アランside
昔から、どんなときも穏やかで優しいスコット伯爵は、国王である父上の大親友だった。
父上が亡くなった時も1番に力になってくれた。
俺にとって第2の父と言ってもいい存在だ。
この人なら、俺を分かってくれる。
受け入れてくれる。
……そう信じてここへ来た。
誰に頭を下げることになっても、例えそれが、”一国の王がが簡単に頭を下げるなんて”と非難されても。
───彼女との未来だけは、諦められない。
***
父上が急逝してから今日まで、国王としてとにかく必死だった。
父上の側近たちの中に、俺の失脚を狙う者がいることにも気付いていた。
俺の後ろをついて回り、二言めには結婚を、と騒ぎ立てる側近たちにもいい加減うんざりだ。
国王たるもの、国のため、民のため、己の自由がないことは仕方のないことだと、父上は常々仰っていた。
だが、父上は決して家族との時間を蔑ろにはしなかった。
母上との時間を、俺との時間を、家族3人の時間を作って、いつも温かく笑っていた。
……俺も、そんな家族を作りたい。
国を、民を思うのであれば尚更、俺が幸せでなければならないと思う。
俺が満たされていなければ、この国に幸せをもたらすことはできない。
***
側近たちは、俺が何を言いたいのか分からないと言わんばかりに、首を傾げ始める。
俺に必要なのは、ただ1つ。
突然、広間の扉が開き、雪崩込むように中に入ってきたソフィアに続いて、母上と、エマ、そしてルイが俺に向かってゆっくりと歩み寄る。
俺が、この国を護っていくために、1つだけ求めるもの。自分の意思で、どうしてもそばにおきたいもの。諦められないもの。
───それが、ソフィアだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。