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第11話

能力向上には
14
2020/09/05 07:00
魔王城へと繋がる魔法陣に入った僕ら。
サタナーが、"能力向上の為に必要なもの"とやらを
見せてくれるらしい。一体どんな物なんだろう...?

(サタナー)...行くぞ。

そう言われて前を向くと、大扉を開けたサタナーは
もう城の中へと入り僕の方を向いていた。

(アール)うん!

そう言って僕も城の中へと足を踏み入れる。
すると、背後の大扉はギギギギ...と音を立てながら
ゆっくりと閉まっていく。

中はとても綺麗だった。入ってすぐにレッドカーペットの敷かれた階段があった。
この部屋は、多分わかりやすく言うと
"学校の体育館より少し大きめ"くらいだと思う。

左右の壁には扉が2つずつ設置されており、手前の方と奥の方にそれぞれ扉がある。茶色い普通の扉なのだが、やはり城の中というだけあって豪華に見えてしまう。

真上には大きなシャンデリア。
これ一つだけでこんなにも一帯を美しく、そして
明るく...でも少し色っぽい感じを出している。

階段を上ると、そこには背の高い男性と、その男性より少し低めの背をした白髪の女性。そして、真ん中の椅子には、サタナーにそっくりな5歳...くらいの男の子、
が描かれた大きな絵画が飾られていた。

サタナーにそっくりな男の子は笑っていた。
その椅子の真後ろの少し右寄りに立っている女性も
また笑っている。
唯一、背の高い男性だけは笑っていない。
まるで...目に光がともらず全てを捨てたかのような。そんな目をしていた。あまりいい雰囲気がこの男性からは感じとれなかった。

(サタナー)その絵画...いいよな。俺と父と姉だ。

絵画の地点で左右に道が別れるのだが、サタナーは
左の方へと足を進めて、ある扉の前で立ち止まり、こちらを向いていた。

(アール)...うん。どうしてこの絵画を飾ってるの?

そう聞くとサタナーは目線を下へと逸らして言った。

(サタナー)家族と一緒に...居られてる気がするからだ。

...これはサタナーにとってあまりいい質問じゃなかったのかもしれない。僕はサタナーの方へとゆっくり
足を進める。

(アール)そっか...少し変な事を聞いたね、ごめん。じゃあ、あの三人が待ってるだろうし行こう。

そう言うと

(サタナー)...あぁ。

と、返事はしてくれたが、一瞬、少し羽が下がったのを僕は見逃さなかった。

サタナーは大体感情が羽の動きで分かってしまう。
嬉しい時や楽しい時は羽がパタパタする。
普通の時は特に何もない。
悲しい時は....羽が少し下がるんだ。


ー部屋ー

(アール)あ、皆さん。

部屋に入るとそこは、大体...
"学校の教室"くらいの部屋。
(例えが学校ばかりですがご了承ください。)

大体客室など、自室もこのくらいなんだろうか。
豪華な赤色の2人くらいが座れるソファが
4つほど設置されていた。

2つずつ左右に設置されており、どちらも
向き合うように置かれている。
窓が入って真正面の壁にあり、今はカーテンが
閉まっている。
上には先程と同じようにシャンデリアが設置されているが、それは少し小さめのシャンデリアだった。

(アグロ)おー...やっときたか。

そういうアグロさんはソファで寝ていたらしく、
体をゆっくりと起こし、目を擦る。

(セルクル)アグロ、みっともないよ!
えっと、サタナーさん見せて貰えますか?
その能力向上に必要なものというのを...

セルクルさんはアグロさんの隣に座って、
アグロさんの背中をポンポンと叩く。

(クォーレ)能力向上のために必要なもの...

クォーレさんも"それ"がどんなものなのか
さぞ気になっているようで目を輝かせている。

(サタナー)えっとな.....

