日付が変わって昨日のことでよく眠れなかった俺は苦手な早起きをし…
スマホの画面をタッチしたが藤ケ谷からは何の連絡もなく。
「早く謝って、このモヤモヤを無くしたい」こんな嫌な気持ちのままジッとしてはいられず…が、逆に顔を合わせにくいのも正直な気持ちで。
しかし、いつものように横尾さんと俺んちへ来た
藤ケ谷は。
まるで、何事もなかったかのように笑顔を向けホッと胸を撫で下ろす。そして、その日は変わらぬ1日を過ごし翌日。土曜日という事もあって独りでショッピングに出掛けた帰りがけの夕方…
(あれ?あんな格好をし何処へ行くんだろう)
偶然にもタマの姿を見かけ、それもド派手なスーツを身にまとい何となく気になって着いて行くと繁華街っていうの?ウザいくらいにキラキラと光を放つ店が建ち並んでる中の1つの店へ入って行ってよ。
看板には「クラブYummy」と書いてある…
(こんな所になんの部活動がYummyってなに?つうかヤバくない確かこの通り未成年は立ち入り禁止のはず学校の規則に書いてあった彼奴どうしてこんな所に)
と、考え込んでいたら副会長の大倉に声を掛けられ
(それより…)
ニヤニヤと笑いながら聞いてくる副会長「つうか、キスマークってなに?」
なぜか驚きの表情をしている副会長を見ながら頭の中で知識のページをめくってみるが分からん…(つうか俺、こういう顔されるの本当に嫌だ)
(俺には全く理解ができない迷惑なだけ面倒だしウザい)
と、大倉が「最近、誰かに首とか噛まれたりせーへんかったか?」そう質問され再びペラペラと頭の中のページをめくり。
(最近、誰かに?そんなこと…あっ‥た…っけ)
脳裏に甦る、あの日の出来事。
(そういや藤ケ谷に強く噛まれたっけか痛かったけど結果あいつを傷つけるようなことを言ってしまい…でも、それとなんの関係があるっていうんだ?)
「隅に置けんやつやぁ~」と大倉、はあっ?頭の中でハテナが飛び交う。
話がよく見えず、眉を寄せ訊ねる。
(ヤバい、よけい分からなくなった語彙力無さすぎ)
その言葉を聞き、目を見開き驚く。
(奴隷としか見ていないって事?それに愛情の証みたいな要素は絶対に入っていないはず痛かったし)
(なるほど自分の奴隷を他の奴に使わせたくないという、なんて恐ろしい魂胆だ藤ケ谷)
意味を知れば知るほど怖くなっていき…
(あっ、でも副会長が勝手に言っているだけで本当かどうかは分からない…そうだそう考えよう、ここはポジティブに思うことにし)
そう言ったら「大変やな、男の方が女より独占欲が強いし」っと鼻で笑われた。
(意味が分かんねぇ)
(バイトしている!?)
(部活動じゃなかったんだ)
(そんなに困ってるん? あいつんち)
その日から、俺はタマの誘いを断ることが出来なくなり。
なんか、見る目が変わってしまい。
(なんつうの、いじらしくなっちまってさ)
ギュッと抱きついて来たタマを可愛いと思ってしまう。
以降、タマは俺らと一緒に過ごす事が多くなり俺達は日を重ねる毎に親しくなっていき。
そんなタマにつられるかの如く次から次へ皆、俺らの所へやって来て。
気がつけば俺達のクラスは溜まり場と化し、今日も賑やかな声が響き渡っている。
陽だまりの中「共に笑い、はしゃぎ高校生活を謳歌したい」そんなふうに思っていた頃が戻って来たかの如く俺達は日々を過ごしていたんだ。
ただ1つ…
(やれやれ…ふっ)
相変わらず藤ケ谷は、でもその藤ケ谷を軽くあしらうタマってある意味すごいと思う。
(デキ…た?)
(意味わかんね二人でなんか作りでもしたの?)
