第22話

関東事変⑤
2,636
2021/07/22 10:35

ドコッ……ドスッ……


「ふっ……!」


体を捻って、その遠心力でマイキーの頭に足を振り上げる。その足は、マイキーの腕で防がれた。


「………優しさなんて要らない。敵として見なよ。私のこと」



防ぐばっかで、何もしてこないマイキー。



あぁ……そうだ……

私が言ったのだ


女に暴力は振るうなって……



それを今でも忠実に守ってる?



「オレ…あなただけは無理だ」


なんでそんな泣きそうな顔するわけ


「あー…!!もー!分かった分かった、降参」



「は?」



「私の負けで良いよ」


両手をあげて見せればポカンと口を半開きにする。



「イザナー、総長は総長同士だよね?なら、私ら副総長としなきゃだし。」


にっと笑って見せる。

東卍と天竺のメンバーが囲んでできている広い空間。


天竺の総長、副総長と東卍の総長、副総長の一騎討ち


「イザナ、負けんなよ」

「誰に言ってんだよ」

「ふはっ…確かに。」


すごいしかめっ面で返された。素直じゃないなー…


「あなた……」


「ん?」


「      」


「………は?」



ボソリと小さく。たぶん私にしか聞こえないような小さな声。
今の言葉を聞き直そうとイザナの方に顔を向けるも、あいつは既にマイキーの方に向かっていた。



「言い逃げかよ………」


ひどい男

最低だ……


小さくため息をつき、腰に手を置き目の前に立つ東卍の副総長に向き合う。


「女だからって手加減とか要らないから。舐めてると死ぬよ?」

ガタイだって全然違うし、私の方が圧倒的に小柄だけど。それでも、負ける気はないし、怯んだりもしない。
これまでどれだけの人間相手に殺って来てると思ってんの?


「…どうなってもしんねぇぞ」

「はっ…なめんな!」


大柄な彼に一発いれる。走り出して、軽く飛び、空中で体を捻る。ゴスッといい音がしたけど、完璧に腕で防がれていた。


「チッ…」


しかも、距離近づいてるから腹に重いの食らったし…

体ちょっとそらしたから急所入ってないけど

きっつ…



(マイキーと変わんねぇくらいの蹴りの重さ……こいつヤベェな…)


あー

腹痛ぇ




「ドラケンのくらって立ってられんのかよ…!?」
「あの女、バケモンだろ…」




「いったー……。マジで容赦ないじゃん」

「舐めてるとこっちが殺られそうだからな」

「ははっ……今ので分かるとか流石…



万太郎が認めただけはあるね…!!」



ゴスッ……ドカッ……



ミシッ…


「っー……!」


ヤベ……

ワンチャン折れたかも………

流石に何回も腕で防げば無理だよな……バケモンみたいな力だし


私の蹴りも何個か入ってるし


あっちだって体はキテるはず…




てかさ、顔殴りゃあ一発だと思うけど

あれか


こいつ絶対いい奴なんだわ




一発できめるしかないなー……


相討ち覚悟で



腕はもう使い物になんないし

足だって限界


なら…


太ももに隠してあったナイフを取り出す。


「ナイフ……?!」
「あいつ、卑怯だろ…!」




「ゴメンね?負けるわけにはいかないんだわ」

「チッ…」


うはっ、舌打ちされたー


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