「あなたちゃん?!」
「うへー…、ごめんなさーい」
「何回言ったら分かるの!勝手に外にいかない!」
「私、もう中学生なんだけど。そんな心配されなくても平気」
「こら!あなたちゃん、待ちなさい!!」
「さよなら~」
後ろで怒鳴っている施設長にひらりと手を振り、自身の部屋に入る。
「めんどーだなー…。何回言っても無駄だって分かれよ…」
施設に来てから1年。私は近くの高校に進学した。
「あなた」
「イザナ?どしたの?」
「くせぇ…」
失礼な
「やっぱ血の臭いする?失敗したなー…ちょっと被ったんだよね」
今日殺ってきたのはどこかの会社の人。依頼人が会社の取締役だったからか、金は百万を越えた。
「なんか、自分に意見する奴だったから気にくわなかったらしいね?ふはっ…、そのうち自分が殺されるかもしれないのに?」
同時に依頼されてんの。
だから、
「今度はあいつを殺しに行かなきゃ」
「……ふーん」
イザナは興味なさげに隣に座った。そのイザナにさっき買ったアイスを手渡す。
「そう言えば新しい子来たらしいじゃん。会ったの?」
「興味ない」
しゃり…と音をたててアイスをかじる。何が一番美味しいって、バニラとチョコの組み合わせだと思う。ついでに言うとチョコがコーティングされたアイスが一番うまい。
「何処にいんだろ…。探そ、イザナ」
「は?」
最後の一口を飲み込んでから、にっと笑う。あからさまに面倒くさいという顔を見せながらも、ついてきてくれる。
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「みっけ」
施設の建物と建物の隙間。地面にせっせと山を作っている男の子。
「何つくってんの?」
声をかけると、バッと振り向いた。
たしか……鶴蝶だっけ?
「お父さんとお母さんのお墓…」
あぁ…たしか……事故で両親死んだんだっけ?
隣にいたイザナが珍しく鶴蝶に興味を持ったらしい。自ら近づいていって、鶴蝶が作っていたお墓を蹴り飛ばした。
「何すんだよっ…!!」
グイッ
「オレの下僕として生きろ」
無茶な奴だと思うよ
誰に似たのか…………私か
私も人のこと言えないもんなー……
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「雪…!」
窓から外を覗いたカクがぱっと笑う。
「あなた!!」
「ふー…はいはい。イザナ行こ」
「お前ガキかよ」
「イザナには言われたくないでーす」
イザナの手を取り引っ張る。
コートを着込みマフラーを巻く
「さむっ…」
子供体温か……
カクは元気だね…
雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり。
まともな遊びをした気がする。
そのあとに作った大きなかまくら
中にライトを持ってきて、紙を広げる。
「国を作る」
イザナと昔からずっと話していたこと。
「身寄りのない奴等をみんな国民にして、居場所を作ってやるんだ」
「国の名前は?」
「「天竺」」
イザナと一度目を合わせてからにぃっと笑う。
ゴロリと雪の上に寝転んでいるイザナとカクの間に倒れこむ。ぐぇっという声が聞こえた。
「天竺……きっといい時代になるよ」
私たちが作る
最高の時代
「ずっと3人だからな」
「…うん……約束」
イザナとカクの小指に自分のものを絡める。
約束をした。
あの時はずっと一緒にいれるものだと疑わなかった
けど、それから一週間後
私は施設を出た。
二度と戻らなかった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。