第20話

隣に立って支えたい
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2021/11/21 09:00
2人の様子を静かに見守っていた私だけれど、エマ様の切なげな表情に胸が締め付けられた。

エマ様も私と同じように、身分違いの恋に苦しんでいる。
そして、こうしている今も、ルイへの気持ちに蓋をしようと頑張っている。

……何もしてあげられないのが、ただ辛い。
エマ
エマ
私とアランの結婚は、
お互いに望んだものではないの。
父同士が大親友でね、
先代の国王が亡くなる前は
私とアランが"将来結婚してくれたら”
って話をよくされたけど、それだけなのよ
ソフィア
ソフィア
……それだけ?
エマ
エマ
婚約者であることが書面として
残っているわけじゃない。
先代が亡くなった後、側近たちが
あたかも正式な婚約が交わされている
かのように振舞って私を"婚約者"として
扱うようになった
エマ
エマ
そこからは地獄よ!
次期王妃としての自覚が足りない!
なんて言われて、お城に顔を出すたびに
教育、教育、教育……。
ルイ様に助けていただいたのも、
そんな教育ばかりの毎日から
逃げ出すように城を飛び出した日だったわ
いつも元気で愛らしいエマ様にそんな苦悩の日々があったのかと思うと切ない。
エマ
エマ
それに私、俺様で、自尊心が高くて、
無鉄砲で、自惚れ屋で、おまけに超強引な
アランが小さいころからすごく苦手なの
エマ
エマ
国王になってすぐの頃は特に、
いつも上から目線だし全然優しくないし
無駄に自分に自信があるし
無鉄砲すぎて、彼の考える
無茶な"婚約破棄計画"に
何度ヒヤッとさせられたことか……
そう言って肩をすくめたエマ様に、その頃のアラン様を想像して、苦笑いを零す。
”でもね”と、エマ様は真剣な顔で続けた。
エマ
エマ
今思えばあの頃のアランは、
若くして国王になった不安を一人で背負って、
この国と民を守るために……
少し無理をしてたかもしれないって
最近は思うようになった
ソフィア
ソフィア
……国と、民を一人で
ルイ
ルイ
……っ、
アラン様が一人で抱えていた不安って、一体どれほどのものなのだろう。

私なんかには見当もつかない不安と、周囲からの重圧に、まだ幼いアラン様が一人で耐えていたのだと思うと、胸をグッと鷲掴みにされたような苦しさが襲った。
エマ
エマ
だけど、
ソフィアに出会ってアランは変わった
ソフィア
ソフィア
…… わ、私は何も
私がアラン様を変えるような何かを持っているとは思わない。それに、アラン様がこんな大変なときに、傍にいてあげることすら出来ていない。

今も、一人で背負わせて、一人で戦わせてしまっている。そう思うと、自分の不甲斐なさに嫌気がさす。
エマ
エマ
そんなことない。ソフィアは、
アランが戦う理由になってる。
頑張る支えになってる。
ソフィアは、アランの原動力なんだよ
ソフィア
ソフィア
原動力……?
エマ
エマ
"好き"の力は、
何よりも強くて優しいと思わない?
頑張ろう!って気持ちになるし、
疲れた時は癒しにだってなるわ
───"だからこうして、ソフィアに癒してもらいに来た"

3日前、流星群の下でアラン様がくれた言葉を思い出す。……私でも、アラン様の支えになれているんだろうか。

こうして離れた場所からも、アラン様を支えることが、できているんだろうか。

……アラン様が頑張っているなら、私だって一緒に頑張りたい。疲れたときは、癒してあげたい。いつも傍で、どんなときにもアラン様の支えになりたい。

───これを、愛と呼ばずになんと呼ぼうか。
ソフィア
ソフィア
エマ様、ルイ……私、お城に戻る!
アラン様の傍でアラン様を支えたい
離れた場所からじゃなくて、ちゃんとアラン様の隣に立って、一緒に戦いたい。

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