俺にとって白峰あなたは姉のような存在だ
マイキーくんはドラケンくんと俺の前でそう言った。
マイキーくんの家にドラケンくんとお邪魔して。しばらく黙っていたマイキーくんは決心したかのように前を向いた。
「この前は変な態度とったな…。気づいてると思うけど、俺は白峰あなたを知っている。」
その後、マイキーくんは静かに白峰あなたとの関係性を話してくれた。
------- 過去 -------------------------------------------------------------
初めてあったのは俺と場地が5歳のとき。
「おいおいおい。」
「お前らここは俺らの縄張りだぞ~」
「どっか行けよガキ!ぶっ殺されてぇのか!」
キャァァァ
ウェェェン
俺と場地がいつも通り喧嘩していたとき。いかにもぐれてる高校生が数人公園に入ってきた。ここの公園は小さい子や小学生とかが遊び場にしている。そんな子たちを脅して泣かせて、我が物顔で入ってきた。
「場地…」
「おー」
「あ?何だよクソガキ」
「ぶっ殺されてぇのか!」
「小学生にしか強がれねぇのかよ。ダセェな」
「あ?!」
「このガキっ!!!」
とは言え、相手は高校生。体格が違う。
大きく振りかぶって、拳を振り下ろされる。それを避けようと体を捻った瞬間。
バコッ
その男が横に吹っ飛んでいった。
「はぁぁ……。子供殴ろうとするとか頭トンでる?高校生のくせに、常識って奴知らねぇの?」
「あ?!」
「何だこの女!!」
赤色のランドセルを担いだ小学生が俺らの前に仁王立ちしている。
「いいよ。やってやるよ。かかってこいや、クソども」
ランドセルをぽいっと投げ捨て、その少女はものの数分で高校生をぼこぼこにした。
呆気にとられた俺たちはポカンと口が半開きになっている。
「平気?怪我は?」
「な、ない…」
「そ。なら、今度は絡まれないようにしなよ」
にかりと笑いながらぽすりと俺らの頭に手を置いて、自分が放り投げたランドセルを拾い公園から出ていった。
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「はぁ…あんたらまたやってんの?ほら、こっちおいで」
あの日以来。
俺と場地があなたに付きまとった。
あなたは面倒くさそうな顔しながら、ちゃんと相手をしてくれた。
「いてぇ…!」
「知るか。あんたが万太郎と喧嘩しなきゃいいんでしょ!」
「負けらんねぇんだよ」
「馬鹿みたい…」
はい。と言いながらガーゼを貼った部分を軽く叩く。またいてぇ!と騒いだ場地の頭をあなたは笑いながら撫でくりまわした。
「あなた~、俺は?」
「万太郎は怪我してないでしょ?」
「怪我させろよ、場地…!」
「んだよそれ!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ俺たちをいつもあなたは笑って見ていた。うるさいよあんたらとか言いながら、一番楽しそうに見てるから俺らはそれをやめなかったんだよ。
「あ?あなたも怪我してる」
「あぁ…これ?」
右の米神に貼られた大きなガーゼ。そこだけじゃなく、所々に痣が出来ている。その箇所を指差しながらあなたは首をかしげた。
「あなたも喧嘩とかすんだなぁ」
「違うわ馬鹿。あんたらと一緒にしないで。これは、一方的な暴力だから……」
「「?」」
「ははっ…、あんたらには難しいか」
そう言って少し悲しそうに笑ったあなたの顔を今でも鮮明に覚えている。
それから何度も、俺らの…いや場地の怪我の手当てをしながらあなたは何回も「一方的な暴力だけはするな」と繰り返した。
その時はそれの意味することを理解してなかったけど今なら分かる。
その言葉の意味も、あいつが両親から虐待されていたことも…
「てか、あなたなんでこいつのこと万太郎って呼ぶわけ?」
「え?んー…考えたことなかったなー。万太郎は万太郎だから?」
「なんだそれ…」
「いいじゃん。この世で万太郎って呼ぶの私だけでしょ?特権」
「っ…!」
「はぁ?!ずるっ!あなた、俺にもあだ名つけていいぞ」
「えー……圭ちゃん?」
「女みてぇでやだ!」
「圭?」
「んー……なら、それでいい!」
「ふはっ…!何でそんなにあだ名で呼ばれたいの?」
別にあだ名で呼ばれたい訳じゃない。
あなたに特別な名前で呼ばれたいだけだよ
俺らは
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。