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2021/08/29

第8話

アヌザの城下町
"どうやら俺はソフィアを独り占めしたいらしい"

"俺よりソフィアをよく知ってるんだと思うと妬けるな"


ここ最近のアラン様は心臟に悪い。
私の心を簡単に揺さぶるくせに、当の本人は涼しい顔をしているし、言葉の本意も分からないまま。

優雅に朝の珈琲を口へ運びつつ、手元の本に視線を落とすアラン様の横顔を眺めながら、頭の中は大忙し。

いや、そもそも⋯⋯相手はこの国の王様で、私は北部の町娘。住んでいる世界が違いすぎる上に、アラン様にとって私は"専属世話役。

きっとこの先も恋愛対象になんてなるはずがない!
……でも、じゃあなんで、"妬ける"なんて言ったんだろう。所有物に対する独占欲のようなもの……?
アラン
アラン
ソフィア
ソフィア
ソフィア
……っ、はぃっ
不意打ちで名前を呼ばれ、すっかり裏返る声。
アラン
アラン
デートに行こう
ソフィア
ソフィア
で、デートですか?
アラン
アラン
あぁ。
ソフィアの支度が出来次第、すぐ出発しよう
***
ソフィア
ソフィア
わぁ……!
アラン
アラン
来るのは初めてか?
ソフィア
ソフィア
はい。お城で生活するようになってからも、お城の仕事をするか北部に帰ることしか頭になかったので
アラン様が連れてきてくれたのは、城下町。
初めて目にする南部の街並みは、本当に北部と同じ国か疑ってしまうほど、オシャレで栄えていた。
ソフィア
ソフィア
……北部とは全然ちがう
アラン
アラン
そうか、
来たことがないならならちょうどいい
ソフィア
ソフィア
ア、アラン様……!?
私の指に自分の指を絡め、"行くぞ”と歩きだすアラン様に戸惑う。
ソフィア
ソフィア
アラン様……!人の目が、
国王と世話役が手を繋いで城下町を歩いているなんて、許されるはずがない。だけど、慌てる私の手を尚も強く握りしめてアラン様は楽しそうに笑う。
アラン
アラン
心配するな。誰も俺の正体を知らない
ソフィア
ソフィア
お、お忍びってことですか?
アラン
アラン
正解
いたずらな笑顔にまたドキッとする。お城のみんなはワガママだっていうけれど、私の知るアラン様は、ワガママというよりも、無鉄砲でちょっぴり強引。


***

オシャレなお店でお茶を飲む若者、井戸端会議を楽しむ主婦、大きな公園を楽しそうに駆け回る子供たち。

そして何より、人で賑わう市場は北部の何倍もありそうだ。
アラン
アラン
見ろ、ソフィア
ソフィア
ソフィア
……?
アラン様が指さしたのは八百屋さんの店先。

言われるがまま、近づいた私の目に飛び込んできたのは、良く知る果物や野菜。

───そして、"北部産"の文字。
ソフィア
ソフィア
これ⋯⋯
アラン
アラン
この間、騎士たちと収穫したものを
南部の店に卸すことになったんだ。
こうして少しずつでも北部と南部の
距離が縮まってくれたらと思ってる
ソフィア
ソフィア
私も、そうなってくれたら嬉しいです!
アラン
アラン
あぁ。必ず、実現する
そう言ったアラン様の横顔は真剣で。
南北の溝を埋めようとする彼のことを支えたい、私も力になりたい。心底そう思った。

だけど───。
南部の人々
あら、ここにも北部産が置いてある
八百屋
あぁ、どうやら国王様の提案らしくてなぁ
南部の人々
さっき、魚屋にも北部産が置いてあったわ
なんだか変な感じよねぇ
八百屋
今の国王様はだいぶ若いからなぁ。
これからのアヌザについて
どうお考えなのやら……
南部の人々
先代からの側近たちが
国を牛耳るようになったりしてね
アラン様の熱い想いはまだ、国民たちにはこれっぽっちも届いていない。

たまたま聞こえた会話は、アラン様が国王として未熟だと言っているように聞こえて悲しかった。
アラン
アラン
民の声を聞け
ソフィア
ソフィア
……え?
アラン
アラン
父上がよく言っていた言葉だ
アラン
アラン
こうして街を歩くと色んな声を聞く。
良くも悪くもしっかり受け止めて、
今の俺に出来る最善を尽くす
ソフィア
ソフィア
 じゃあ、今日の”デート”も
街の人達の声を聞くために?
私なんかが思うより、ずっとずっと色んなことを深く考えて、国民の声を受け止め、自分なりに頑張ろうとするアラン様に、ほんの少しときめいている自分がいる。