その日の放課後ー
先生は見覚えのあるボックスを前へと出し、それも何故だか2つ。
(待て嘘だろ)
得意気に、バンバンと怪しげなボックスを叩き。
俺の声が聞こえたのかすぐさま答え…
(あり得ない!?こんなんでいいのか本当に好きだよな
この学校、つうか生徒会主権じゃなかったの?もしかして俺がこういうの苦手なのを知って嫌がらせ?内っていう生徒会長に刃向かったからさ)
先生は俺に視線を向けながらそう言って「あ、俺…委員長だった」もう正直どうでもいいやっと半分、諦めかけていたけれど最初に引けるのなら。
(鬼ごっこだと逃げる側は、けっこう体力を消耗する俺的にはそういった意味でも鬼になりたい、そしてゆっくり何もせず休んでいるって寸法さ、あったまいい~んふふっ)
前に出て、さっそくボックスに手を突っ込む。
(ん?なんか感触は紙とかそういうんじゃなくて
ボール?まっ、どうでもいいか)
ゴソゴソッと掻き回し、1つのボールを握りしめ「1番初めに引いたんだ鬼を当てる可能性は大」
(はっ?嘘だろ)
取ったボールを確認したら〈逃亡者〉と書かれていてさ、自分の運の無さに呆れ物も言えず「はぁ~」俺が意識を飛ばしていると。
そう言って、二階堂が俺の肩をポンポンと軽く叩き
ニヤッと、嬉しそうに笑いながら。
(マジで!?神様は俺より、こいつを選んだってわけ
ははっ…でも俺には、まだ心強い味方の横尾さんと藤ケ谷がいる)
そう思い、二人の所へ駆け寄り聞いてみると。
たった今ボックスから引いたボールには、でっかく〈鬼〉と刻み込まれていて。
(なんつうか言葉も出ない俺には仲間もいないのか、ぼっち…なるほどね)
ダッと、大きな声で叫びながら教室を飛び出す。
後ろで、藤ケ谷や横尾さんが慌てて呼ぶ声も耳には入らず俺は走った。が、暫くし。
自分の行動を深く後悔し足を止め勢いよく飛び出して来たせいか…
いつの間にか見知らぬ所へ迷いこんでしまい…
(俺ってバカだな嫌な事があったくらいで教室を抜け出すだなんてどう考えても幼稚すぎ、まぁ~今から教室へ戻ったところで怒られるのがオチだし目の前にある図書室に入り見学でもすっか)
呑気にそんなことを思いガラッとドアを開け中へと入る、そこはシーンと静まり返っていて。
俺は、いくつもの並べられている本を見ながら呟く奥まで行くと端にはソファーが置かれ、その手前の数メートル先には机などが規制正しく並び。
小さな声で言葉を発し近くまで来てマジマジ見ると
このソファーかなりフカフカで「んふふっ、柔らかそう」いかにも高級感が溢れ出ていて。
キョロキョロと辺りを見渡し誰もいないのを確認し恐る恐る腰を掛ける。
が、気がついたら腰だけではなく身体全体がもたれ「本当にフカフカだ」スリスリし「あぁ~なんか、癖になる」やめられない止まらない。
(んふふっ、少しだけこのままでいてもいいよな?)
