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私は自分勝手な奴だ。
迷惑になるからと勝手に距離を置いて、
そうかと思えば離れないでなんて。
自分の我儘さに改めて恥ずかしくなってくる。
あーあ、濵田さんがアイドルやなかったら、
私が一般人じゃなかったら、こんな風に壁を
感じることなんてなかったのかな。
こうやって毎日同じ家に帰れてたのかな。
手を繋いで。
濵「…雪沢さん?」
『…は、はいっ、』
濵「あ、良かった、ボーッとして歩いてるから 」
ふふふっと、優しく笑う濵田さんはもう、
私でもよく分からないくらい素敵で、可愛くて
大好きで。
もう止められないのかもしれない。
『あ、家ここです、』
濵「あっ、そうなんやっ…そっか、うん、」
『あっ、あの、ありがとうございましたっ、
わざわざ家まで… 』
濵「ええのええの、気にせんといて」
濵田さんはそれでも手を離さない。
私も離さない。いや、離せない。
離したらこの魔法は解けてしまう。
離さなきゃいけないのに、
離せない。
風「…えっ、」
『あ、風雅くんおかえり』
濵「え?え、一緒のマンションなん?」
風「えっ、いや、その手、そういうことなん」
『えっ、あ、いやこれはただ…』
それぞれがそれぞれの展開に驚いているカオスな状況。
風「一緒のマンションていうか…部屋?」
濵「へ、部屋っ!?」
風「いや、そっちこそ手繋いでるってことは?」
何も言えなくて黙り込んでしまう私たち。
この空気を破ったのは濵田さん。
濵「な、なんでもないで ホンマに!」
最後に「…まだ、」って言ったの私、聞こえてたんだから。
期待していいですか。
このまま恋していていいですか。
好きでいさせてください。
大好きです。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!