第50話

Princess 50%
2,314
2022/08/13 05:34
神山side
仕事も特になく家でギターを弾いていた時
机の上に置いていた携帯が鳴った。
神山智洋
神山智洋
………しげ?
着信相手はしげからで
俺は直ぐにギターを置いて電話に出た。
神山智洋
神山智洋
📱もしもし?どうした?
重岡大毅
重岡大毅
📱…………もしもし?神ちゃん?
神山智洋
神山智洋
📱おん、俺やけど?
どした?何かあった?
重岡大毅
重岡大毅
📱…………今から会える?
神山智洋
神山智洋
📱おん、会えるで。
いつものお店でええか?
ちょっと待っててな。
電話越しでも分かるしげの震えている声を聞いて
直ぐに行かないといけないと瞬時に思い
電話を切ってすぐに外に出た。












皆との会食でよく使うお店まで
タクシーで向かって店に入ったら
俺に気がついたしげが個室の扉から
手を出した。
重岡大毅
重岡大毅
ごめんな?急に。
神山智洋
神山智洋
いや、全然ええよ。
どうしたん?
なんかあったんやろ?
重岡大毅
重岡大毅
………うん、そう、うん…。
急に姿勢を直して座り直すしげに
何故か胸騒ぎがした。
重岡大毅
重岡大毅
…‪……あなたの事やねんけどさ。
神山智洋
神山智洋
………うん。
重岡大毅
重岡大毅
ずっと引っかかってたこと
今日分かってん。
神山智洋
神山智洋
引っかかってたこと?
重岡大毅
重岡大毅
そう。
…神ちゃんは気がついてたんちゃうか?
神山智洋
神山智洋
………しげっ。
重岡大毅
重岡大毅
あなたは俺の記憶が無い。
そう俺に向かって言ったしげは
現実を受け入れられないのか
それとも俺に素直に言えたことで
現実を少しずつだけれども受け入れてきているのか

しげの目から沢山の涙が溢れ出した。
重岡大毅
重岡大毅
………っ俺っ、何してるんやろ。
そばにおるって決めたのに
今、めっちゃっ不安やわっ。

「ははは」って
乾いたように笑ったしげ。

その笑顔が俺の胸を痛める。
重岡大毅
重岡大毅
絶対、退院したらっ
やりたいこと……っ沢山あったのにっ。
もしっ…今みたいにっ…
そばにいたら……っ
あなたは怖いよな?
水が入ったコップを手に取って
豪快に飲み干したしげはそのまま店員さんに
おかわりを頼みまた綺麗な涙を流した。
重岡大毅
重岡大毅
……どうしたらええんやろ。
お互いが幸せになれる方法って……
っ、何かないんかな。
絶対にある。

なんて言いたかったけど
無責任な発言は避けたかった。

もしその言葉でさらにしげを傷つけたらって
考えたら怖かった。
神山智洋
神山智洋
……しげっ。
重岡大毅
重岡大毅
これでよかったんよ。
……逆にな。
神山智洋
神山智洋
……しげ?
重岡大毅
重岡大毅
………もういいかなっ。
































家に着いてもしげのあの顔と言葉が
ずっと残っていた。
神山智洋
神山智洋
……はぁ。
ソファに深く座れば
それと同時に溢れるため息。
しげは本当に後悔しないだろうか。

呑んで酔ってしまった、と

思ってみたいけどあの顔は本気だったから
きっと本気なんだろう。
神山智洋
神山智洋
………俺、何してるんやろう。




少しでもしげの力になりたいからと
初めてあなたさんに会ったあの日から
頼ってと言ったのに

結局何もできてないじゃないか。


悔しくて俺が泣きそうになってる。

辛いのはしげなのに。

勝手に泣くのは失礼だ…。

でも……。
神山智洋
神山智洋
…………っ。




















もし

俺があの違和感を

放っておかず

すぐにしげに伝えていたら

きっとしげは………
重岡大毅
重岡大毅
……もう、会うのやめるっ。


なんて言わなかったかな。

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