(なに?もしかして自分の下僕を他の野郎に使わせたくないとか俺がそんな簡単に誰かにお仕置きされるわけないじゃん、あっそうだ)
ドヤ顔で、下から睨みつけ教えてやる。
(なんだと~なんつう態度だ!?まぁいい、そうやって余裕で笑っていられるのも今のうち)
(わーいと心の中でポーズを決める、そしたら閉じ
込められなくて済むし。だって書いてあったんだ、使い方は「お仕置きとして押し入れに閉じ込める」とかなんとか押し入れさえなければ、この方程式は成り立たないことに俺は短時間で気づいたってわけ
やっべ~マジで俺、天才かも)
ニヤニヤしている俺をよそに藤ケ谷は意味が分かっていならしく頭上にハテナを浮かべながらそう言って。
俺は口角を上げ「だが、それはもう無理なんだスペースがないんだからよ」
藤ケ谷は怪訝な表情で、さっき取り上げられた俺の携帯を取りだし何かを調べ始め「おまっ、ちょ意味が分からないってなんだよ」少し驚く俺、そして…数秒後。
頷きながら納得した顔をし「ふふっ、やっと分かった?人にとやかく言う前に自分を見直せっつうの」心の中で毒を吐き、取り合えず脱がされたシャツを着なくてはと。
(いや待て、その前に)
早くしろと言わんばかりに促す、こいつは未だ跨がったままでいたから。
が、急に質問をされて。
そう答えたら、藤ケ谷はクスッと笑みを溢し。
低い声で言い、だんだん顔が俺の首へと近づき。
藤ケ谷が俺の首に顔を埋めた、途端に鳥肌が立ち「こいつ今、人の首を舐めやがった!?」
俺は咄嗟に離れようと抵抗するが藤ケ谷の力は強く手が頭上に持ち上げられ固定され。
(いやいや…そもそも俺、悪いことなんかしていないし許すとか許さないとか訳わかんね)
藤ケ谷はニッとまた口角を上げ笑みを浮かべている
(あぁ~もう、だから本当に何が言いたいんだか分からねぇよ)
自分でも頭が悪すぎて理解力がないことは自覚しているつもり、しかし藤ケ谷の場合は説明不足で頭がこんがらがってしまい苛々してしまう。
(取り合えず整理してもらおっと)
もう考えるのはギブアップし言った、すると余裕な感じで俺を見下ろして。
(はっ?確かに手短にとは言ったけれど、いくら何でも短か過ぎじゃね?それに「お仕置き」は押し入れが必要なんだろ無理じゃん諦めの悪いやつ)
心の中で悪態をつき、溜め息を吐きながら口を開く
(携帯は嘘をつかないんだ藤ケ谷はなんで同じ過ちを繰り返そうとするわけ?そんなに自分の醜態を晒したいのか)
俺は哀れみながらクスッと笑う、属にいう憫笑ってやつだ少し間を置き「はいはい」っと舐めたように藤ケ谷が言葉を発した。
笑いながら、横に手を振って。
「もう、とっくに見ているじゃん目の前にいるんだから」急に変なことをいう藤ケ谷に、疑問符が飛び交う。
不貞腐れ気味に返事を返す…
(ゆっくり時間をかけてって言われても、そんな面倒くさいこと俺は引き受けないとは思うけど)
藤ケ谷の眼が、怪しく光を放つ。
にこ~っと笑っている不自然過ぎる、その顔が怖い
(しかも俺達の仲ってなんだよ?てか、ぜってぇ隠し事ってアレのことだよな)
昼休み俺が戻るのが遅かったこと身体についていた匂いの話し…
(亀梨先輩があんなことをするから、お陰でこのありさま藤ケ谷はこういう事に関してしつこいんだ)
言葉を遮り、その声と共に首筋にチクッと先程とは違う痛みが生じた。
涙が出るくらい痛くて、悲痛のあまり叫ぶ「なぜ、犬みたいに噛むんで?しかも首なんかを」
(マジで、いてぇや)
(喧嘩を売ってんの?買ってやろうじゃん、売られた喧嘩は買うのがルール)
俺は、苛っとし興奮していた。
藤ケ谷は、さっきとは言い方を変え。
