佐久間 side
入所したての累夏には
『橘は絶対にステージに立たせない』
という周りのいじめの圧が強かった
累夏には小さい頃にダンスの大会で優勝したり
オーディションをすっ飛ばして入所したという
色んな強みがあった
それをよく思わなかったり
恨んだりしたいる人たちが
累夏を陥れようとした結果の圧だった
入所した日が同じで
すぐに意気投合して仲良くなった俺ら
偶然にも仕事が一緒になることが多くて
あまり人と関わろうとしない俺らは
常に一緒にいた
この当時の俺は全く気づかなかったけど
入所してすぐのときから
累夏はひどいいじめにあっていた
レッスンで使う靴を壊されたり捨てられたり
俺がいないところで水をかけられたり
数え切れないほどの嫌がらせを受けていた
だからいつも一緒帰っていたけど
時々累夏が嘘をついてひとりで残ろうとする時があった
あれは累夏の私物を隠されているから探すためだった
お父さんが迎えに来るなんて口実
このとき俺はまだ小さかったから
女の子でしかも年下の累夏を置いて帰るなんて
絶対できなかったから
意地でも残ろうとしていた
初めて累夏に怒られた日だった
今まで俺がちょっかいかけて
累夏が『もう…やめて笑』
なんて笑ってちょっと怒ることはあったけど
真面目に叱られたことなんて初めてだった
だから俺は驚きが強くて言葉が出なくて
目に少し涙を貯めて声を荒らげる累夏を見つめることしか出来なかった
ねぇ累夏
なんで泣いてるの?
俺に怒ったから?
俺がしつこかったから?
喧嘩なんて今まで全くしたことなかったから
初めて何を話せばいいのかわからなくなった
累夏は強がり
だから泣いてる理由なんて言ってくれない
泣きじゃくって言葉が詰まる累夏から
泣く理由を聞き出すのに時間がかかった
入所して3年が経とうとしている今
はじめて嫌がらせのことを話してくれた
一緒に帰れない日
隠されたものをひとりで長いときは2時間かけて探していたこと
俺やその当時から仲が良かったふっかや照や阿部ちゃんに
迷惑をかけたくなかったこと
全部話してくれた
俺の腕の中で
初めて小さくなって泣く累夏を見た
俺より一つ下だけど
俺より背が高くて
同期や後輩のお姉ちゃん的存在で
いつも強くて意見がハッキリしてて
誰に何を言われても気にしていない性格の累夏が
他人の悪意に初めて心を壊した
まだ15歳の女の子が
レッスン室の端で
泣き止んだ累夏に俺は言い聞かせるように話す
"強くなくていい。弱くていい"
後輩Jrたち『はい!!』
先輩になって下のJrたちを引っ張る立場になったとき
累夏は常に後輩に言い続けた
それは俺が累夏に言ったこと
昔は弱い所を見せなかった累夏が
初めて弱い所を見せた
それがあったからこそ
累夏は"弱い自分"を
認めることができた
知ってるよ
だから俺やメンバーは
累夏をおいていかないし
見捨てもしない
だから頼っていいよ
みんな累夏が大好きだからね












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。