紺太郎のもってきた手紙を眺めながら鷹見リョウトは嘆息する。私もため息をつきたい気分だった。
縁結びの神様からまわされる縁結び案件は、第三者の視点から見るとくだらないものも多い。
前回の案件は両親から突然結婚に反対された女性の手助けをすることだったが、解決に至るまでの道筋はさほど苦労することなくあっさりと終わった。
女性から預かった贈り物を婚約者に届けたことで無事に縁がつながったらしい。
諸悪の根源はイタズラ好きな狸の動物霊で、二人の仲を邪魔して楽しんでいた。
こいつの力はそれほど強くないので私でも簡単に追い払えるレベルだったのだが、帰宅途中にめまいと頭痛のしっぺ返しを受けて鷹見リョウトの肩を借りる羽目になったのは最悪の失態だったと思う。
前回の失態があったせいか、私はよく気遣われるようになってしまった。
霊が視えてしまうことは教えていないため、その影響で体調不良になったとは口が裂けても言えない。
鷹見リョウトの中で倉敷アヤカが病弱キャラになりつつあることが不愉快だった。
しかしぶっきらぼうな態度しかとらない私のことでも気にかけてくれる優しさはくすぐったくもある。
可愛い?
聞きなれない言葉を投下されてフリーズしているうちに鷹見リョウトと紺太郎は先へ行ってしまった。
紺太郎の鳴き声で我に返った私は慌てて彼らの後を追ったのだが、なんとなく顔が熱いような気もする。だけど今は気づかないフリをしておこう。
紺太郎は私たちを公園まで導いた。そこは小さな公園でブランコと滑り台のほかに遊具はない。
紺太郎は公園の奥にあるベンチのほうに視線を送った。薄闇の中、ベンチに座っている2つの人影がぼんやりと浮かび上がってくる。
うん、ぼんやりと――私は大きなため息をついた。鷹見リョウトは何度も目をこすってベンチのほうを凝視している。
彼の発言に私は苦笑するしかなかった。今まで視えていなかったはずなのに、今回の霊は視えているらしい。
ベンチに座っている人影はすでにこの世の者ではなかった。男と女が並んで座っているのにどちらもお互いの存在に気づいていないのか、それぞれが全く違う方向を見ている。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。