私と鷹見リョウトは会話一つせず目的地の荒れ果てた神社までやってきた。正直、この人と肩を並べて歩くだけで息が詰まりそうだ。はっきり言って相性が最悪だと思う。
鷹見リョウトはとにかくモテる。
だけど私にはなぜこの男がモテるのか理解不能。外見も中身も満点という噂が独り歩きしていただけなのではないだろうか。
いきなり話しかけられて心臓が止まるかと思った。予告なく話しかけるのはやめてほしい。しかも結構ひどいことを言われている。
無愛想に返すと彼はあからさまに顔をしかめてため息をつく。
根本的に性格が合わないため一緒にいるだけで疲れてしまうのはお互い様らしい。
さてどうしたものか。私たちがここへやってきた理由は説明するまでもなく、呪いについて調べるためだ。
現在わかっていることは縁結びの神様から呪われており、呪われた原因は神様の尊厳を傷つけたからということだけ。
黒い糸が見えているため呪われていることは確かなのだと思う。しかしその効力がよくわからない。
何かを願っても救いの手を差し伸べてくれないのが神様というものだ。
私は手と口をすすぎ、拝殿まで進んで賽銭箱に5円玉を放り込んだ。
一礼してから力いっぱい鈴を鳴らし、二礼二拍手をしてお参りする。心の中では「さっさと出てこい」と念じた。
手順を守って参拝した後、賽銭箱の奥にある本殿から小さな物音が聞こえてきた。
私は少し躊躇したものの、音の正体が気になり思い切って本殿の中を覗き込んだ。
中は薄暗くてよく見えないが、目を凝らしてみると何かがパタパタと走り回っている。
私が驚いて声をあげると、私の顔面に向かって中からモフモフの毛皮が飛びだしてきた。
勢いよく毛皮にどつかれたせいで私はバランスを崩してよろめいた。あ、後ろに倒れる。
後ろに倒れて頭をぶつけると思った。しかし後頭部に衝撃はなく、身体が傾いている状態で止まっていた。
後ろから鷹見リョウトの声。彼は私の背中を両手でしっかりと支えて安堵の息をついていた。
地味で根暗な私のことを助けてくれる人は珍しいし、女の子扱いされたことにも動揺したが、私は背中越しに伝わってくる彼の手の大きさとぬくもりを感じていまだかつてないほど心臓が高鳴っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。