第13話

お仕置き?(北山side)
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2020/07/21 03:00
藤ヶ谷
はいはい、じゃこのまま力強く
しがみついといて


藤ケ谷は嫌な光を宿し、ニヤッと微笑みそう言って内心ギクリと身体を強張らせ。

北山
嫌だ、お前が力強く抱きしめておけばいいだけのこと


そう眉を寄せると「天然」っと小さく肩を揺らし「んっ?」俺は訳も分からず首を傾げる。

(なんで笑う?俺はただのんびりしたいだけ笑うことないじゃん)

藤ヶ谷
そういうのも俺以外の前では
言わないでね


「これ重要」っと念を押す。

北山
はっ?
藤ヶ谷
理解力がないのが問題だよな、ふっ


何故だか深い溜め息を吐き、暫くし。

藤ヶ谷
もう少しで着くよ


その言葉にハッと見上げたら「あっぶねぇ~うっかりしてガチで、また眠りそうだった」

北山
マジか、だったら早く降ろし…


「あら太輔くんじゃない」とつぜん俺の言葉を遮って聞こえた女の人の声。

藤ヶ谷
こんにちは何処か、お出かけでもしていたんですか?
.
えぇ、ちょっと友達と
藤ヶ谷
そうなんですか相変わらず
お綺麗ですね


「あれ?この声は確か…」聞いた事がある声に耳を傾ける。

.
太輔くんたらまたそんなことを言ってそういうとこホント宏光にも見習って欲しい


「げっ、母さんじゃん!?」ハッと気がつく、この声は間違いなく。

北山
なんでこんな所にいるんだよ


(顔を見なくとも分かる親子だし)

どうして宏光は口が悪くなったの
かしら、それに子供じゃないんだ
から太輔くんにそうやって甘えて
ちゃダメでしょ


(はっ?俺、藤ケ谷に甘えたことなんて1度もない)

太輔くん悪いわね宏光が迷惑をかけて
藤ヶ谷
いいえ大丈夫です、ひろからのお願いはどうしても俺、断れなくて


困った顔をしている藤ケ谷…(おいおい、もしかしてこの格好を見て俺が甘えているとでも思っているのか?チッ)

北山
勝手なことを言うな、お前が無理やり抱っこしたんだろ?いい加減に降ろせ


俺はすぐさま怒鳴りつけた、だが…

友達になんてことを言うの


何故だか母さんに怒られてしまい「意味わかんね、ただ誤解を解こうとしただけなのに」

藤ヶ谷
いいんです気にしないで下さい
いつものことですから
あら太輔くんは優しいのね
藤ヶ谷
そんな事ないです


(ちょ待て太輔が優しい?笑える、それに気になっていたんだが藤ケ谷って俺の親の前だとキャラ変わるよな、いい子ぶるんじゃねぇこのドS野郎)

俺は呆れ果てていた、いつかは化けの皮を剥がしてやると思いつつ二人の話を聞きながら。

どうせなら宏光のこと嫁にもらって
くれたらいいのに
北山
はっ?


すると母さんは微笑みながらとんでもない事を言い「なんてことを!?恐ろしい親だ」とたん驚嘆してしまった俺とは逆にニンマリとした表情になる藤ケ谷

藤ヶ谷
おばさん…いえ、お母さん安心して
下さい、そのつもりでいます


(はあっ?太輔までも!?母さんのノリに乗っているんじゃねぇそんなの「くだらない」とスルーしてくれたらいいのによ、あっそういえば藤ケ谷って冗談が通じなかったんだっけ仕方がない教えてやるか)

北山
こら母さんの変な冗談にお前も乗るな


(やっぱり素直に教えてあげる俺って優しい~)

藤ヶ谷
なんか勘違いしているようだけど俺はいつだって本気だから
北山
へっ?
藤ヶ谷
あっ、話しているうち北山んちに
到着したよ


ピタッと、藤ケ谷の足が止まる。

(なんかウケ狙いで本気って言っているが無視しよう
よけい変な方向へ行きそうだ、しかしやっと着いた解放される~)

自然と自分の顔が緩むのが分かった。

北山
よし御苦労だった藤ケ谷くん俺、そろそろ地面に足をつけたいんだが


藤ケ谷は、偉そうな俺の態度にブツブツ何か言っていたがちゃんと降ろしてくれ「おぉ~地面これほど恋しかったことはない」そして笑みを浮かべ…じゃっと手を振ってクルッと身体を玄関の方へ向け歩き出す。

(んふふっ)

も~う宏光ったら失礼な子ね、そんな子に育てた覚えないわよ


(勝手に言ってくれ俺は、自由になれたんだ)

太輔くん時間ある?良かったら
上がってって


(へっ?)

が、母さんの言葉に扉を開けようとした手がピタッと止まる。

藤ヶ谷
はい喜んで


背後で藤ケ谷の嬉しそうな声が響く「ちょ嘘だろ」

北山
帰んないの?


