貴方said
あれから私たちは人の少ない場所を選び
近くの公園に向かった。
しばらくして公演について
私たちは何も言わずにベンチに腰かけた。
何話せばいいか分からず
昔はあんなに仲良かったことが嘘のように
今は静かだった。
何か話さなくちゃと
でもその前に謝らなくちゃと
何故か分からないのに緊張して
この気持ちを落ち着かせるために
深く深呼吸したその息は白く染まった。
やっと出たその言葉は
私でもやって聞き取れるかどうかの
か細く小さな声。
震える手はもはや寒さなのか緊張なのかも
分からない。
横を見ると
大ちゃんは上を見上げ綺麗な星が輝き出した空を
眺めていた。
ここで初めて大ちゃんと目が合った。
体の向きを変えてお互い冷えてしまった手を
固く繋いだ。
照れたようにへへへって笑って見せた大ちゃん。
そっかあの時
私たちは夏祭りに行くんだったんだよね。
浴衣着て
いつもとは違う感じで
どこかのカップルみたいに
駅で待ち合わせしたんだよね。
あの時私が行けなかったから
あの日の待ち合わせのように
私たちは待ち合わせしたんだよ。
私たちの待ち合わせの時間は大幅に過ぎて
しまったけれど
それもそれでいい思い出なのかなって。
私は思うんだ。
空からひらひらと揺れながら舞っている雪を
私たちは下から見上げていた。
そんな時
遠くから焼き芋のトラックがお馴染みの音楽を
流しながら走って来た。
どんなたこ焼きよりも
どんなお好み焼きよりも
どんな焼きそばよりも
どんな綿あめよりも
どんなチョコバナナよりも
おしゃれな屋台の焼き芋を頬張りながら
私たちは昔話と思い出話に花を咲かせた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。