しかし、これでやっと手とか自由に動けるようにはなったけど俺の上に馬乗りになっている先輩がウザったく苛々を募らせ、そんな自分とは逆にニコニコと笑っている姿に腹が立つ。
と、思わず変な声を出してしまい。
そう先輩は男にとって大事なところを揉むようにして触り、まるで反応を楽しむかの如くに。
(大きさが分かっちまうじゃん、つうか気色悪い)
と、今度はそんな意味不明なことを聞いて「主語を言え主語を親に教わらなかったか」
(だから何をだって聞いているじゃん、そんなに驚かれると俺が時代遅れみたいだ)
またズボン越しに触ろうとするから「ダメに決まっているだろ」つい手が出て、バシッと先輩のことを叩いてしまい「もしこれが冗談だとしても笑えない
こいつ人のを触る趣味でもあんの」若干引いてしまう…
(意味わかんねぇ、もう年上なんて関係ない付き合いきれないや)
(ただ、自分より1年先に生まれたってだけで敬なくたっていいだろう)
キーンコーンカーンコーン、すると授業を知らせる鐘が鳴り。「マジでヤバい早く帰らなければ」
亀梨先輩は、気持ち悪いくらい甘えてきたけれど「なんか吐き気が、うえっ」
キリッと自慢げにそう言った、流石に頼まれた仕事をすっぽかすような事はしたくない。
(もしや似合わないとでも言いたいわけ?俺だって、なりたくてなったわけじゃねぇ今ので完全に拗ねた)
が、先輩はそう言ってスッと上から退いてくれ俺はやっとベットから降りることができ。
と、いきなり今度は俺の首筋をペロッと舐め全身に鳥肌が立つ。
不敵な笑みを浮かべ…
言い放ちバタンと音を立てドアから廊下へ飛び出した「…ったくマジで絡みたくない」首筋の生々しい感触が気持ち悪くゴシゴシと袖の部分で拭き。
(それより職員室だ)
ハッと我に返り急ぎ先生に頼まれたプリントを取りに行くと教室へ戻り、もちろん時間がかかり過ぎだとこっぴどく怒られたのは言うまでもない挙げ句、溜め息を吐き席へ腰を下ろした途端に藤ヶ谷が。
めちゃくちゃ不機嫌な声で話し掛けて来て。
無意識に、目を合わさず言い放ってしまい。
(藤ケ谷に迷惑をかけるようなこと一切していない、もしかしてサボっていると勘違いされた?こいつの事だから有り得るかも、つうか怒られるのは先生だけで十分だ)
すると藤ケ谷は笑顔だけど目が笑っていないパターンでそう言って「つうか人の匂いを嗅ぐな」
(あぁ~そうですか)
が、ポキポキと手を鳴らす嫌な音が聞こえ「なんかマズいかも」そう察し、前の席のニカに助けを求めようとしたんだけれど。
(寝てるじゃん、どおりで大人しいと思った…こう
いう時に限って役に立たないんだから)
ぐっすり眠っているニカの背中をキッと睨みつけ、再び隣を見ると。
(意味が分からない…)
が、断ったら後が怖そうだから仕方なく俺は授業中にも関わらず藤ケ谷の言う通り机を寄せ。
(はいはい…)
渋々そうすると横尾さんと目が合って「ははっ」と苦笑いしている姿に自分も笑い返し途端、ギュッと抱きしめられ。
(ちょ、なに急に!?)
先生の声にクラスメイトの視線が俺らへと集中し。
お構いなしにそう言う藤ケ谷、みんなに見せつけるかのように強く抱きしめ。
先生は、ニヤリと笑みを浮かべ。
キッパリと、躊躇なく答える藤ケ谷。
ギラッと視線が俺の方へと向く「えっ、何が」背中に冷や汗が流れ。
(げっ、ヤバい勘ぐられている)
(お願いだ、この嘘を信じてくれ)
ふ~んと、なんか納得していない様子の先生「もし俺が亀梨先輩に会っていたことがバレでもしたら、また藤ケ谷にキスされてしまう会うなって約束したし」
それに実は亀梨先輩からも図書室を飛び出した際に藤ケ谷には内緒にしろと言われていた、もしバレたら1回キスすると脅かされ。
(冗談でも流石に嫌だ、そんなキス地獄はいらねぇ)
「うえっ」と想像したら吐き気がし気がつくと手前で藤ケ谷がポケットから自分が愛用している香水を取り出していてよ。
若干、顔が引きつった。
口角を上げ「最終手段」だと俺へシュシュッと勢いよくかけやがって。
(こんなのただの嫌がらせだ、そんなにかけると気分が悪くなる少しはこっちの気持ちも考えろっつうの)
藤ケ谷は暫くかけ続け、それからやっと満足したのか香水を閉まってくれ。
小さく微笑み、ニヤつきながら嬉しそうにしている「だろな呆れてものも言えね」
教卓の前では、先生が俺らを睨みつけながら注意をし藤ケ谷はというと。
(ぞわっ)
俺の肩にポンと手を置いて発した言葉に身体が震えあがったのは言うまでもない「どうして皆、自分にまとわりつくのか?俺は普通の高校生活が送りたいだけなのに」そう思いつつ、 が…
(こいつの殺気は半端ないけど俺には逃げ足の速さという素晴らしい特技がある授業が終ったらマッハで遠ざければいいさ、そしたら理由を聞かれずに済むし、やっぱ俺って才能あるかもしれないな…そうと決まれば)