そんな中、何故だか人のクラスでナンパしている
塚ちゃん。それもトッツーを…
(ん?そういう気ってどんな気だ、みんな頼むから
正しい日本語を使ってくんね)
(さっぱり、わけ分からない)
そよ風と共に流れて来る明るい声を聞きながら刻は静かに流れてく春から夏へと向かい…
そんな、ある日のこと。
俺達は晴天の青空の中、何故だか昼休みに屋上へと集まり皆で「花いちもんめ」をやっていた。
言い出しっぺは、もちろんタマ。
(ははっ…とまぁ~こんな感じでよ)
でも…「時間制限があるし大丈夫だろ」俺は、そう安易に考えていたんだ。
(これで何度目だっけ?結構やっているな、ふっ)
ニカは真っ先に向こうに取られ代わりに千賀がこっちへ来ていて。
俺達の側には他に藤ヶ谷と横尾さん・河合、タマの方は宮田・塚ちゃんにトッツー、五関は見学中。
(うえっ!?)
「別にいいわゲームなんだし」そうこれはゲーム、だけどそれからが大変で。
いつもはジャンケンが弱い俺が何故だか勝ち続け。
最後にはドヨ~ンと落ち込んでいる藤ケ谷の姿が、その逆にほくそ笑んでいるタマ。
そして独り取り残された河合は…
「ガハハハッ」こうして楽しい?昼休みは過ぎて
行き、その日の放課後。
俺は、すっかり忘れていたんだ。
こいつ、タマは藤ヶ谷と同じドSだってことを。
(いや、どちらかというと小悪魔かもしれない宮田や塚ちゃんも何故だかいつも言いなりだし)
約束した当日…
タマは黒いスーツに身を包み、髪もキレイにセットされ近くで見ると雰囲気が大人っぽくなったような凄い変わりように俺は驚く。
タマが働いている「クラブYummy」という店は。
とたん驚きの声を上げるタマ「またか」俺は小さく呟き…(ははっ、まっ、いいけどさ)
つまりタマは、その店へ一緒に行って欲しいって事なんだ。それだけは理解できた、でも…
(益々、意味わかんない)
それから二人して映画を見て夕方になると目の前でキラキラと輝いている豪華な建物、その中へ入って行き店内は怪しすぎるほど嫌な匂いがプンプン漂っている。(大丈夫か?俺)
不安なまま入り口付近に目をやれば目立つ所に大きな写真が飾られていて「わっ、なんかマジでヤバい気がしてきた」
他にも沢山の男の写真が飾ってありって「んっ?」中でも一際目立つ豪華な額縁、その前で足を止め。
タマは急に立ち止まった俺を不思議に思ったのか、そう聞いて来て「ここに写ってる写真まさか松兄」
松岡昌宏、横尾さんと同じ親戚筋にあたる昔っから可愛がってもらった兄貴みたいな存在、嫌な予感がゾワッとつま先から上へあがり顔をしかめた。
(間違いない)
念のため、タマに確認をとると。
タマは俺の言葉に驚いた顔をし「やっぱり」
そう告げたとたんポカ~ンと口を開け、放心状態に陥る。小さい頃からいつも一緒に遊んでくれた頼れる兄ちゃん、それが松兄。だけどある日、俺が太輔と遊んでるのを見てめっちゃ怒っていた記憶が残っている怖い兄ちゃんでもあった。
タマは、我に返ったかのように少し遅れて反応し。
(あっ、もしかして松兄はカッコいいから本当に血の繋がりがあるか疑ってんのマジで嘘じゃないし)
(何を競っているんだか?さっぱり分からねぇ、それより早く帰りたい松兄に怒られるのは勘弁だしタマが、どうして俺をこの店へ連れて来たのか知らないけれど用事があるなら早く済ませてくんね)
「つうか、松兄はなんでこんな所で働いているんだろ」ふと疑問に思う。
が、促されるまま奥まで誘導され。
とたん明るい声が飛び交いタマ同様スーツをかっこよく着こなした男たちが数人お出迎えをし。
(はっ?俺は男だ)
チラチラとこっちを見ながら次々とタマに質問攻めしてくる男たち、それに対し「秘密~」とニコやかに微笑んでいるタマ。俺は初めてのことで、キョロキョロと周りを見渡して。
(待て!お客さんも店員も全員が男だなんて異様でしかない、なんなんだ!?この店)
しかも、思った以上に薄暗く置いてあるもの全てがゴージャスさを漂わせ。