.
『 おはようございまぁす 』
風「 ざぁーす 、」
扉を開ければ珈琲豆の香りが少しの隙間からも
溢れ出して鼻をくすぐる。
『 おはよう、風雅くん今日は早いんやね 』
風「 ぁい、」
スマホに夢中なこの子は大西風雅くん。
初めて出来た私の後輩、高校2年生です。
さすが今の子ですね。
風「 そんな歳変わらんやろ 」
『 先輩ヅラさせてや… 』
風「 俺先輩やと思ってへんし 」
丸「 おお、あなたちゃん来てたんやな 」
こちらはここのお店の丸山店長。
お調子者で面白い。
偶に本気で笑えない時もあるけど…
でも黒いエプロンがすごく良く似合う私の憧れだ。
『 おはようございます、店長 』
丸「 丸ちゃんでええよっていつも言うてるやん〜 」
風「 それ1歩間違えたらセクハラとか
言われるんちゃいます? 」
丸「 え、え、そうなん!? 」
『 大丈夫ですよ、笑 』
朝から賑やかな空気で開店時間を迎える。
丸「 よし、じゃあ今日も元気に爽やかに、
珈琲に無限の愛を注いで… 」
風「 それ長くなりますか? 」
丸「 全く…風雅は分かってへんな… 」
こんな会話を聞いて微笑ましく思いながらも、
私は時間を待っている。
月に何回か不定期で、でもいつも決まった時間に
かかってくる1本の電話を。
今日はかかってくるかな。
開店してすぐの時間に来るはず…。
風「 あなたちゃん? 」
『 あ、え、』
風「 外の札、オープンにして来てって 」
『 あ、了解ですっ、』
自分の事ながらどっちが先輩なんだか…
.
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。