第12話

贈り物
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2021/09/26 09:00
エマ
エマ
私の母は北部出身なの
ソフィア
ソフィア
え!そうなんですか?
じゃあ、もしかしたらエマ様の
おじいさんやおばあさんと
会ったことがあるかもしれません……
エマ
エマ
おじいさまは早くに亡くなって
今はおばあさまが1人で暮らしてるの
エマ
エマ
南部で一緒に暮らそうって言っても
おじいさまと過ごした北部がいいって
ソフィア
ソフィア
……そうなんですか。
北部に沢山思い出があるんですね
あれから、エマ様とお茶をご一緒することになった。同い年ということもあり、あれこれ話は弾んで、時間があっという間に流れていく。
エマ
エマ
……私が言いたいのは、
身分差なんて関係ない!ってこと。
胸張ってアランに気持ち伝えなよ
ソフィア
ソフィア
……それは、さすがに!
アラン様は国王様ですし、それに
エマ
エマ
はい!そうと決まれば、
もうすぐアランの20歳の誕生日!
ソフィアの気持ちを存分にぶつけよ?
ソフィア
ソフィア
でも、さっき世話役の方たちが
こっ酷く振られた……って
エマ
エマ
ソフィアは大丈夫!
アランのあの溺愛っぷりだもの
”ね!”と笑ったエマ様は優しくて頼もしくて、その笑顔を見ていたら、なんだか勇気がもらえたような気がした。
***
ソフィア
ソフィア
無理を言ってすみません……
オリバー
オリバー
いや、構わない。
……にしても、仕立て屋で何を?
エマ様に勇気をもらった翌日、私はオリバーさんに頼んでアラン様にバレないよう、北部の仕立て屋までやって来た。

ここ最近、オリバーさんは前よりだいぶ気さくに話してくれるようになった。
ソフィア
ソフィア
アラン様のお誕生日に北部の庶民が
着ている服を贈りたくて、注文してきました
オリバー
オリバー
庶民の服を?
ソフィア
ソフィア
以前、アラン様が動きやすそうだと
興味を持って下さっていたので……!
国王陛下に庶民の服を差し上げるなんて、
恐れ多い話ですけど
オリバー
オリバー
……なるほど。
いや、良いと思う。
陛下もお喜びになるだろう
ソフィア
ソフィア
へへ、そうだと嬉しいんですけど
ソフィア
ソフィア
あ!そうだ!
少し果物を採っても良いですか?
オリバー
オリバー
あぁ、構わないが
ソフィア
ソフィア
ありがとうございます!
アラン様の大好きな北部産の果物
たっぷりのフルーツタルトも作りたくて
誕生日と言えば、やっぱりケーキだよね。
もちろん、アラン様の誕生日だもん、盛大に執り行われることは間違いないし、

ケーキなんて、食べきれないほど用意されるんだろうけれど。

それでも、どうしても自分で作りたいと思った。『おいしい』と食べてくれるアラン様を思い浮かべると、自然と笑みがこぼれる。
オリバー
オリバー
随分と幸せそうだな
ソフィア
ソフィア
……すみません、つい
私を見て、眩しいものでも見るかのように目を細めたオリバーさんは、いつになく優しい顔をしている。
オリバー
オリバー
君が来てくれて陛下は変わった
ソフィア
ソフィア
え?アラン様が、ですか?
オリバー
オリバー
あぁ。
無鉄砲なところは相変わらずだが、
周囲の人の話に耳を傾けるようになった
ソフィア
ソフィア
……そう、でしょうか?
オリバー
オリバー
いろんな意見に耳を傾け、
よく考え、そして受け入れ、
それらを尊重するようになった
ソフィア
ソフィア
……良いことですよね!
オリバー
オリバー
あぁ。
1人で全てを背負おうとしていた陛下が、
少しずつ周りの助けを受けながら、
この国に、もっと寄り添おうとしている
オリバー
オリバー
ソフィア、君のおかげだ
オリバーさんはそう言ってくれるけれど、

アラン様やお城の皆さんの傍で過ごすようになって、毎日働くことに喜びを感じている。
むしろたくさんの幸せをもらっているのは私の方だ。

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