いを堪えるのに必死だった。
あ、ウサオくんが着ぐるみ越しにほっぺつねられてる…裏道さんは器用だよね。
バイキンダーとバイキンコの私たちは一度舞台から去って、超超高速着替えをして舞台に戻る。
毎度この早着替え、地味に疲れるんだよね…。
あ、裏道さんが闇(?)トーク始めちゃった。
相も変わらずブラックジョークが過ぎるよ裏道さん。
聞いてる大人の私の方がダメージ喰らいますよ(真顔)
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収録が終わって皆で楽屋へ戻る。
池照くん、風邪は大丈夫かな…。
一人暮らしとかだと風邪引くと大変なんだよね…心細いし。
皆に挨拶して自分の楽屋に行き、ササッと着替えて喫煙所にも寄らずにダッシュで自宅へ向かう。
久々だから楽しみだなー!
でも皆と飲み会も行きたかったな…。
でも久々だし…。
ぐるぐると考えながら、私は走って自宅へ帰った。
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居酒屋
あなたさんが先に帰ると言ってから、裏道さんの様子が少し変な気がする。
用事の内容がそんなに気になるのだろうか。
裏道さんとあなたさんの仲なら、話しているものだと思っていたけれど…そんな感じではないらしい。
…兎原が絡むと面倒だな。
俺は兎原にわざと度数の高い酒を渡す。
数分もしないうちに酔って寝るだろう。
寝た。
予想より早く寝た。
裏道さんは…
心ここにあらずという感じだ。
煙草に火を付け、ため息混じりに煙を吐き出す裏道さん。
本当にそうなのだろうか。
俺にはその言葉が腑に落ちなかった。
この人は昔から他人に対してあまり興味を抱かない。
俺達のような後輩や職場仲間とは話してくれるが、基本的には自分から話しかけに行くタイプではないと俺は昔から思っている。
だけどあなたさんに対しては、誰よりもこう…甘いというかよく見ているというか。
気にかけてるように俺には見える。
今も昔も。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!