第53話

Princess 53%
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2022/10/02 03:36
貴方said
あれから私たちは人の少ない場所を選び
近くの公園に向かった。



しばらくして公演について
私たちは何も言わずにベンチに腰かけた。

何話せばいいか分からず
昔はあんなに仲良かったことが嘘のように
今は静かだった。

何か話さなくちゃと
でもその前に謝らなくちゃと

何故か分からないのに緊張して
この気持ちを落ち着かせるために
深く深呼吸したその息は白く染まった。
あなた

……ぁ、あのね。

やっと出たその言葉は
私でもやって聞き取れるかどうかの
か細く小さな声。

震える手はもはや寒さなのか緊張なのかも
分からない。
あなた

……本当にごめんなさい。
今思い出すなんて…。
勝手でごめん。
あの時ちゃんと思い出しておけば
大ちゃんをあの時…苦しまずに済んだのに。
…ごめんね。大ちゃんっ。

重岡大毅
重岡大毅
…………やめよう。
あなた

……え?

横を見ると
大ちゃんは上を見上げ綺麗な星が輝き出した空を
眺めていた。
重岡大毅
重岡大毅
……苦しい時はなかったって言えば
嘘になる。
でも今は……。
ううん。あの時も嬉しいって気持ちが
沢山あった。
あの時はあなたの事で一喜一憂
しとった。
目が覚めた、良かった。嬉しい。
今日も笑ってる。幸せや、良かった。
熱高いな。辛いよな。代わってやりたい。
でも今は…。今は…。
嬉しいがものすごく勝つ。
思い出したんや。幸せや…幸せやって。
ここ最近1番幸せや…。
……やからな、あなた。
ここで初めて大ちゃんと目が合った。

体の向きを変えてお互い冷えてしまった手を
固く繋いだ。
重岡大毅
重岡大毅
……謝るのは、もうやめよう。
俺は幸せやから。
それでももしあなたが謝り切れないなら
また今度にしよう。
今日はただあなたと笑っていたい。
あの日…出来なかった思い出
今作りたい。
屋台はないし花火もないから
薄っぺらい思い出になるかもしれんけど…。
照れたようにへへへって笑って見せた大ちゃん。




そっかあの時

私たちは夏祭りに行くんだったんだよね。


浴衣着て
いつもとは違う感じで

どこかのカップルみたいに
駅で待ち合わせしたんだよね。
重岡大毅
重岡大毅
駅で待ち合わせ……してない、し
浴衣じゃなくてこんな厚着してるけど
その分今は…今だからこそ
笑える話もあると思う。
もしかしたら俺の方が
沢山あるかも知らんけど笑笑
あなた

………大ちゃんあのね。

重岡大毅
重岡大毅
……うん。
あなた

……駅で待ち合わせ、出来たよ。
ちゃんと私たちは会えたんだよ。
あの日会うはずのあの場所のように
私たちは駅で待ち合わせしたよ…。
…会った瞬間泣いたり抱き合ったりは
しなかったとしても
私たちはちゃんと待ち合わせできたよ。




あの時私が行けなかったから

あの日の待ち合わせのように

私たちは待ち合わせしたんだよ。
重岡大毅
重岡大毅
……ははっ。せやな。
俺らはちゃんと待ち合わせした。
せやけど、
どんだけ遅れて来てんねん。笑笑
あなた

…お待たせ、大ちゃん。笑笑

重岡大毅
重岡大毅
…笑笑笑笑
私たちの待ち合わせの時間は大幅に過ぎて
しまったけれど

それもそれでいい思い出なのかなって。

私は思うんだ。
重岡大毅
重岡大毅
……あ、雪。
空からひらひらと揺れながら舞っている雪を
私たちは下から見上げていた。


そんな時
遠くから焼き芋のトラックがお馴染みの音楽を
流しながら走って来た。
重岡大毅
重岡大毅
……サプライズ屋台ってことで。
あなた

……うん、食べよう。笑笑

どんなたこ焼きよりも

どんなお好み焼きよりも

どんな焼きそばよりも

どんな綿あめよりも

どんなチョコバナナよりも

おしゃれな屋台の焼き芋を頬張りながら

私たちは昔話と思い出話に花を咲かせた。

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