俺は、そんなことを考えながらスーッと眠気が襲ってきて悪い癖が出てしまう、何処でも寝てしまうという…少しだけ少しだけなら大丈夫っと。
ゆっくりと目を閉じ…
・亀梨side
今日も俺は自分のテリトリーでもある図書室へ向かっていた、そこのソファーでゆっくりと過ごすのが毎日の日課で、しかし朝から雑用でなかなか行けず気がつけば放課後になってしまい…が「やっぱり、帰る前に1度は」そう思い。
生徒会って授業免除という特権がついてるし、のんびり出来ていいんだけど。その分つまらない雑用とかも多く挙げ句。
「そういえば占いで今日うお座は1位だった、いい事があるかもしれないな」そんな事を思いながら、図書室と書かれたプレートのある扉を開け。
「ひとまず寝て自分を癒そ、うんそれがいい」今は先生も生徒もHRの真っ最中、明日おこなわれる歓迎会の説明をしているはず。だから誰もここに来る者はいない「邪魔されず気持ちよく眠れるってわけ」
(あっ、ちなみに俺、図書室では誰も抱いた事はないよ、なんかさ俺達ってそんな事ばかりしているように見られがちだけど誰ふり構わずってわけじゃない
それに俺はここが気に入っている汚したくはないし「抱くとしたら」そうだな、お決まりだけど保健室どんな奴でもイチコロで男女問わず落とせる自信はあるテクニックもね甘い言葉を囁けば失神するやつだって恋愛ってある意味単純で簡単かなとも思う、そんな奴らを見ていると)
だから、俺は欲しい奴はすぐにでも手に入れる主義だった。
と、そのとき何処からか声が聞こえ「もしかして、誰かいるの?」いつもならすぐ帰るところだがあまりにも可愛い声だったから俺はつい気になって近づき覗いてみたんだ、すると。
目の前のソファーで、小さくうずくまり気持ち良さそうに眠っている仔猫ちゃんがいてさ。
(可愛い~もろタイプじゃん、もしかしてこの子みんなが噂し騒いでいた1年の姫?)
俺は暫く見つめていたけれど眠っているのに何故だかこれ以上、直視できなくてバッと目を逸らし自分でもホント何をやっているのか分からなく、つうか今までこんなこと1度もなかった。
(どうしたんだろ?らしくないや、ふっ…)
竜也の話しによると姫は北山宏光という名前でミツとも呼ばれているらしい、俺が聞いたとき口を滑らしそう言っていた「先に自分が目をつけたから横取りするな」とも。
(あんなに必死だったってことはマジで恋しちゃったってことか?あの竜也がねぇ~写真の姫に一目惚れするとは、ふっ…まっ、誰にも見せたくない渡したくないと思う気持ち何となく分かった気もするけど)
自分も噂で「どんな奴なんだろう?」と少しは気にはなっていたが実際、こうして目の前にすると予想を遥かに越えていた。再び目線を姫に合わせ、そしたら猫のようにスリスリしていて。
(心臓に悪い、ははっ)
それに無防備に寝ているものだから自然と手が勝手に伸びてしまい、気がつくと髪を撫でている自分がいてさ「サラサラしてて気持ちがいい、いつまでもこうしていたい気分」調子に乗り頬っぺにも触ってみる。
最高って言葉じゃ足りないくらい俺は自分でも知らないうちに姫に夢中になっていたんだ寝込みを襲うだなんて男として絶対にしてはいけない事だと分かっていても時と場合によっては、やってしまった事もある。
(しかし姫が相手だと、なんていうかこう調子が狂うっていうの?ホント可愛すぎ)
(俺は図書室ではやらないって決めているけど、他のやつらだとそうはいかないと思う。まず第一声は「誘ってんの?」だよねきっと、だから少しくらいは…)
俺は堪らずに、そっと上からその身体を抱きしめた「甘い匂いがする香水とかそんなじゃなく病みつきになりそうな匂い好きだな、これ」
(ただ匂いを嗅いだけなのに息子ちゃんが反応して
しまい、このままだと心臓がいくつあっても足り
ない理性を保つのも大変だ)
限界だと思い離れたら少し寂しさを覚え「声が聞きたい話したい、笑顔が見たい」俺の中で次々に姫に対しての欲が生まれ。
(こんなのマジで自分らしくないや、いったいどうしたって言うんだろ?)
数分間、頭を押さえ気持ちを落ち着かせようと試みる。しかし一向に起きない姿に「こいつは眠り姫かもしれない」とも思った取り合えず少し距離を置き深呼吸をし手で胸を押さえながら息を「ふ~ぅ」と吐き。
と、ある事に気づく「なんだ俺、めちゃくちゃドキドキしているじゃん」自分の手のひらが想像もしないような物凄い速さで波打つ心臓の鼓動を伝え。
驚くと共にバッと口元を押さえ「この俺に限って、そんな事が」少しの間、男の事情というものと戦っていた。それから何分か経ち、自分を見失いかけていたそのとき。
可愛く欠伸をし「よく寝たぁ~」とか言いながら、さっきまで気持ちよく眠っていた姫が目を覚まして
まだ隣にいる俺に気づいてないのか…(寝惚けてる?)
