私にぶつかってきたモフモフの毛皮は小型犬サイズの白い動物だった。
ふさふさの尻尾は触ってみたくなるほど気持ちよさそうで、金色のつぶらな瞳には抗いがたい愛らしさがある。
白いキツネをその腕に抱き、本殿の奥から出てきたのは夢枕に立っていた時と同じ声、同じ姿をした縁結びの神様だった。
本当に出てくるとは思わなかったし、神様っぽくキツネの神使がいることにも驚いてしまう。
鷹見リョウトは緊張した様子もなく沈黙を破ったが、彼の言葉に縁結びの神様は
と慈愛に満ちた素敵な笑顔で爆弾発言をしてくれた。
困惑する私たちを無視して神様は一方的に呪いの解説を始めた。
『壱、呪いをかけた張本人では呪いの解除が不可能』
『弐、呪いを解きたければ自力で頑張るしかない』
『参、呪いを解く方法は縁結びをすること』
かなり無責任な内容だ。開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。
やはり神様などあてにならない。
うふふ、と笑いながらとんでもないことを教えてくださいました。
私は鷹見リョウトの様子をうかがってみたが、彼は神様の話を聞いてもあまり動じていないようだった。
言われてみると確かにそうだった。黒い糸を贈られても特別な変化は起きていないし、カラスに追いかけられたりクロネコに前を横切られたりもしていない。
私たちは衝撃的な呪いの効力に返す言葉を失ってしまう。神様は大したことがなさそうに説明しているが、一方が死んでしまったらもう片方も道連れになるということだ。
これはかなり質の悪い呪いだと思う。悪ふざけにしても度が過ぎる。
しかもありがたくないオプション付き!
自分の伝えたい事を言いきってしまうと縁結びの神様は本殿の中に戻り、扉を固く閉ざしてしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。