童蘭さんとはあの日から休日の夜のたんびにあって愚痴っていた。
あるときは幼馴染みが無神経だの
あるときは家柄が本当に面倒な立ち位置だの
そういうことを愚痴っているからか自然と気分が軽くなって余計任務がやりやすくなった。まぁ、仕事の効率がよくなるのは嬉しいことだな
そういえば、俺は柱になってから鬼を余計に憎み始めた。何でかって言うと、鬼のせいで絶望に叩き落とされるのを何度も見ているからだ。
いくら俺が人の幸不幸に興味ないとしても、流石にクるものはクる。そして、柱が出されるのは危険な任務。あるときは一家一同喰われていたり、数十名もの隊士の残骸だったりと、そして手遅れになっているところに駆けつけると毎回思う。『自分では役不足ではないか』と、もちろん俺はそんじょそこらの人達よりも努力を積み重ねた。だけど、それでも人は死ぬんだ。その度に、"恵美なら"って思うのが嫌だ。
恵美の努力を否定なんかしない、でも、どうしてずっとがんばって我慢してきた俺よりもぽっとでのコイツは強いんだよ。たとえアイツが吐くほどの努力をしていたとしても、それは俺も同じなんだ!アイツは天才肌ってのを早めに気付いたから余計に頑張った!土俵が違っていても、努力すれば追い越せると!けど、けど…
『俺は…同じ土俵にたつことすらも、弁えないといけないのかよ』
ずっと我慢を強いられてきた。
産屋敷も、二ヶ崎家も、俺の両親が恩があったから。だから俺もその恩を返さないと行けないのはわかっている。
だから
二ヶ崎には芸も、刀も、その家の子より劣るように魅せたり
産屋敷には剣道を他よりも随一に魅せ、親に褒められるように頑張った
でも、その頑張りは肝心の親には認められず、褒められず、挙げ句の果てに俺の全てを奪っていきやがった
そういえば、両親がご恩を受けたきっかけは、鬼舞辻無惨だったな
元々鬼舞辻無惨がいるせいで柱一家になり、
鬼舞辻無惨がいるせいで産屋敷と二ヶ崎と関係がつくられて、
鬼舞辻無惨がいるせいで美穂さんが死んだ
全部全部鬼舞辻無惨が元凶だった
それを実感する度に毎回思う。なぜカナエさんはあんなにも鬼に慈悲を与えれたのか
自らを殺した鬼でさえ、あの人なら可哀想って思うんだろうな。…優しすぎるよ
なんでこうも優しい人が先に死ぬんだ。
神なんて信じない。信じてないけど。
嗚呼、世界は残酷だ
俺は今猛烈に焦っている。
水柱宅へ猛烈に急いでいる。
なぜかって?
それはとある一通の文から始まった
拝啓、あなたの名字あなた様、
しばらく会えておりませんがお元気でしょうか?
実はあなた様だけでもご報告をしておきたいと思いまして。
単刀直入に言いますと、鬼を逃がしました。
詳しく話すと、あれは約一年前のこと(※ここで炭治郎達の出会いとかを詳細に書いています※)と、言うことです。今はその二人は我が師のところで修行を行っております
勿論、お館様にはご報告してあります。
あなた様にはご迷惑をお掛けしますが、勝手をどうかお許しください
冨岡義勇
は?だよね。うん。あんなにも鬼に増悪を向けていた冨岡が鬼を見逃すのもおかしいし、隊率違反なの産屋敷に認められてるのもおかしいし、何より鬼が人を守ったのが一番おかしい。
おかしい
これは、会わなきゃな…
で、冒頭の冨岡宅へ急いでいるわけだ。
お、ちょうどついた。
手紙によるとアイツの育手が二人をかくまっていると書いてあったので冨岡に確認したあと、あわよくばそこへいきたい。それに先程冨岡宅へ行く前に産屋敷へ真偽を確かめに文を出したところ、本当だったらしいし、ついでに様子みていってくれと言われたので(怒)向かうしかないだろう
ハー…大変だ…鬼全体への増悪が他より少ない俺だからよかったものの、不死川やしのぶだったらどうなってたか…あ、恵美ならもしや…?アイツ鬼へ合唱してるからそこまで増悪はなさそう。ま、見た目によらずだけども
『冨岡!居るか!!!!』
ガダッドタッバタバタバタ!!!!!!
…凄い音したぞ…今
冨岡『なんだ…こんなまっぴるまに』
『まっぴるまだからお前のことだろうし鍛練してるかと思ったが…その寝癖をみる限り寝てたんだな…』
冨岡『こてつめ』
『すまんて』
五徹目は…そうだな…うん…
って違う。そうじゃない
なんのために走ってきたんだ
『冨岡』
冨岡『…例の鬼の事だろう?』
『……話が早くて助かる。』
冨岡『お前は…』
『俺は信じる。』
『なんで、って顔してるが…俺は信じたいものは自分で決める主義なんだ』
勿論、そこら辺の他人がこういうのなら勿論疑う。そも、冨岡は水柱だし、人を見る目も信頼しているし、コイツは真面目だから茶化すためにこう言うことを言う奴ではない。俺は、家族を信じるんだ
無論、明らかに間違っていたら信じないというより、止める
俺は、美穂さんだから信じた
カナエさんだから信じた
『冨岡だから、信じる』
冨岡『…!っぐ…ぁ…』
突然冨岡がぽろぽろと雫をこぼすものだからどうしたのかと思ったが、
冨岡『誰かに…こんな風に信じてもらうのは、久しぶりな気がして…悪い…』
そういえばコイツ、昔真実をいったのに『頭の病気』やら『気狂い』などと言われていたらしい。
…鬼殺隊に入る奴はそういうものを持ってる奴が多い。皆も俺も持っている、勿論冨岡も。皆が持っているといって、辛さが軽くなる訳じゃない。だからこうやってみ仲間同士で傷を舐めあう。…惨めだよ。
ほんと、世界は残酷だ
『冨岡。俺は今からお前の育手のところに行って、その鬼を見てくる。』
『安心しろ、殺したりとかはしない。あくまでも見てくるだけだ』
『…んじゃ、』
冨岡『……嗚呼』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!