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店長に挨拶をして、風雅くんと一緒にお店を出る。
風雅くんの自転車と、自分たちの足音だけが
異様に響くような気がした。
今日は日曜日。
明日が月曜日という事は、風雅くんは学校がある。
『 風雅くん、学校家から通うんやんな? 』
風「 あー、そうやね、」
『 遠い? 』
風「 そんなに。俺自転車やし。」
本当なら車で送り迎えしてあげたい所だけど
生憎私は車の免許を持っていない。
……取れる気がしないから。
風「 たしかにあなたちゃんの運転は
心配やわ、」
なんて、意地悪そうに笑う風雅くん。
いつも通る帰り道なのに、ちょっとだけ
短いように感じた。
『 今鍵開けるから……あれ、あ、、あった 』
風「 今までよく一人暮らし出来てたな 」
自分でも偶に思うよ、風雅くん。
お邪魔します、ときちんと靴を揃えて
上がってくる風雅くんはやっぱりしっかりしてる。
『 家のもの基本好きに使ってくれていいからね 』
風「 ん、シャワー借りてもええ? 」
自分の家に自分以外の人を入れるのは
なんとも不思議な感じ。
それに2ヶ月も一緒に住むなんて……
意外とあっという間なのかな。
ふと静まると聞こえてくるシャワーの水が
床のタイルを打ち付ける音。
本当に不思議だ。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。