(…ったく横尾さんも藤ヶ谷も俺のこと子供扱いしやがってさ)
教室を出て廊下を歩くこと数分、反対側から何やら賑やかな連中がやって来る。
1人は金髪、あとの二人は「あっ、向こうから誰かやって来る聞いてみよ、すみませ~ん」
(げげっ、こっちへ来た)
(うわっ、めっちゃニヤけた野郎だなぁ)
(知るか、んなもん)
「見えねぇ」とか笑っていやがる金髪男 (ふんっ、悪かったな)
「なっ…」すれ違いざまチラッと、そいつはこっちを見てニヤッと笑った顔が何故だか藤ヶ谷と重なって見えた。
(ゾクッ)
そして…(ここだな)
トントントン、ノックをし「失礼しま~す」職員室にプリントを届けると再び廊下を歩き出し、途中…生徒会室へ寄って。その帰り、1人の背の高い美形男子が目の前に現れ。そいつは俺を「チビ」だなんてバカにしやがるからつい頭に来て毒づいてしまい
でも関わるとロクなことがないと無視してまた歩き始め。
しかしガシッとイキなり肩を掴まれて、それも物凄く強い力で恐る恐る後ろを振り向いたら案の定さっきの男が立っていてさ。
(やっぱり初対面で死ねと言ったのはまずかったか?それで怒り、いや待て俺は何も悪いことなんてしていないじゃんキツく言ったのは、こいつが俺をバカにしたからだ)
俺は何も喋ろうとしない男を睨みつけ言葉を放つ「マジで早く教室に戻らなければならないのにさ」
すると、やっと口を開いたかと思ったらそんなことを聞き。
(なぜ急に?あっ、もしかして反省し謝ろうとして
いる?学年を聞いて後から詫びの品を届けるとか、それなら俺が得するか)
一言だけ、ボソッと小さな声で教えてやった。が、なんだか知らないが目を見開き変なものでも見るように俺を見て。
(なに当たり前のことを言っているんだよ)
俺は、素っ気なく言葉を返す「言っとくけど、まだお前に対しての怒りは消えてないから」
「んっ?」次は唐突に質問し。
(あっ、そういえば…そんなのあったっけ‥でも俺、途中から寝てたし覚えてないや)
素直に答える嘘をついて墓穴でも掘ったらヤバいし
(つうか、急に眠たくなったんだ誰も睡魔には勝てやしないさ)
そしたら、何か俺の肩を掴みながらニヤニヤしブツブツ言って。でも聞き取れなくてよ…(てか、怖い)
「もう放せ」俺は、無理矢理にバタバタしたけれどビクともせず「少し上を向け」命令口調でそう言われ「はっ?またチビって言うの」すると顎をクイッと持ち上げられて。
(言われて見れば見覚えが)
(こいつが自己中で自分勝手な野郎か俺のことをチビと言ったくらいだ、やっぱり腹が立つやつだったな)
そう言って、俺の顎を更に持ち上げ気がついたときには遅かった。
目が一瞬、点になる。
(えっ、ええっ?なんでこんなに会長の顔がドアップに映っているんだよ、そして唇に違和感が…んでもって俺の唇と会長の唇がごっつんっこしていて…‥
はああぁぁ~っ!?)