あと何分で終わるのか確かめるべく時計に目をやった、と「げっ、まだ30分もある自分的には10分くらいと予想していたのにまさかそんなに残ってるとは思わなかった…仕方がない、それまで力を補給しておこう」
少しだけ、そう少しだけなら大丈夫と俺は机にうつ伏せになり寝る体勢に入る「30分だけ」心に念を押し、ゆっくりと目を閉じた。
それが、仇になるとは思いもせずに。
・藤ケ谷side
俺は毎日が不安で仕方がない、原因は知っての通り北山、あいつは本当に小さい頃から強気でそんでもって危なっかしく今も貧乏揺すりをしながら北山が帰って来るのを待っている。
(何か先生に頼まれごとをされ走って教室を飛び出して行ったんだよね追いかけようとしたら「席につけ~」と怒られてしまい、でも有り得ない、こんなに遅いだなんて)
鐘も鳴ったのになかなか戻って来ない、俺はどうも北山が隣にいないと落ち着かなくて、ようやく戻って来たかと思ったら何故か他のやつの匂いをお持ち帰りしているし。
ただ、ぶつかっただけと本人は言っているが簡単につくようなものじゃない誰かに抱きしめられたのなら話は別だ、様子からして絶対におかしい。
こいつは物凄く嘘が下手で俺は北山のことなら何でも把握済み、今は授業に集中しないと後あと面倒だから終わってから詳しく吐いてもらうつもりでいた
しかし無防備に眠っている。
(寝てしまったら俺の勝ちじゃん起きたあとの反応が楽しみ)
が、現実を甘く見すぎていたようで授業が終わって既に放課後、未だ目を覚まさないでいる。
「やれやれ」呆れ気味なワタ、肩を軽く揺すってみたけれど反応がなく、なかなか起きない北山を見ていて思う「現実より夢のほうがいいってわけ?なるほど目を覚ましたらお仕置きだね)
ふと目線をずらすと寝ているやつがもう1人いた、やたら北山になつきまくっているニカだ「こいつが先に目を覚ましたらややこしい事になる、その前になんとかしないと」
耳元で囁くが見事に無反応、分かりきってはいたけれど苛立ちが募り「罰を与えないと」口角を上げ、北山と自分の鞄を左肩にかけ。
ワタが何か言っているが気にも止めず「もう、これしか方法はない」と、その身体を持ち上げた「起きなかったお前が悪い」軽く笑みがこぼれた次の瞬間
抱きしめるように抱っこして。
(俺の右肩には北山の顎が乗っかっている、周りにはいい見せつけとなるだろう)
そしたら北山を狙う奴が少しは減るかもしれない、そんな事を考えながらクラスを後にした。
・北山side
(ん~なんだろ?身体が浮いているような感じがする、でも物凄く温かい)
俺は、ゆっくりと目を開く「えっ」その瞬間、驚きのあまり身体がビクッとなって「待て!?どういう事この状況?」声を発したくても全身に冷や汗が流れ感覚を麻痺させて。
(確か教室で何かの目的のため力を蓄えようと寝ていたはず、なのになぜ俺は抱きしめられている状態で抱っこされているのか?ハッ、この匂い藤ケ谷?)
(どうして分かる?いやなんかの罠かもしれない寝たふりしていよ)
(げっ…)
顔が見えなくても恐怖が沸く、どうやら俺はやらかしてしまったようだ。
(こいつは、まださっきのことを覚えているってわけか?それって俺が遅れて来たことだろ「実は、亀梨先輩に会って押し倒されちゃいました」な~んて、言えるわけないじゃん)
ふんっと声を漏らして、なるべく平然さを装う。
「抱っこされるのはマジで勘弁」俺は、手足をバタつかせ促す。
(冗談じゃない知らぬまに勝手に抱っこされ、ふざけんなっつうの)
(くそっ、人の弱みにつけこんでいつも以上にタチが悪い。もし、この状態で周りの連中もしくは知っているやつに顔でも見られたらバカにされてしまう。ハッ、そうだ顔を見られなければいいのか抱っこされてるのが俺だって誰にも分からないから)
そう言って、藤ケ谷の胸に顔を埋めた。
(バレなければ、むしろ余裕だな)
(小声でよく聞こえなかったが今なんか言った?)
(意味わかんね、ほんと藤ケ谷の言っていることって理解不能で困る)
ちょっと顔を上げ一応、伝えといた本当は降ろして欲しいけど聞いてくれそうにないから、すると100点満点の爽やかスマイルで「ふんっ」と鼻を鳴らし。
完全にバカにした感じだったのは気のせいだろか?そう思っていたら至近距離で目が合ってしまい。
(えっ、なに?顔を覗き込まれても困るんですけど)
愛おしそうな目で俺を見つめる藤ケ谷の眼差し…
(きっと女子たちが見たらイチコロなんだろうな…
でも男の俺からすれば正直言ってやめて欲しい、
それにバカ?お前、こんな恥ずかしい格好を一生
なんて出来るわけがないじゃん)
最後は命令口調になったけど、そんなの気にしているほど余裕はない珍しく人が通っていないだけまだマシだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。