2人の様子を静かに見守っていた私だけれど、エマ様の切なげな表情に胸が締め付けられた。
エマ様も私と同じように、身分違いの恋に苦しんでいる。
そして、こうしている今も、ルイへの気持ちに蓋をしようと頑張っている。
……何もしてあげられないのが、ただ辛い。
いつも元気で愛らしいエマ様にそんな苦悩の日々があったのかと思うと切ない。
そう言って肩をすくめたエマ様に、その頃のアラン様を想像して、苦笑いを零す。
”でもね”と、エマ様は真剣な顔で続けた。
アラン様が一人で抱えていた不安って、一体どれほどのものなのだろう。
私なんかには見当もつかない不安と、周囲からの重圧に、まだ幼いアラン様が一人で耐えていたのだと思うと、胸をグッと鷲掴みにされたような苦しさが襲った。
私がアラン様を変えるような何かを持っているとは思わない。それに、アラン様がこんな大変なときに、傍にいてあげることすら出来ていない。
今も、一人で背負わせて、一人で戦わせてしまっている。そう思うと、自分の不甲斐なさに嫌気がさす。
───"だからこうして、ソフィアに癒してもらいに来た"
3日前、流星群の下でアラン様がくれた言葉を思い出す。……私でも、アラン様の支えになれているんだろうか。
こうして離れた場所からも、アラン様を支えることが、できているんだろうか。
……アラン様が頑張っているなら、私だって一緒に頑張りたい。疲れたときは、癒してあげたい。いつも傍で、どんなときにもアラン様の支えになりたい。
───これを、愛と呼ばずになんと呼ぼうか。
離れた場所からじゃなくて、ちゃんとアラン様の隣に立って、一緒に戦いたい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。