神山side
俺が入れた飲み物の入ったコップを丁寧に
両手で包んだままソファで寝てしまったしげ。
この感じだと家に帰ってもきっと
寝れてないんやなって…。
俺は押し入れから毛布を取りだし
ソファで気持ちよく眠っているしげに優しく
起こさないようにかけてあげた。
毛布を優しくかけ終えてしげの手からコップを
貰った時俺の手首をあなたさんだと勘違いして掴んだ。
コップをダイニングテーブルに置いて
俺は手首を優しく離してしげの手を優しく包み込み
毛布の中に入れてダイニングテーブルに置いた
コップを音を立てないように持って台所まで
持って行った。
台所に小さく置いてある時計を見て今の時間を
確認すると
良い時間帯やったから俺は冷蔵庫に
あるもんだけで作れる簡単な料理を作ることにした。
野菜室を漁っている時丁度買いたてのニラを発見し
俺は直ぐにニラを取り出してしげが好きなニラ料理
を作る準備をした。
好きなもので心を満たせて欲しい。
本当なら好きな人で満たされて欲しいけれど
今のしげはきっと別のもののジャンルでの
好きなものが必要やと思った。
フライパンに油を引いて刻んだ料理を入れて
美味しそうな匂いと音が家に響いていた時
ソファで寝ていたしげがのそのそと起き上がった。
伸びをしたしげはそのままゆっくり立ち上がって
俺の隣に来た。
そう言って玄関に向かおうとするしげを
俺は慌てて引き止めた。
しげは納得してくれたのか椅子に座ってくれた。
椅子に座ったのを確認してあと少しで出来る料理を
完成させるべく台所に向かった。
箸としげの分の料理を机に置くと
しげはちょっと笑って箸をもって食べてくれた。
俺が自分の分の料理を持ちながら席に着くと
しげのお皿にはあんまり残っていなかった。
俺も後から遅れて食べ始めると
しげはふふって笑ってニラを食べ始めた。
久しぶりに見たかも知らん。
しげが左目の下に出来る笑窪を出しながら笑う事。
今までも何度も見た事あるけれど素やなかった。
作り笑いって感じやった。
しかもどれもが慣れていた。
でも目の前に座ってちゃんと俺の目を見ながら
懐かしい思い出に浸ってそれをちゃんと
俺に教えてくれるしげの笑顔は
本物やった。
あなたさん、
しげに笑顔を増やしてくれて
しげに笑顔を戻してくれて
ありがとう。
夕飯も食べ終わってちょっとゴロゴロしていたら
時間もいい感じになりしげは帰って行った。
窓からしげの車が見えなくなるまで見送っていると
ふと思った
しげはきっと俺に話している間にまたあなたさんが
恋しくなったんやなって思った。
あなたさんにとってしげってどんな存在何かは
分からんけれど
でもしげにとっては絶対に大切な人やから。
どんなに眠ってても
どんなに0歳からまたやり直しって言われても
しげはあなたさんを何があっても支えるし
守り抜くと思う。
見えなくなったしげの車を思いながら
俺は空になったしげと俺のお皿を洗った。
皿を洗い終えた俺は飼っているペットと遊んでいると
机に置いていた携帯が鳴って慌てて取りに行くと
しげから連絡が来てた。
2日ぶりにきたしげからの連絡は
ここだけの話ちょっと嬉しかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。