俺は、後ろを向き念のため確認をとった。

藤ヶ谷
せっかくだし…ね


(ぞわっ)

最後の「ね」に、ヒヤリと鳥肌が立つ。そのあと、藤ケ谷は失礼しまーすと礼儀正しく家に上がりこんでしまって。

(マジでか、なんでこうなる?)

まだ玄関の外にいる俺、嫌な予感しかない。それから部屋に入った藤ケ谷は躊躇なくベットへ腰を下ろし。

(お前には遠慮という言葉はないのか?勝手に寛いでいるんじゃない母さんも外見しか見ないでホイホイ危ない奴を家の中へ入れるな被害に合うのはいつも俺だ)

取り合えず机の上にカバンを置き、なるべく距離をおくことにし。

藤ヶ谷
どうした?なんで、そんな離れた
所にいるんだよ


「ギクッ」けど勘の鋭い藤ケ谷はすぐ気づいたみたいで。

北山
いや、そんなつもりは…なんと‥なく


(おい、いつもの強気な俺はどこへ行った?)

藤ヶ谷
ふ~ん、まっいいや


その言葉を聞きホッと胸を撫で下ろす、特に気にはしていない様子で。

(しかしジロジロとこっちを見ているんだよな、やっぱ横尾さんがいないと、どーも落ち着かないっていうか安心しない二人きりだと)

藤ヶ谷
それより


(ほらきた)

帰ってきたばかりだから窓も閉まってるし、いつも以上に静まり返った部屋の中でさっきとは明らかに違う藤ケ谷の声。

北山
なに?


冷や汗を流しながら恐る恐る尋ねる。

(それに急に声のトーンが低くなるとかおかしくね?殺気っていうの、めちゃくちゃ怪しい空気が漂っているんですけど)

藤ヶ谷
俺、北山にどうしても聞かなきゃならない事があるんだよね


ニッコリと俺の苦手なあの笑みをし、藤ケ谷が言葉を発した。

北山
へぇ~そう…なん‥だ、そういえば俺、飲み物とか持ってくんの忘れた今から取って来るよ


「ははっ」と苦笑いしながら逃げるように扉の方へ向かうと、途端にガシッと。

(えっ、前に進めない!?なにこれ?)

藤ヶ谷
逃げるの


そう耳元で囁かれ首だけ後ろの方へ向けたら、そこにはあの笑みのまま俺の手首を掴んでいる藤ケ谷の姿があってよ。

北山
なっ、なに言ってんだか…逃げる‥
だなんて…んな訳の分からねぇこと
しねぇ…よ


今にも震えそうな声を抑えつつ冷静さを保ちながら言い放つ。

藤ヶ谷
本当に?


怪訝そうな顔「疑り深いやつだな」納得していないようだから少し危ない気がした。

北山
そんなの…当然じゃん、ちょ‥分かったら離れてくれ


俺は、いつの間にか壁ドンされていて。

北山
顔、近い…逃げないから‥さ
藤ヶ谷
さっきから思っていたんだけど
北山
ん…なに?
藤ヶ谷
どうして北山は俺から離れようと
するわけ
北山
はっ?


急に、そんなマジな目で言われると流石の俺も戸惑ってしまう。

(言っとくが離れたいと思う理由は簡単だ怖いから、それ以外に何があるっていうんで?決して本人には言えないけど…)

藤ヶ谷
なに?言えないこと


が、心を読まれた感覚に陥ってハッと目を見開く。その様子を見て藤ケ谷は…

藤ヶ谷
図星なんだ?


と、次の瞬間!身動きの取れない俺をまた抱き上げそれも今度はお姫さま抱っこでベットの上へと降ろし「勘弁してくれ」

北山
えっ…と俺、まだ寝る気はない‥けど


妙な行動に出た藤ケ谷に、そう言った。

藤ヶ谷
違う頑固な北山を素直にさせようと
思って


ブラックな顔でニコッと微笑む藤ケ谷「アカン1番ヤバいやつだ経験済みだから分かる」

北山
落ち着け俺はいつだって素直じゃん


(決して嘘ではない、だって自分に正直に生きている人間だから、ここはまず冷静に対処すべき)

しかし、チラッと藤ケ谷の顔を覗いてみると相変わらず表情は曇っていてさ。

(さては話が通じなかったか?仕方がない、もう1回言っておこう)

北山
あいあむ素直、OK?


日本語が通じないようだから、あえて英語で言ってみる。ちょっと話せることを自慢し、すると直後に藤ケ谷がクスッと笑い。

藤ヶ谷
余裕だね


何故だか馬乗りで、上から見下ろされている自分。つまりは、ベットと藤ケ谷の間に挟まっているってわけで。

北山
えっ


スッと制服のシャツのボタンに手をかけ丁寧に1つずつ外してく藤ケ谷。

北山
ちょ、何しているんだよ


もちろん、脱がされているのは俺の制服で。

藤ヶ谷
見て分からない?


