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お風呂は大体風雅くんが先に入る。
その間に私が夕飯を作って、風雅くんが出てきたら
一緒に食べる。
何となくそんなルーティンが出来上がってきた。
風「 今日の夜ご飯なに? 」
『 んー、炒飯、かな 』
風「 まじで、俺炒飯大好き 」
『 え、そうなん、よかったぁ 』
なんだか最近思うことがある。
こうやって普通に風雅くんと会話してると
まるで風雅くんが弟になったみたいに
錯覚するんだ。
私は一人っ子やから、弟、嬉しいなとか思ってみたり。
『 早くお風呂入っておいで 』
ちょっとお姉さんぶってみたり。
風雅くんはお風呂場に向かった。
1人になってテレビの音だけが響くようになる。
前はこれが普通だったのに。
聞こえてくるのはニュースキャスターの冷めた口調で、
何か面白いのやってないのかと、番組表を
開いてみる。
お、なんかこれいいやん、とボタンを押す。
さて、そろそろ作りますかね。
ソファーから立ち上がって台所に立つ。
たちまち物凄くいい匂いが立ち込めて、
鼻を掠める。
そんな匂いに釣られるかのように風雅くんが
歩いてくる。
風「 めっちゃええ匂い… 」
と呟きながらお皿やら箸やらを綺麗に並べてくれる。
さすが風雅くんやな、と感心。
盛り付けたお皿を2人で運んだら、いただきますっと2人で手を合わせる。
風「 美味いっ、」
『 ほんまに?嬉しいわぁ 』
風「 あなたちゃん意外と器用なとこあるんやな 」
『 意外とって… 』
素直に言えないところも彼の可愛い所。
まだまだ子供やななんて私が言っても
そんな変わらんやろって、また怒られるんやろうな。
風「 あ、」
すると突然風雅くんが画面をみて声を出す。
なんだろうと思って私も顔を上げると。
目が合った。
カレと。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。