(…んだよ、んだ‥チッ、なんで全部お前に話さなきゃならねんだよ俺に黙秘権はないの?もちろん藤ケ谷が昔っから過保護なのは知っているさ、だがらってそこまでする必要ある)
とうとう怒りが爆発し、同時に自分の声が部屋中に響き渡りシーンと静まりかえる室内、藤ケ谷は急な俺の態度に驚いた様子で固まっていて、ハッと我に返り過ちに気づく。
(ちょ待て相手は藤ケ谷じゃん、超やべぇ~怒らすと
また面倒なことが待ち受けている勝ち目なんてほぼゼロに近い、いや確実にゼロ、むやみに啖呵を切って出る所じゃないのに俺ったらなんて命知らずな)
そう思い、こいつが言葉を発するまで身構えた。
少しすると…
藤ケ谷は寂しげに呟き、その姿は物凄く傷ついてるようにも見え「あれ?」想像してたのとは違い逆に俺が驚いてしまう。
いつもは、こんな簡単に納得せず嫌でも理由を聞いてくるのに。
(なんだよ?これ…なんか様子が違う調子が狂うっつうか、どう反応したらいいのか分からない)
別に怒られたいとかいうわけではないが、ただいつもの藤ケ谷と少し違うことに違和感を覚え。
藤ケ谷はそう言って俺の上からあっさりと退き右肩に自分のカバンを持ち部屋から出て行ってしまい、その後ろ姿が一段と暗く感じ。
(これは、もしかして怒らせたというより傷つけた?あんな藤ケ谷を見たのは初めてかもしれない傷ついた表情なんて見たことがなかったから)
(俺の首を噛んで怒らせた藤ケ谷が悪いはずなのに、なんで自分がこんな複雑な気持ちにならなければならないんだよ)
(よく考えてみれば少し言い過ぎたかもしれない)
かなり酷い言い方をしたのも事実、あっちはただ…俺のことを心配してくれただけなのに関係ないとか怒鳴りつけ一方的に藤ケ谷を傷つけた。
(俺も同じ事を言われたらショックで落ち込みそう)
(こんな首の痛みなんか犬に噛まれたと思って放っとけば良かったんだ)
赤くなっている首筋に触れながら思う「藤ケ谷が、しつこいのは昔からで理解はしていたけれど」
ああして引き下がった藤ケ谷にモヤモヤしてくる…
(これって後悔ってやつ?それとも、いつもとは違う藤ケ谷に戸惑っているだけ?どっちにしろ俺はバカやろうだ、はぁ…)
その後は、数時間もの間ずっと藤ケ谷が出て行ったドアを見つめていた、もしかしたら…「さっきのは冗談だよ」と笑って戻ってくるかもしれない、そう思いながら。 でも、そんな事はなく気がつけば夜になっていて。
(んっ?横尾さん、なんだろ…こんな時間に、ハッ、もしかして藤ケ谷のこと)
ドタドタ、ドタッと階段を降りて行くと「煩い」と母さんに叱られてしまい。
ニコやかにソファーに座っている横尾さん、お茶
なんか飲みながら。
(な~んだ違うの)
(俺も、横尾さんや藤ケ谷のこと大事に思っているし友達として)
・横尾side
あの予想外の幕引きとなった「新入生歓迎会」から数日。
太輔とミツはあの後なにかあったらしく、でも俺は深くは介入せず様子を伺っていた。
裕太はというとミツと話し合って決めても埒が明かないと思ったのか。
独断で体育の授業で行う競技を決めるようになり、それがまた太輔の神経を逆撫でし。
「やれやれ」っといった表情のミツ、うちの学校は本当に変わっている。
合図と共に一斉に動き出す俺達、それとAクラスの連中。
ミツを護ろうと、その手を握った太輔に裕太からの叱責が飛び。
まぁ、いつもこんな感じで気がつけばニカもすっかり俺達と仲良くなっていて。
(はぁ~また始まっちゃった)
ホイッスルが鳴り、結局は引き分け。
(しかし、裕太はどうしてあんなにミツを欲しがるんだろう?)
そこに何か理由がある気がした、その瞳の奥に潜む暗い影を見つめ。