神山side
仕事も特になく家でギターを弾いていた時
机の上に置いていた携帯が鳴った。
着信相手はしげからで
俺は直ぐにギターを置いて電話に出た。
電話越しでも分かるしげの震えている声を聞いて
直ぐに行かないといけないと瞬時に思い
電話を切ってすぐに外に出た。
皆との会食でよく使うお店まで
タクシーで向かって店に入ったら
俺に気がついたしげが個室の扉から
手を出した。
急に姿勢を直して座り直すしげに
何故か胸騒ぎがした。
そう俺に向かって言ったしげは
現実を受け入れられないのか
それとも俺に素直に言えたことで
現実を少しずつだけれども受け入れてきているのか
しげの目から沢山の涙が溢れ出した。
「ははは」って
乾いたように笑ったしげ。
その笑顔が俺の胸を痛める。
水が入ったコップを手に取って
豪快に飲み干したしげはそのまま店員さんに
おかわりを頼みまた綺麗な涙を流した。
絶対にある。
なんて言いたかったけど
無責任な発言は避けたかった。
もしその言葉でさらにしげを傷つけたらって
考えたら怖かった。
家に着いてもしげのあの顔と言葉が
ずっと残っていた。
ソファに深く座れば
それと同時に溢れるため息。
しげは本当に後悔しないだろうか。
呑んで酔ってしまった、と
思ってみたいけどあの顔は本気だったから
きっと本気なんだろう。
少しでもしげの力になりたいからと
初めてあなたさんに会ったあの日から
頼ってと言ったのに
結局何もできてないじゃないか。
悔しくて俺が泣きそうになってる。
辛いのはしげなのに。
勝手に泣くのは失礼だ…。
でも……。
もし
俺があの違和感を
放っておかず
すぐにしげに伝えていたら
きっとしげは………
なんて言わなかったかな。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。