髪をバッサリと切った。
首が少しばかり寒いのは気のせいだろう。
歯切れの悪い返事に私は苛立ちを隠せなかった。
本当にイライラしてたまらない。
誰もいない夕方の教室。
部活動の生徒が少しばかり残っているだけで、
それ以外の生徒たちは帰っているだろう。
グラウンドではラグビー部が叫んでいるようで、声が窓を閉めても聞こえてきた。
教室から出て行こうとした蓮実を見つけたのは麗央だった。
なんで、麗央が蓮実を探していたの?
このまえ、毎日、彼女と帰ってるって…。
一緒に帰るって…蓮実と?
たしかに蓮実も麗央と小学校からずっと、同じ学校だけれどそこまで仲がいいはずが…。
何なの…。
なにが起きてるの?
麗央と蓮実がなにかを言い合っているけれど、私の耳には全く入ってこない。
本当に何なの?
置いてきぼりにしないでよ。
だからかな…?
聞こえないふりをしたかったけれど、その言葉だけはすんなりと入ってきてしまった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!