第19話

突然の訪ね人
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2021/11/14 09:00
もちろん、動揺していないわけじゃない。

”アラン様のご結婚”という知らせを聞いて、冷静でいられるほど、私はできた人間じゃない。

だけど、アラン様の口から告げられた言葉を私は信じている。
ルイ
ルイ
ソフィア……!
もし陛下がソフィアを想っていても、
国王として、陛下には守るものが……
ルイの言っていることはよく分かる。

……だけど、私だって半端な気持ちでアラン様を想っているわけじゃない。
ソフィア
ソフィア
ルイ……、
ルイの気持ちはすごく嬉しい。
私もルイのことは好きだよ!
だけど、
ルイ
ルイ
……あぁ。
ソフィアの気持ちは分かってた。
だけど、心配なんだよ
ソフィアが傷つくところは───
───コンコンコン!
ルイの言葉の途中で、勢いよくドアを叩く音。
ドロシー
……今度は誰かしら?
ドロシーおばあちゃんがドアを開けたのとほぼ同時に、飛び込んできた人物を見て、私とルイは顔を見合わせた。
エマ
エマ
おばあさま!
ソフィアはいる!?
ソフィア
ソフィア
……エマ様!?
***

飛び込んできたエマ様の”おばあさま”という言葉に驚いたのは、多分、私だけじゃない。

隣で目を見開いたルイも同じくらい驚いただろう。

エマ様のお母様が北部出身だとは聞いていたけれど、まさかドロシーおばあちゃんがエマ様の実のおばあさまだったなんて。
ソフィア
ソフィア
オレンジティーどうぞ
エマ
エマ
……ありがとう、ソフィア
オレンジティーの爽やかな香りが鼻を掠める中、
ソフィア
ソフィア
それで……
どうして北部にエマ様が?
エマ
エマ
……アランに頭を下げられたの。
少しの間、姿を隠して欲しいって
ソフィア
ソフィア
……え?
エマ
エマ
ソフィアの留守中に、城の中で、
反アラン派の動きが強まったの。
……中には、これを機にアランを
失脚させようと狙う者もいるみたい
ソフィア
ソフィア
……アラン様を失脚!?
エマ
エマ
国王たるもの、早く身を固めないと
隣国から軽んじられる!とか
騒いでる側近たちを見かけたわ
ソフィア
ソフィア
……そんな、
エマ
エマ
だから、私に姿を隠して
時間稼ぎに協力してくれって
エマ
エマ
あのアランが私に頭を下げるなんて
……これも全部ソフィアのためね
私が留守にしていた間の城での動き、そしてエマ様がここへ来た理由をエマ様の口から聞いて、全てを理解した今なら分かる。


” 俺も片づけたい問題があるからちょうどいい。
3日後、また迎えに来る。”

あの日の言葉の意味。

……アラン様は今、自分を失脚させようと目論むヤツらと1人で戦っているんだろうか。
エマ
エマ
……あの!
ルイ
ルイ
……え?俺、ですか?
アラン様へと思いを馳せている間に、エマ様がルイへと向き直った。
エマ
エマ
……私のこと、覚えていませんか?
ルイ
ルイ
エマ様のことは、もちろん
存じ上げておりますが……
エマ
エマ
そうではなくて。
以前、国境近くで
危ない目に遭ったところを
助けていただいたんです
ソフィア
ソフィア
……え、それって
ルイ
ルイ
……以前、助けたことが?
ルイ
ルイ
国境近く……あぁ!思い出した。
あれは確か北部へ来る途中……
エマ
エマ
……はい。
あの時は気が動転していて、
お礼の言葉すらままならず……。
もう一度会えたらお礼を伝えようと
あの日からずっと決めていたんです
エマ
エマ
あの時は、ありがとうございました
ルイ
ルイ
あの時のご令嬢は、エマ様でしたか!
良かった。王族や貴族の皆さまを
お護りするのが、我々騎士の務めですから。
ルイの前ではにかんでいるエマ様はいつもより丁寧な言葉遣いに、綺麗な立ち居振る舞い。

貴族の令嬢にふさわしいその仕草は、彼女をよりいっそう美しく見せていた。

それにしても、前に言っていたエマ様の好きな人が……まさかルイだったなんて。

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