第11話

国王陛下の婚約者
4,549
2021/09/19 09:00
アラン
アラン
俺からの贈り物を
受け取る理由としては十分だろう?
ソフィア
ソフィア
……アラン様、
アラン
アラン
それに、ソフィアが城に来てくれて、
本当に毎日助かっている。
日頃の感謝の気持ちだと思って、
受け取ってくれ
そう言われてしまえば、これ以上 遠慮するのもまた違う気がして。
ソフィア
ソフィア
ありがとうございます。
……大切にします
***

あくる日の朝。
オリバー
オリバー
陛下、エマ様がお見えです
ドアの向こうからオリバーさんの声。
まだベッドの中にいたアラン様は、それを聞くと、分かりやすくため息をひとつ。

⋯⋯エマ様って誰だろう?
そんな疑問が私の頭をよぎったとき、アラン様は一言「幼なじみだ」と言って、起き上がった。
ソフィア
ソフィア
幼なじみ……
声に出して聞いたわけでもないのに、またバレてしまった。

前にもアラン様から、思っていることが顔に出るといわれたことがあるけれど、私ってそんなに分かりやすい生き物なのだろうか。

……エマ様って名前からして女の人だ。
もしかしたら、アラン様の……。
アラン
アラン
アイツの部屋で待っているよう伝えろ。
着替えたら向かう
それだけドアの向こうに投げかけて、私の用意した着替えに腕を通すアラン様。

……部屋?
さっきから、よく分からないことばかりだけれど、世話役の私がいちいち気にするのも変な話……だよね。
アラン
アラン
ソフィアも一緒に来てくれ
ソフィア
ソフィア
え、わ……私もですか?
アラン
アラン
あぁ、アイツに
ソフィアを紹介したい
***

アラン様に連れられて入ったのは、ピンクを基調とした可愛らしい部屋。
???
久しぶりね、アラン
アラン
アラン
あぁ、お前も相変わらずだな、エマ
エマ
エマ
……どういう意味よ

エマと呼ばれたのは、可愛らしい女の子だった。
豪華なドレスを身にまとい、胸まである茶色い綺麗な髪はゆるく巻かれている。
アラン
アラン
その髪飾り、
いい加減 卒業したらどうだ?
もう18だろ
エマ
エマ
”まだ”18!
自分と同じ感覚で物言わないでよね
幼なじみと聞いて、アラン様には仲の良い兄妹のような相手がいるんだと勝手に思っていたけれど、目の前の2人は……どちらかと言えば犬猿の仲。

”ああ言えばこう言う”そんな言葉がピッタリ。

……エマ様は私と同い年なんだ。
だけど、キラキラしていて、可愛らしいエマ様は、私とはまるで別世界の人に思える。
エマ
エマ
……ところで、その子は?
ソフィア
ソフィア
───!
アラン
アラン
あぁ、お前に紹介したくて連れてきた。
俺の専属世話役を任せているソフィアだ
アラン様の紹介に続いて、慌てて深々と頭を下げる。
エマ
エマ
あぁ、アランの世話役ちゃんか。
この子は続きそう?
エマ
エマ
アランの世話役の人達ってね!
アランのワガママに疲れちゃったり、
アランのこと好きになっちゃって、
アランにこっ酷く振られたり……
み〜〜んな、辞めてっちゃうの
アラン
アラン
おい、余計なこと言いに来たならもう帰れ
エマ
エマ
だって、本当のことでしょ?
今度こそ、続けて貰えるように
アランが努力しなさいよね〜
そう言いながら、エマ様はべーっと舌を出して見せた。アラン様の幼なじみというからにはそれなりの身分の方なんだろうけど、気取っていなくて、ちょっとお転婆で、親しみやすそうな雰囲気だった。
アラン
アラン
……あぁ、そのつもりだ。
ソフィアには傍にいてもらわないと俺が困る
ソフィア
ソフィア
……えっ、
オリバー
オリバー
陛下!
アイザック伯爵がご挨拶に
アラン
アラン
……あぁ、今行く。
ソフィア、仕事に戻ってくれて構わない
エマもゆっくりしていけ
ソフィア
ソフィア
はい
私の頭を小さく撫でて、部屋を出ていくアラン様。これも”いつものこと”になりつつある。
エマ
エマ
ね、ソフィア
ソフィア
ソフィア
はい、エマ様
アラン様が完全に部屋を出たのを見計らって、エマ様が小さく私を呼んだ。
エマ
エマ
アランのこと、好きなんでしょ?
ソフィア
ソフィア
───!?
エマ
エマ
あ、図星だ。
やっぱりね〜!
ソフィア
ソフィア
そ、そんな……私なんかが
好きになっていい相手じゃ……!
エマ
エマ
私、これでも一応、
アランの婚約者なんだけど
アランが誰かに対して
あんなに甘々なのは初めて見たわ
ソフィア
ソフィア
……え、婚約者?
───ドクン。

ポロッとエマ様の口から零れた言葉に、私の心臓が大きく波打つ。

……アラン様ってば、”幼なじみ”としか教えてくれなかったくせに。こんな可愛らしい婚約者がいたなんて……。
エマ
エマ
あ!違う違う!親同士が勝手に、ね。
私たちお互いに婚約解消を望んでるの。
今日もその作戦会議に来たところ!
エマ
エマ
だから、安心して?
私、ソフィアのこと応援するよ
エマ様は裏表のない笑顔で微笑んで、”任せて”なんておどけて見せる。

私なんかが……って思うのに、アラン様に婚約者がいると知ってザワつく胸に嘘は付けなくて。

”ソフィアのこと応援するよ”
その言葉が、今はやけに嬉しかった。

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