自然と変な声が漏れ「こっ、これってまさかキスされてんの!?俺」
(意味わからん、この学校やっぱ変だ何故どうして?いや、その前に男にこんな事をすんな。もしかして
さっき毒を吐いたのを根にもって嫌がらせでもしているのか最悪だああぁぁ~つうか、これ俺の…ふぁ
ふぁ、ファーストキスうぅ)
いきなりのことに頭がパニックになる半泣きでバンバンと会長の胸板を叩くが俺の後頭部をガッシリと押さえ離れないよう固定してるし、しかも舌で口をこじ開けようとしていやがり。
(待て、本当に無理)
そう思った、その時だったドカッと物凄い音がして会長が離れていったのは。
(ひっ、ひとまず助かったぁ~男…いや、あの腹立つ生徒会長に初めてのキスを奪われるだなんて、もう死にたいわ)
俺は、長かったキスのせいで酸素不足になり地面に尻餅をつき息を整える、すると頭上から。
俺の名前を区切りながら呼ぶ、ドスの効いた声が
聞こえ。
上を向くと邪悪な顔の藤ケ谷がいたんだ、そして
手を引かれ立たされたと思ったらスッポリと腕の
中へ収められて彼奴はというと藤ケ谷に蹴られた
らしく飛ばされていて。
ギュッと抱きしめられシュンとなって謝る、藤ケ谷は俺なんかの為に何かあったんじゃないかと心配したらしい。
(まぁ、実際ありまくりだったけど)
そこへ横尾さんも息を切らし、やって来て。
俺は幸せもんだ、こんなにも思ってくれる友がいる
倒れている生徒会長を睨みつけながら藤ケ谷が言う
すると、藤ケ谷に飛ばされた会長は身体を起こしながら意味不明な言葉を呟き。
(どうして、こいつ俺の名を)
なんか、よく分からないけど納得した顔で平然と
俺の隣へやって来て。
藤ケ谷は、そう言いながら黒いオーラを放ち俺を
自分の背中の後ろへと隠す。
嫌なことを思い出し睨みつけながら叫ぶ、こいつに対する怒りが治まらず。
会長は、何か勝ち誇ったような顔をし藤ケ谷を一瞬チラ見して。
俺は怒りが爆発し沸き上がる感情をそのまま会長へとぶつけた、すると気がついたら藤ケ谷の真っ黒なオーラがより一層濃くなっていて。
あまりの形相に、ゾクッと鳥肌が立ち。
(つうかいつから俺は藤ケ谷のものになったんで?あ、奴隷か?いやいや、ふざけている場合じゃなかった、この空気マジでヤバい)
本能的に危険だと察し、1歩うしろへ後ずさる。
が、藤ケ谷は急に振り向きニコニコと俺に問いかけて来て、しかし完全に目は笑ってなく。
思えば、こいつは怒っていると俺の名前を下で呼び「くん」付けする。あと変な区切りをつけ…
横尾さんが間に割って入り、その言葉に救われた
気がした。
何か言い掛けた会長へ鋭い視線で言葉を吐き藤ケ谷は俺の腕を掴むと前へと歩き出す途中、横尾さんの方へ向きを変え。
(げっ、こいつ突然なにを言い)
(help、help、横尾さん俺と藤ケ谷を二人きりにしないで)
横尾さんは、にこやかに笑みを浮かべ去って行き
藤ケ谷はというと。
何事もなかったかのように言って、けど口角を上げ妖艶に微笑んでる「もっ、物凄く不自然だ、えっ、なに俺、絶体絶命?」
藤ケ谷は俺の問いには答えず、一言も喋らないままグイグイ腕を引っ張って行き、まるで捕まってしまった獲物の如く俺は着いて行くしかなく。しかし、この沈黙した空気が1番怖い。
(やっぱり随分と待たせてしまったから怒っているのか藤ケ谷を敵に回すのと気まずくなるのだけは避けたい、つうか俺、嫌だし)
聞こえるくらいの小さな声で礼を言うと、前を歩いていた藤ケ谷はピタッと止まり「はあっ?」というような顔をし俺のことを見た。
そのあと小声でボソボソッと言ったけれど、よく
聞き取れなく。
「じゃ、あれはどうして怒ってたわけだ?」疑問が生じる…(それとも怒って見えただけで俺の勘違いか)
藤ケ谷は、また妖しげな笑みを浮かべ言葉を発し。
(嫌な予感がする)
「悪魔が降臨した」まさに今、その言葉が思い浮かぶ「てか約束?」俺はキョトンとしてしまい。
(んなのしたか?) 頭上にはハテナが飛び交う。
藤ケ谷は、再び無言で歩き出し俺達が向かう先から
(あれ?あいつら)
「あはっ」すれ違いざまチラッとタマって呼ばれたやつがこっちを見て。
キッとそれに反応し藤ケ谷が睨みつけ、不穏な空気が漂う (わっ、不吉な予感が)
それから連れてかれたのは屋上へと続く階段、とたんにドンッ壁へと追いやられ (えっ!?壁ドン?)
