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第1話

1.神様は役立たずです
晴れ渡る空に似つかわしくないため息をつきながら、私は憂鬱な気持ちで外に出る。
倉敷くらしきアヤカ、地味で根暗な高校2年生。
私の17年間の人生を一言で表すなら、視えちゃう体質のせいで沈みゆく泥船のようなもの。


ひとたび外に出れば、その辺にうようよと彷徨っている霊の類や悪いモノにちょっかいを出されて嫌がらせを受けてしまう。

死んで人間とは決して交わることがなくなってしまってもなぜか彼らは人間とのつながりを持ちたがる。
 
そして視えてしまう私は格好のターゲット。今朝も通学途中に、古いコンクリート造りのアパート前でたたずむ女の地縛霊に捕まりました。
地縛霊女は私と目が合うと一方的にこの世の未練について、暗い声でブツブツと語り始める。
地縛霊女
彼、浮気してたの……私にプロポーズまでしたくせに本命はヨシエなんだゴメン! とかほざきやがって……
許せなかったから彼の名前宛に遺書を書いてお風呂で手首をこう、サクッとやっちゃった……
倉敷アヤカ
倉敷アヤカ
うんうん、それは大変でしたね
どうせ捕まったら最後まで聞かないとこっちが呪われてしまう。私は学校に遅刻することを決意し、地縛霊女の横に座り込んだ。
冬の気配が近づく外の空気は冷たく、道路のコンクリートもひんやりと冷たい。
だけどそれ以上に地縛霊女のまとうオーラが底冷えするような冷気と重苦しさをはらんでいた。
地縛霊女
裏切った彼を呪ってやろうと思ったのにここから動けないの……ずっとここにいるしかないのかしらぁ……?
もう死んでいるくせにガタガタと震えながら言う。口元はにたぁっと笑っているけど。
私には彼女に対する同情心なんて欠片もないが、両手をこすり合わせながら地縛霊女の話を懇切丁寧に聞いているうちに出た結論は「縁結びの神様が悪い」というものだった。
ロクでもない男と彼女の縁を結んだ神様は職務怠慢もいいところだと思う。
倉敷アヤカ
倉敷アヤカ
それ、男と縁結びの神様が悪いですよ。あなたは悪くない。神様がロクでもない縁を結んだせいでお気の毒に
地縛霊女
そう? そうかしら? そうよね、私のせいじゃなくてアイツと神様のせいよね。
あんな男と出会わせたほうが悪いのよね、うふふうふふ……なんだかスッキリ!
地縛霊女がスッキリしたところで空から一筋の光明が差し、彼女は(霊のくせに)明るく晴れ晴れとした笑顔を浮かべて昇天していった。
倉敷アヤカ
倉敷アヤカ
(私はぐったりですよ……)
大きなため息をついてすっかり冷えてしまった身体を起こし、のろのろと歩き出す。
霊につかまった後は私のほうが陰気なものを背負ってしまうのかとにかくだるくて仕方ない。

小さいころから大根役者だった私は、視えないフリをしてやり過ごすことができなかった。
そのせいで「視えているくせに無視するな!」と怒り狂った霊や悪いモノたちからあの世行きのチケットを何度も渡されそうになっていたのだ。
結果、生き延びるためには諦めて霊の気が済むまで付き合ってやるしかないと悟りを開いて今に至る。
倉敷アヤカ
倉敷アヤカ
(あ――……だる……何が縁結びの神様だ……)
私は古ぼけた神社の前で足を止め、そちらの方を睨みつける。
私の幼少期には、神聖な雰囲気をまとう清浄な場所だったのに月日の流れとともにボロボロになっていき、ここが荒れていくにつれて霊の類や悪いモノの数も増えていった。
倉敷アヤカ
倉敷アヤカ
この役立たずっ! 私がこんな目に遭うのもあんたたちが助けてくれないせいだっ!!

小娘一人を助ける力もないくせに神様として崇められている存在が私には許せなかった。
毎日つらい、苦しい、怖い。いつか本当に死んでしまうかもしれない。そんな恐怖心がずっと心の奥底で渦巻いている。
この神社に来ては何度も助けてほしいと懇願した。恐怖にかられたときは何度も何度も足を運んで助けてと願ったのに。
何も変わらない日々に、私はついに絶望したのだ。

もう誰にも頼るもんか、意地でも一人で生き延びてやると心に誓って。

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下月いつる
下月いつる
マイペースに頭の中で空想を楽しみながら活動しております。 男前ヒロインやクセのあるキャラが大好物で個性強すぎアク強すぎな子たちが出てくるお話を探し求めて日々さすらっています。 ファンタジー色やシリアス色の強いジャンルが好き。 読書や文字書き作業中のお供はクッキーとラジオ、紅茶とコーヒー(ただしカフェインレスに限る)です。
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