第24話

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2021/06/20 08:49





『あっ…』




ドアの向こう側に見えるふたつの大きな影は
間違いなく濵田さんと、あの日の番組で濵田さんの隣にいた人。







嬉しいって思っちゃう。


来てくれたんだって舞い上がっちゃう。





ダメ。ダメだよ。



向こうはなんとも思ってないんだから、
こっちもファンとアイドル。



そう決めたじゃない。







『お水のおかわりいかがですか?』






仕事しなきゃ。






小「 しゃーっす、よっ風雅っ 」


風「いらっしゃい…ませ…」




え、入ってきた?


いや別にいいんだけど、いいんだよ、






緊張する、違う、ファンとアイドル。

ファンとアイドル。




2人はカウンターに座って店長や風雅くんと
お話をしてる。




今のうちにしれっとキッチンに戻ろう。






気付かれないように濵田さんの横を通ろうとした時、




小「お姉さん、」



『 は、はいっ、』




濵田さんじゃない方に声をかけられてしまった。






小「僕にもお水ください、濵ちゃんは?」


濵「え、ああ、下さい、」


『かしこまりました、』





キッチンに入れかけた足を、戻して
濵田さんとお連れの方の間からコップに手を伸ばす。





気まづい。







小「あ、そうだ、店長聞いてくださいよ〜っ、
濵ちゃんな最近変やねん、」






お連れの方は店長にずっと喋りかけてる。




丸「 濵ちゃんはずっと変やで 」


濵「な、店長までいいます?それ、」




2人のコップにお水を注いでキッチンに戻る。





それでもお連れの方の声は聞こえてくる。





小「いやそれが、最近ずっと誰かからの連絡を待ってるんすよ、でも誰なんって聞いても教えてくれへんくて〜 」


丸「え、濵ちゃんそんな相手おったんっ」

濵「へっ、いや、まあ、え、小瀧っ、」

小「でも、どんな人なん、って聞くとニヤッニヤしだすし、さぞかし綺麗な人なんやろうなあって、」








ああ、聞きたくなかった。




聞きたくなかった。




心のどこかでは分かっていた様な気はする。


まあ、そうだよね。






ふとカウンターの方を見ると、お連れの方と目が合った、ような気がする。





なに、その目は。



何をそんなに言いたげにしてるの。





なんで目を逸らさないの。






小「お姉さんやったらどうして欲しい?」



『えっ…?』




突然振られる話題に、動揺が隠せない。





小「濵ちゃんも、女の人からアドバイスされたら説得力あるやんな?」




なんでこの人そんなに楽しそうにしてるの。




で、どう?と視線が集まる。







『…え、んと… 』







私はどうして欲しいの。



仮に濵田さんが思いを寄せる女性が私だったとして、


どうされたいの。






『…連絡が欲しいです、かね』







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