サタナーはそう言いながら、サタナーは
右手を地面につけ、目を瞑(つむ)る。

そして、サタナーの右手の包帯が外れ、
サタナーの右腕の周りを回転し始める。

地面からサタナーを包み込むようにして、
赤黒いような光が魔法陣から飛び出す。

部屋一帯が赤黒い光に照らされて、
何が起こるのかとサタナーの方を見ると
サタナーのいつもかけている眼鏡が
反射で怪しく光っている。

他3人は、皆その光に引き寄せられるかのように
魔法陣を見つめていた。

すると、ブウゥウゥン...と低い重低音が辺りに響き渡る。
そしてその大きな魔法陣から出たとは思えないほど
小さな宝玉が魔法陣の真ん中から宙へと浮かんでいる。

そして、魔法陣は消え宙へと浮かんでいた宝玉に
重力がかかりスッと落ちる。
地面に落ちる寸前のところをサタナーが左手で
キャッチした。

(サタナー)ふぅ...よし、これが必要なものだ。

サタナーは左手に乗せた宝玉を僕らに見せる。

(クォーレ)これが...?どうやって...

クォーレさんは覗き込むように宝玉を見る。
サタナーの右腕の包帯がシュルッと元に戻る。

(サタナー)この宝玉は、さっきからも言ってる通り能力向上のために必要なものだ。宝玉は自分色をしているんだ。

そう言われ、僕らはサタナーと宝玉を交互に見る。

(セルクル)あー!確かに!!

セルクルさんはうんうんと頷く。

(サタナー)代表者は宝玉の色が決まっている。

・魔界は"赤黒"
・天界は"黄白"
・光界は"緑白"
・闇界は"漆黒"
・獣界は"黄色"
・妖界は"朱色"
・人間界は"紫色"

この宝玉は最大"五個"まである。
どこにあるかと言うと、自分たちの暮らしている世界ではなく、"他界にある"と言うことだ。
どうやら、他界の代表者を倒すと手に入れることができる。誰を倒したら手に入るかは何故かランダムだけどな。

この宝玉は能力向上のために使うが、使うには
一つだけ条件がある。

それは、"代表者を一定以上倒すこと"だ。

1個目の宝玉を使うには、2体
2個目の宝玉を使うには、3体
3個目の宝玉を使うには、4体...

と、代表者を倒す数が増えていく。
これをクリアしていけば能力向上のために
この宝玉を使うことが出来る。

(アグロ)なるほどなぁ...なら、サタナーは
誰か倒したからその宝玉を持ってんのか?

(サタナー)いや、これは...父の残していったものだ

サタナーはそう言って少し俯く。

(アグロ)...へぇ、父さんがか...。

アグロさんはサタナーの方を見てから
宝玉の方に目を移す。

(セルクル)あ、えと...とりあえずサタナーさん。
ありがとうございました!!わざわざ見せ
て頂いてしまって...。それでは私たちは
ここら辺で!

(アール)はい、そうですね。サタナーありがとう!
お邪魔したね。

僕がそう言うとサタナーは右手を僕らの方に向け、
境界への扉...の魔法陣を出す。

(サタナー)ほら、境界へ続く魔法陣だ。
次はどこに行くつもりだ?

僕は顎に手を当てながらサタナーの方を見て答える。

(アール)次は天界かな。

そういうとサタナーは、僕らの方を見て言った。

(サタナー)そうか、宝玉手に入るといいな。
あと、護衛の証明か。そのためにも
天界の代表者を倒せよ。

(セル・クォ・アー)はい!/うん!

元気よく答えて、セルクルさんは"お邪魔しました!"
と言いながら初めに魔法陣の中へと入った。その後に続きクォーレさんも入る。

僕はその時見た。
魔法陣に入る際のアグロさんの横顔を。
下唇を噛み、会った時から1度も見た事もなかった、
殺意に満ちた目。

僕は...その時見て見ぬふりをしてしまった。
もしかしたら、ここで話していれば何か変わっていたかもしれなかったのに。


ー4人が去った後ー

(???)へー、あれが次の人間界の護衛さんカナ?
面白そうだナぁ。1人は僕の大好きだった、
あの人の気配が感じられるし...。
ま!今はあの人の事なんてこれっぽっちも
面白さなんて感じてないけどサ!!

明るく元気な声が、魔王城の上で響き渡った。



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