藤ケ谷は嫌な光を宿し、ニヤッと微笑みそう言って内心ギクリと身体を強張らせ。
そう眉を寄せると「天然」っと小さく肩を揺らし「んっ?」俺は訳も分からず首を傾げる。
(なんで笑う?俺はただのんびりしたいだけ笑うことないじゃん)
「これ重要」っと念を押す。
何故だか深い溜め息を吐き、暫くし。
その言葉にハッと見上げたら「あっぶねぇ~うっかりしてガチで、また眠りそうだった」
「あら太輔くんじゃない」とつぜん俺の言葉を遮って聞こえた女の人の声。
「あれ?この声は確か…」聞いた事がある声に耳を傾ける。
「げっ、母さんじゃん!?」ハッと気がつく、この声は間違いなく。
(顔を見なくとも分かる親子だし)
(はっ?俺、藤ケ谷に甘えたことなんて1度もない)
困った顔をしている藤ケ谷…(おいおい、もしかしてこの格好を見て俺が甘えているとでも思っているのか?チッ)
俺はすぐさま怒鳴りつけた、だが…
何故だか母さんに怒られてしまい「意味わかんね、ただ誤解を解こうとしただけなのに」
(ちょ待て太輔が優しい?笑える、それに気になっていたんだが藤ケ谷って俺の親の前だとキャラ変わるよな、いい子ぶるんじゃねぇこのドS野郎)
俺は呆れ果てていた、いつかは化けの皮を剥がしてやると思いつつ二人の話を聞きながら。
すると母さんは微笑みながらとんでもない事を言い「なんてことを!?恐ろしい親だ」とたん驚嘆してしまった俺とは逆にニンマリとした表情になる藤ケ谷
(はあっ?太輔までも!?母さんのノリに乗っているんじゃねぇそんなの「くだらない」とスルーしてくれたらいいのによ、あっそういえば藤ケ谷って冗談が通じなかったんだっけ仕方がない教えてやるか)
(やっぱり素直に教えてあげる俺って優しい~)
ピタッと、藤ケ谷の足が止まる。
(なんかウケ狙いで本気って言っているが無視しよう
よけい変な方向へ行きそうだ、しかしやっと着いた解放される~)
自然と自分の顔が緩むのが分かった。
藤ケ谷は、偉そうな俺の態度にブツブツ何か言っていたがちゃんと降ろしてくれ「おぉ~地面これほど恋しかったことはない」そして笑みを浮かべ…じゃっと手を振ってクルッと身体を玄関の方へ向け歩き出す。
(んふふっ)
(勝手に言ってくれ俺は、自由になれたんだ)
(へっ?)
が、母さんの言葉に扉を開けようとした手がピタッと止まる。
背後で藤ケ谷の嬉しそうな声が響く「ちょ嘘だろ」
俺は、後ろを向き念のため確認をとった。
(ぞわっ)
最後の「ね」に、ヒヤリと鳥肌が立つ。そのあと、藤ケ谷は失礼しまーすと礼儀正しく家に上がりこんでしまって。
(マジでか、なんでこうなる?)
まだ玄関の外にいる俺、嫌な予感しかない。それから部屋に入った藤ケ谷は躊躇なくベットへ腰を下ろし。
(お前には遠慮という言葉はないのか?勝手に寛いでいるんじゃない母さんも外見しか見ないでホイホイ危ない奴を家の中へ入れるな被害に合うのはいつも俺だ)
取り合えず机の上にカバンを置き、なるべく距離をおくことにし。
「ギクッ」けど勘の鋭い藤ケ谷はすぐ気づいたみたいで。
(おい、いつもの強気な俺はどこへ行った?)
その言葉を聞きホッと胸を撫で下ろす、特に気にはしていない様子で。
(しかしジロジロとこっちを見ているんだよな、やっぱ横尾さんがいないと、どーも落ち着かないっていうか安心しない二人きりだと)
(ほらきた)
帰ってきたばかりだから窓も閉まってるし、いつも以上に静まり返った部屋の中でさっきとは明らかに違う藤ケ谷の声。
冷や汗を流しながら恐る恐る尋ねる。
(それに急に声のトーンが低くなるとかおかしくね?殺気っていうの、めちゃくちゃ怪しい空気が漂っているんですけど)
ニッコリと俺の苦手なあの笑みをし、藤ケ谷が言葉を発した。
「ははっ」と苦笑いしながら逃げるように扉の方へ向かうと、途端にガシッと。
(えっ、前に進めない!?なにこれ?)
