神山side
「空元気」ってこういう事なんやなって。
目の前にある大きな背中は
後ろから見た俺はどこか小さく思えた。
プラスずっと頭に何度も繰り返している。
きっとこの先の言葉は俺だけが分かる。
あなたさんの事やなってすぐに分かった。
きっとこの仕事前までずっと病院に居たんやろ。
あなたさんのことが大好きだし愛してるから
手を握ったり髪を梳かしたりマッサージしたり
出来ればホンマは今もずっとそばにいたいやろな。
濵ちゃんに呼ばれてしげ達の後に撮影が始まった。
1冊目の撮影もあっという間に終わって
今は次の撮影準備のため一旦楽屋に戻ってきた。
時間もお昼頃で楽屋の机の上にはお昼の弁当と
お茶が置かれていた。
机の周りに皆椅子を持ってきて
それぞれ同じ弁当を開けて食べ始めた。
俺の隣にしげと淳太が座って
皆が食べ始めた頃に俺も弁当を開けて
箸を持って食べ始めた。
皆が美味い!とか色々言いながら食べてた時
急に隣から涙ぐむ声が聞こえた。
俺がそう言うと周りのメンバーもしげを見て
目を丸めた。
隣にいたしげは
割り箸を持って下を向き涙を流していた。
隣のしげの背中をさすろうと割り箸を置いて
手を伸ばした瞬間
しげは鼻をすすり携帯を持って楽屋を飛び出した。
この弁当の中にももしかしたら懐かしい思い出が
詰まってるのかなって勝手に思ってた。
ごめんな、しげ。
しげが抱えている痛みをはんぶんこ出来なくて…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!