あれから、エマ様とお茶をご一緒することになった。同い年ということもあり、あれこれ話は弾んで、時間があっという間に流れていく。
”ね!”と笑ったエマ様は優しくて頼もしくて、その笑顔を見ていたら、なんだか勇気がもらえたような気がした。
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エマ様に勇気をもらった翌日、私はオリバーさんに頼んでアラン様にバレないよう、北部の仕立て屋までやって来た。
ここ最近、オリバーさんは前よりだいぶ気さくに話してくれるようになった。
誕生日と言えば、やっぱりケーキだよね。
もちろん、アラン様の誕生日だもん、盛大に執り行われることは間違いないし、
ケーキなんて、食べきれないほど用意されるんだろうけれど。
それでも、どうしても自分で作りたいと思った。『おいしい』と食べてくれるアラン様を思い浮かべると、自然と笑みがこぼれる。
私を見て、眩しいものでも見るかのように目を細めたオリバーさんは、いつになく優しい顔をしている。
オリバーさんはそう言ってくれるけれど、
アラン様やお城の皆さんの傍で過ごすようになって、毎日働くことに喜びを感じている。
むしろたくさんの幸せをもらっているのは私の方だ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。