そう耳元で囁かれ首だけ後ろの方へ向けたら、そこにはあの笑みのまま俺の手首を掴んでいる藤ケ谷の姿があってよ。
今にも震えそうな声を抑えつつ冷静さを保ちながら言い放つ。
怪訝そうな顔「疑り深いやつだな」納得していないようだから少し危ない気がした。
俺は、いつの間にか壁ドンされていて。
急に、そんなマジな目で言われると流石の俺も戸惑ってしまう。
(言っとくが離れたいと思う理由は簡単だ怖いから、それ以外に何があるっていうんで?決して本人には言えないけど…)
が、心を読まれた感覚に陥ってハッと目を見開く。その様子を見て藤ケ谷は…
と、次の瞬間!身動きの取れない俺をまた抱き上げそれも今度はお姫さま抱っこでベットの上へと降ろし「勘弁してくれ」
妙な行動に出た藤ケ谷に、そう言った。
ブラックな顔でニコッと微笑む藤ケ谷「アカン1番ヤバいやつだ経験済みだから分かる」
(決して嘘ではない、だって自分に正直に生きている人間だから、ここはまず冷静に対処すべき)
しかし、チラッと藤ケ谷の顔を覗いてみると相変わらず表情は曇っていてさ。
(さては話が通じなかったか?仕方がない、もう1回言っておこう)
日本語が通じないようだから、あえて英語で言ってみる。ちょっと話せることを自慢し、すると直後に藤ケ谷がクスッと笑い。
何故だか馬乗りで、上から見下ろされている自分。つまりは、ベットと藤ケ谷の間に挟まっているってわけで。
スッと制服のシャツのボタンに手をかけ丁寧に1つずつ外してく藤ケ谷。
もちろん、脱がされているのは俺の制服で。
藤ケ谷は余裕の笑みを返し「そりゃ分かるから聞いているんじゃん」
「言っとくけど俺、高校生だぞ」重要とばかりに、強調し付け足す。
が、言われたとたんカチンときて。
本当に腹が立ち怒りをぶつけた、いつだって藤ケ谷は上から目線で。
何かを企んでいる顔をし、そう言い。
「んなの知るか、つうか考えてみたら制服を脱がし素直になるやつなんている?こいつも馬鹿な発想を思いつくもんだ」心の中で思う。
(へっ?)
だが藤ケ谷が次に発した言葉に俺の身体はピタッと固まり。
首を傾けたまま、そう聞くと。
悪魔が再び降臨してしまった、取り合えず無視してズボンのポケットに入れていたスマホを取り出し、すぐさま「お仕置き」という言葉を調べる。
意味:見せしめ、体罰を与えること。
使い方:お仕置きとして押し入れに閉じ込める。
「…‥嘘だろ?」思わず画面を二度見し(体罰?押し入れって、ちょ待て!こいつ、そんな危ないことを考えていたわけ!?)真実に驚愕した。
すると、スマホとにらめっこしていた俺を見て。
藤ケ谷が、そう言ったとたんに俺の手からスルリと携帯が消え。
ハッと我に返り強気で言うと。
あっさりと拒否され俺は最後の手段を失ってしまう
(落ち着け落ち着くんだ、よく考えてみろ俺お仕置き=体罰ってことはきっと物凄く痛いことなんじゃないか?痛いのは嫌いだ暴力反対、こうなったら一か八かで説得してみるってのはどう今の状況を脱する方法はこれしか残っていない)
「ちなみに、暴力では何も解決しないとテレビでも言っていた知らないの?お前」そういう意味を込め目で訴える。
が、必死の説得は簡単にも流されてしまい。
気がつけば、シャツのボタンは綺麗に全部外されてしまっていて。
何故だか、俺の上半身をうっとりとした表情で見つめる藤ケ谷に危険を示す赤信号が。
若干、引き気味に呟く。
(勝手に脱がそうとするな冗談ならまだしも全部ガチに見え藤ケ谷じゃないみたいだ)
すると、こいつは笑みを浮かべそんなことを言い。
慌てて口からツッコミが出る。
(どうやったらそう間違える?お前の耳は鼓膜はポジティブ変換なのか?まったく何を言うかと思いきやバカげたことを、お陰で俺の目が驚きのあまり宇宙までぶっ飛んで圧で目玉焼きが作れそうな勢いだ、危ねぇ~)
つうか、そんな事を呑気に考えている場合じゃない「おっ、俺、これからお仕置きというのをされてしまうわけか」つまり命がかかっているということ。
(もう藤ケ谷は俺の説得なんか耳に入れてはくれないんだろうしさ黙って痛めつけられる前に)
俺の声は徐々に弱々しくなって儚く願う、あぁ人って本当に命の危機が迫ると弱くなる生き物なんだなと実感しながら…(いや待てよ)
ふと、母さんから言われた言葉を思い出す。
「心を強く持て」
(まさに、今の俺にピッタリじゃん。よし遺書には「藤ケ谷が犯人です動機は俺が素直じゃないからです」的な軽い感じに書いてやろインパクトがある方が男らしくていいだろうし、どうだ俺の頼みは大魔王に伝わったか)
確認のため、恐る恐る顔を上げる。
が、藤ケ谷は間抜けな顔をし呆れた様子でそう言って。
はっきり言い放つ「なんせ調べたんだから」すると、キョトンとした顔をし。
鋭く見つめ「はっ?なんでそうなる」
そう言ったら「そっ」と安心したかのようにホッとした表情になり。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。