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2021/10/10

第14話

祝福の日
今日は朝からお城が騒がしい。
それもそのはず、今日はこの国の王であるアラン様の誕生日。

盛大な祝賀会が開かれる今夜のために、あちこちで飾り付けを行う人や、料理を運ぶ人、招待客の確認を行う人……

沢山の人がアラン様のために動いている。
ソフィア
ソフィア
よし、私も頑張らなくちゃ
1度はアラン様の誕生日に気持ちを伝えようと決めたはずだったのに、側近たちの結婚を急ぐ声を聞いてしまったあの日、
ソフィア
ソフィア
私は”専属世話役”
それ以上は、望まない……
その決心に、再び蓋をすることに決めた。
***

───夜。

華やかな灯りで照らされたお城は、いつも以上にキラキラと輝いている。
ソフィア
ソフィア
綺麗……
そして、思わず見惚れてしまうのは、お城の階段を登ってくる、綺麗なドレスに身を包んで、おめかしした貴族の令嬢たち。
ソフィア
ソフィア
素敵、みんなお姫様みたい……
そうなると、気になってしまうのは自分の格好だった。

私がまとっているのは、いつも通りの動きやすくて、手入れが楽ちんなお気に入りのワンピース。
だけど、今日はそんな自分がとても貧相に思えて、しゅん……と肩を落とした。
ソフィア
ソフィア
……仕事をするには
動きやすい格好が1番よね
勝手に口から零れたのは、自分を励ますような、慰めるような言葉。

アラン様の誕生日だと言うのに、落ち込みそうになる気分に、1人小さく溜息をついた。

***

───1時間後。

お料理を会場へ運び終わった私は、華やかな空気に火照った顔を冷やすために、バルコニーの端で夜風に当たっていた。
アラン
アラン
ソフィア
ソフィア
ソフィア
……あ、アラン様!
改めてお誕生日おめでとうございます
とても盛大な祝賀会ですね
アラン
アラン
あぁ、ありがとう。
みんな騒ぐのが好きなだけだ。
誕生日だってのに
挨拶ばっかりで息が詰まる
ソフィア
ソフィア
確かに、あんなに大勢いたら
挨拶回りは大変ですよね……
アラン
アラン
……だから、
ちょっと俺に付き合ってくれ
ソフィア
ソフィア
え?
アラン
アラン
ソフィアのためにあるものを用意したんだ
フッ、と不敵な笑みに首を傾げれば、”ほら、行くぞ”と私の手を取って歩き出すアラン様。

……気持ちに蓋をするって決めたけど、こうして優しくされたら、ドキドキと加速する鼓動は正直だ。
***
ソフィア
ソフィア
……あ、あの、
アラン
アラン
───っ!
ソフィア
ソフィア
こんな素敵なドレス……
私が着てもいいんでしょうか
アラン
アラン
ソフィアのために用意したんだ。
いいに決まってる
アラン様に案内されたのは、私の自室の隣の部屋。
ふだんは空き部屋であるそこで私を待っていたのは、赤や白、黄色、ピンク、紫、黄緑……

色とりどりのお花で彩られた、これまで見た中で一番美しいドレスだった。
ソフィア
ソフィア
まるで、お姫様になった気分
アラン
アラン
いつものワンピース姿も好きだが、
そのドレスも無邪気なソフィアに
良く似合ってる
ソフィア
ソフィア
……っ、ありがとうございます
真っ直ぐな言葉が照れくさくて、アラン様を直視できないまま俯いた私は、用意していた贈り物の存在を思い出してハッと顔を上げた。

この機会に渡してしまおう、と慌てて自分の部屋から取ってきたそれを差し出す。
ソフィア
ソフィア
あの、これ……!
私からアラン様に
お誕生日の贈り物です
ソフィア
ソフィア
と言っても、
お気に召すかどうか……
アラン
アラン
……誕生日の贈り物、か。
なんだか不思議な気持ちだ
ソフィア
ソフィア
え?
アラン
アラン
盛大な祝賀会を開催しても、
そこにあるのは国王に対して
見返りを求める貢ぎ物ばかりだ。
純粋な贈り物をもらうことはない。
……ソフィアが初めてだ。
ありがとう
嬉しそうなアラン様を見ていると、贈り物を用意して良かったと思えた。
アラン
アラン
お、北部の民が着ている服か!
それに、このタルト……
もしかして手作りか?
ソフィア
ソフィア
……アラン様に庶民の服を贈るなんて
失礼かもしれない、と悩んだんですけど。
以前、動きやすそうだと気になっている
ご様子だったので……
ソフィア
ソフィア
そのタルトはアラン様のお好きな
北部産の果物で作りました!
アラン
アラン
フッ、俺をよく分かっているな。
ソフィアのおかげで
挨拶回りばかりで億劫な誕生日が
最高の日に変わった
アラン
アラン
……そうだ、今度のデートは
お互い北部の服で出かけよう
”デート”

その単語に胸がドキッとしたけれど、アラン様にとってはきっと、深い意味なんてないんだろう。
ソフィア
ソフィア
……はい!
エマ様、ごめんなさい。
……気持ちは伝えられませんでした。

だけど、これでいい気がしています。

お誕生日のアラン様を少しだけ独り占めできたことが、私の胸をふわりと温かい気持ちで満たしてくれた。