いきなり、しかし今度はちゃんと聞こえるように
耳元で囁き。
藤ヶ谷はキレ気味で、何も言い返せない自分。
(しかし襲われかけたは余計だ、こんな俺を襲う者好きなんていやしないさ)
俺は何とか反論し思わず眼を逸らす、その強い眼差しに堪えきれなくて「藤ケ谷は、もう過保護を通り越し何なの?理解不能だ」
が、反って逆なでしてしまったのか呼び方が子供のころの「ひろ」に戻っている、口調は優しいが顔はなんとも言えないほどの悪で満ち溢れ「あぁ~もう
どうすればいいんで?」言い訳を考えている暇などなかった。
(そうだ藤ケ谷を冗談で笑わせ話を変えてみたらどうだろ?そうすれば、なんとかなるかもしれない)
のちに俺は、その安易な考えに深く後悔することになろうとは思いもせず。
言ってはイケない言葉を口にしてしまったんだ、
むろん笑わすための冗談として。
「こんなとき、なにバカな事を言っているんだ怒ってたこと忘れちまったよ、あははっ」というツッコミを待っていたんだけれど藤ケ谷は予想だにしなかった言葉を投げかける。
なんか、冗談を真に受けちゃっているみたいで。
(いやこれは笑うどころか怒っているんじゃね?このままだとマジでヤバい多分いやきっと誤解している
まぁ~藤ケ谷には冗談が通じないようだから正直に言うしかないか)
意を決して俺は…
(えっ!?)
言おうとしたけど言えなかった、いや正確には俺の口があるもので塞がれて言葉が出せなかったんだ。
「なに?この前にもあった…的なパターン、えっ、ええっ、なん…で!?」俺は、目をカァーッと見開きポカンとしてしまい。
(藤ケ谷のイケメン顔が、どうしてこんな近くに?)
(ちょ待て冗談抜きで俺なんで、こいつにキスされているんだよ!?しかも痺れるように熱い、意味が分からん)
混乱しながらも必死に抵抗するが…
噛みつくような激しいキスをされ自ら出ている変な声に羞恥心を覚える、きっと俺の顔は今、真っ赤になっているに違いない。
(なんか舌が入ってきたんだけど!?)
そして歯列を舐めてきて、次に無理矢理にでも俺の舌と絡めさせようとしていやがる。
(や、やめろ、こんなの絶対におかしい)
数分間に及ぶ長いキス、何度も角度を変えられ好き放題にされまくり、やっと気が済んだのか藤ケ谷は離してくれ俺はもう降参とばかりにヘロヘロになり足に力が上手く入らなく腰が抜けてしまい。
息も絶え絶えに少し涙目になりながら抗議し「マジで有り得ない、ほんと、あり得…ない、くっ」頭の中で何度も有り得ないを呟く。
が、藤ケ谷は満足気に嬉しそうな顔をしそう言ってさ確かに男とキスするくらいなら藤ケ谷とした方が良かった的なことは言った。
(つうか、どんな解釈をしてんだ?そもそも)
俺はギロッと鋭く睨みつける、男同士でキスなんて普通しないのにあんな頭に残るような濃厚なキスをして「はぁ~」溜め息混じりで落ち込んでいると、隣で聞いていた藤ケ谷の様子がブラックになるのが見え。
(げっ、ヤバい)
そう言いながら邪悪なオーラがますす大きくなって
(えっ、こいつ何を言っているんだ騙した?俺が)
呆れた顔をし言葉を返す。
(つうか被害者ぶってんじゃねぇよ当の被害者はこの俺だ男なんかにキスされて「わーい、やったぁ」とか喜ぶわけねぇだろ)
口角を上げ藤ケ谷が言う。
「待て、こいつってこんなキャラだっけか?なんか変だ」俺は、藤ケ谷が今も放っている恐ろしい殺気にビクッとしながら動揺を隠せず。
そう言い気づかれないよう、ゆっくりと後ずさる。
ニヤッと笑う藤ケ谷「いったい何を考えているんで?」
頑張って言い張るがその通り、むろんこれは逃げるための口実。
(げっ)
藤ケ谷の表情は「ニコニコ」じゃなく「ニヤニヤ」でもない、もう「ニタニタ」
(てかまたキス!?もしかしてさっきキスしたのは俺が約束を破ったから?それより悪いことを考えているのは、お前の方だろ)
ツッコミ所が満載だ…
(口も聞いてやんね、敵に回すくらいの覚悟はできている俺も怒るときは怒るんだ)
そして言い逃げをしようと、すぐに走れるよう構えていたら背後からシャツの襟をガシッと掴まれ。
(うっ、動け…ない‥ガックシ)
(はいはい分かりました)
離れまいと、くっついている藤ケ谷に俺は仕方なく白旗を上げ、このあと放心状態で一緒に家まで帰り
おまけに手まで繋がれて。
(ははっ…今日はファーストキスとセカンドキスまで奪われ↼なんて日だ)
この事は、俺の黒歴史に深く刻まれたのは言うまでもない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。