藤ケ谷は余裕の笑みを返し「そりゃ分かるから聞いているんじゃん」

北山
着替えくらい自分でできる幼稚園児
じゃあるまいし余計なお世話


「言っとくけど俺、高校生だぞ」重要とばかりに、強調し付け足す。

藤ヶ谷
バカ
北山
はっ?


が、言われたとたんカチンときて。

北山
また気に触ることを馬鹿にすんな


本当に腹が立ち怒りをぶつけた、いつだって藤ケ谷は上から目線で。

藤ヶ谷
言ったでしょ?素直にさせるって


何かを企んでいる顔をし、そう言い。

「んなの知るか、つうか考えてみたら制服を脱がし素直になるやつなんている?こいつも馬鹿な発想を思いつくもんだ」心の中で思う。

藤ヶ谷
ちなみに、これ「お仕置き」ってやつ


(へっ?)

だが藤ケ谷が次に発した言葉に俺の身体はピタッと固まり。

北山
お仕置き?悪戯ってこと


首を傾けたまま、そう聞くと。

藤ヶ谷
そんな可愛いもんじゃない


悪魔が再び降臨してしまった、取り合えず無視してズボンのポケットに入れていたスマホを取り出し、すぐさま「お仕置き」という言葉を調べる。
意味:見せしめ、体罰を与えること。
使い方:お仕置きとして押し入れに閉じ込める。
「…‥嘘だろ?」思わず画面を二度見し(体罰?押し入れって、ちょ待て!こいつ、そんな危ないことを考えていたわけ!?)真実に驚愕した。

すると、スマホとにらめっこしていた俺を見て。

藤ヶ谷
これ没収ね


藤ケ谷が、そう言ったとたんに俺の手からスルリと携帯が消え。

北山
ちょ、返せよ


ハッと我に返り強気で言うと。

藤ヶ谷
無理


あっさりと拒否され俺は最後の手段を失ってしまう

(落ち着け落ち着くんだ、よく考えてみろ俺お仕置き=体罰ってことはきっと物凄く痛いことなんじゃないか?痛いのは嫌いだ暴力反対、こうなったら一か八かで説得してみるってのはどう今の状況を脱する方法はこれしか残っていない)

北山
藤ケ谷、よく分からないが俺はいつも素直に生活している、だからそんなのしなくても


「ちなみに、暴力では何も解決しないとテレビでも言っていた知らないの?お前」そういう意味を込め目で訴える。

藤ヶ谷
そんな目をしても俺の気持ちは
変わらないよ


が、必死の説得は簡単にも流されてしまい。

北山
はっ!?


気がつけば、シャツのボタンは綺麗に全部外されてしまっていて。

藤ヶ谷
相変わらず、きめ細かく綺麗な
肌をしている


何故だか、俺の上半身をうっとりとした表情で見つめる藤ケ谷に危険を示す赤信号が。

北山
たっ、太輔
藤ヶ谷
んっ?
北山
…キモい


若干、引き気味に呟く。

(勝手に脱がそうとするな冗談ならまだしも全部ガチに見え藤ケ谷じゃないみたいだ)

藤ヶ谷
ふっ、誉め言葉をどうも


すると、こいつは笑みを浮かべそんなことを言い。

北山
誉めてねぇよ


慌てて口からツッコミが出る。

(どうやったらそう間違える?お前の耳は鼓膜はポジティブ変換なのか?まったく何を言うかと思いきやバカげたことを、お陰で俺の目が驚きのあまり宇宙までぶっ飛んで圧で目玉焼きが作れそうな勢いだ、危ねぇ~)

つうか、そんな事を呑気に考えている場合じゃない「おっ、俺、これからお仕置きというのをされてしまうわけか」つまり命がかかっているということ。

(もう藤ケ谷は俺の説得なんか耳に入れてはくれないんだろうしさ黙って痛めつけられる前に)

北山
頼む遺書くらい書かせてくれ


俺の声は徐々に弱々しくなって儚く願う、あぁ人って本当に命の危機が迫ると弱くなる生き物なんだなと実感しながら…(いや待てよ)

ふと、母さんから言われた言葉を思い出す。
「心を強く持て」

(まさに、今の俺にピッタリじゃん。よし遺書には「藤ケ谷が犯人です動機は俺が素直じゃないからです」的な軽い感じに書いてやろインパクトがある方が男らしくていいだろうし、どうだ俺の頼みは大魔王に伝わったか)

確認のため、恐る恐る顔を上げる。

藤ヶ谷
北山は俺に何をされると思っているの


が、藤ケ谷は間抜けな顔をし呆れた様子でそう言って。

北山
ふんっ、今さら惚けたってムダだ俺は「お仕置き」ということを知っている


はっきり言い放つ「なんせ調べたんだから」すると、キョトンとした顔をし。

藤ヶ谷
えっ、もしかして俺以外の男にお仕置きをされたとか言わないよね?


鋭く見つめ「はっ?なんでそうなる」

北山
ちげぇわ意味だよ、お前に取られた
スマホで調べたんだ


そう言ったら「そっ」と安心したかのようにホッとした表情になり。




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