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『あっ…』
ドアの向こう側に見えるふたつの大きな影は
間違いなく濵田さんと、あの日の番組で濵田さんの隣にいた人。
嬉しいって思っちゃう。
来てくれたんだって舞い上がっちゃう。
ダメ。ダメだよ。
向こうはなんとも思ってないんだから、
こっちもファンとアイドル。
そう決めたじゃない。
『お水のおかわりいかがですか?』
仕事しなきゃ。
小「 しゃーっす、よっ風雅っ 」
風「いらっしゃい…ませ…」
え、入ってきた?
いや別にいいんだけど、いいんだよ、
緊張する、違う、ファンとアイドル。
ファンとアイドル。
2人はカウンターに座って店長や風雅くんと
お話をしてる。
今のうちにしれっとキッチンに戻ろう。
気付かれないように濵田さんの横を通ろうとした時、
小「お姉さん、」
『 は、はいっ、』
濵田さんじゃない方に声をかけられてしまった。
小「僕にもお水ください、濵ちゃんは?」
濵「え、ああ、下さい、」
『かしこまりました、』
キッチンに入れかけた足を、戻して
濵田さんとお連れの方の間からコップに手を伸ばす。
気まづい。
小「あ、そうだ、店長聞いてくださいよ〜っ、
濵ちゃんな最近変やねん、」
お連れの方は店長にずっと喋りかけてる。
丸「 濵ちゃんはずっと変やで 」
濵「な、店長までいいます?それ、」
2人のコップにお水を注いでキッチンに戻る。
それでもお連れの方の声は聞こえてくる。
小「いやそれが、最近ずっと誰かからの連絡を待ってるんすよ、でも誰なんって聞いても教えてくれへんくて〜 」
丸「え、濵ちゃんそんな相手おったんっ」
濵「へっ、いや、まあ、え、小瀧っ、」
小「でも、どんな人なん、って聞くとニヤッニヤしだすし、さぞかし綺麗な人なんやろうなあって、」
ああ、聞きたくなかった。
聞きたくなかった。
心のどこかでは分かっていた様な気はする。
まあ、そうだよね。
ふとカウンターの方を見ると、お連れの方と目が合った、ような気がする。
なに、その目は。
何をそんなに言いたげにしてるの。
なんで目を逸らさないの。
小「お姉さんやったらどうして欲しい?」
『えっ…?』
突然振られる話題に、動揺が隠せない。
小「濵ちゃんも、女の人からアドバイスされたら説得力あるやんな?」
なんでこの人そんなに楽しそうにしてるの。
で、どう?と視線が集まる。
『…え、んと… 』
私はどうして欲しいの。
仮に濵田さんが思いを寄せる女性が私だったとして、
どうされたいの。
『…連絡が欲しいです、かね』
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。