姫は、目を半分しか開けてなく寝足りないといった感じ「このまま再び寝てしまえば話すことができなくなってしまう、そんなの嫌だ…よし」こうなったらと俺は自分から行動に出る決心を固めて。
近くまで寄り身体を揺さぶって起こす手段を選んだ改めてじっくり見れば男としての下半身事情はヤバくなってしまうけど、俺の声に反応しピクリとなりガバッと目を見開いた姫は。
起きたばかりだからか焦りと戸惑いが一気にきて、そわそわと落ち着かず。
(なんつーかなぁ、ふっ、可愛い…おっと見惚れてる場合じゃなかった)
俺は優しく笑顔でそう言う、が「あれあれ?」この俺の笑顔を見たら皆すぐさま顔が真っ赤になるのに姫は逆に真っ青になっている気がする。
(気のせい?)
何やら反省し、しょぼんとなる姫は見た限り小動物にしか見えなく。
(飽きないなぁ~この子)
ペコリと頭を下げ礼を言い、俺が名前を知っていた事に疑問を抱く姫「思った通り、この子が北山宏光
噂の姫ちゃんか」さっきまで曖昧だったから分かってスッキリした。
怪しまれないよう、笑って誤魔化す。
「どうやら納得したみたい」ひとまずホッとし。
が、安心したのも束のま急に姫から話を振られ嬉しくなり口元が緩む。
実は生徒会って言おうとしたんだが昨日、内が…
とか言っていたから止めにし、どうせ彼奴が変な事をしたからじゃないかと思うんだけど正確には分からないし「生徒会と名乗るのはマズイ、ここで理由もなく嫌われるのは嫌だ」
と、不思議そうな顔をし姫が話し掛けて来て。
そう言って、手を前に差し出したら姫も。
二人で握手を交わして、でも何か重要なことを忘れている気がした。
瞬間ガンッと入り口の方から何かが壊れる音が聞こえズカズカと何者かの足音がこっちへ近づいて来るのを感じ、驚いた顔をしている姫の隣で俺も足元から頭まで何故だかブルッと全身に悪寒がし。
(なに?この嫌な予感は)
「げっ、誰?こいつ」とつぜん怖い顔をした色黒なやつが現れ不気味な声を発し。
顔を引きつらせながら、そいつの名を呼ぶ姫。
(そっか、忘れていた事とはこれだったんだ姫を溺愛している王子がいたこと)
聞こえないくらい小さな声でボソッと呟く…
姫は図星をつかれたのか何も言えずソワソワし始め「まるでハムスターみたい、クスッ」が、次の瞬間!驚くべき行動を起こし俺は驚愕することになる。
キョトンとし背中には冷や汗が流れ何故ならば俺の後ろで袖を掴みながら姫が隠れてしまったからなんだけど。
(なっ、なんなのこれ?)
今、自分は走っているときより心拍数がヤバい気がする。それに前で敵視し鋭く睨んでいる奴がいてさ
(知らないうちに絶体絶命?ははっ)
震えた声で姫は言った「いや多分それは俺の方だ」間違いなく怒りの矛先は自分に向けられているから
(けど、ここで引き下がるだなんて男じゃない姫には興味がある、このまま王子に渡すような勿体ない事したくはない)
(むっ…かぁ~っ、なんだよ人が親切にしてやってんのに、つうか先輩の話しは聞け仮にも俺は生徒会…あぁもう、こいつは姫しか見えてないんだな、まさに盲目って感じ…うん、その言葉がピッタリだ)
王子は、知恵を使い優しく言って。
とたん俺の横から、ひょっこり顔だけを出し。
気がついたら、もう姫は王子の隣にいてさ「変わり身、早っ」カツサンドという単語が出た瞬間に人が変わったようにゲンキンな奴というか単純というか
それに「好きなのサンドイッチ、それとも肉」独り心の中で自問自答していたら王子が低い声で。
そう俺に言い、不適な笑みを浮かべ姫を連れ去ってしまい「てことは、それほど王子も余裕がないってことか」
静寂に包まれた図書室で独り口角を上げながら俺は笑った。
(まだまだ勝負はこれからだ俺は欲しいものは絶対に手に入れる主義、覚悟しといてね姫ちゃん)
これで楽しみが出来た学校へと来る…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。